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やっぱり秋が好き

鍋いっぱいに作ってしまったおでん。
仕事終わりに不意に食べたくなってスーパーに買いに行くサンマ。
帰り道の商店街で不意に2本、砂肝とねぎまを買ってしまった焼き鳥。

カーディガンを羽織ってなお少し肌寒く感じる秋の夕方、
いろいろな匂いがすっと鼻の奥に吸い込まれるような乾燥した空気が、
いまが秋なのだと感じさせてくれて、
街路樹の銀杏は下の方から黄色く色づき始めていて、
いちばんてっぺんまで、金色のような黄色に色付くのか待ち遠しくさせる。
交差点を渡る人々の何人かはコートを着ているけれど、何人かは着ていない。

サンマを焼くと、サンマの匂いがキッチンを満たす。
この匂いを何度嗅いだかわからないけれど、いつも秋だからこの匂いは秋の匂い。
サンマを焼いたときにしか嗅いだことがない、独特なサンマの匂い。
その匂いを嗅いでまた秋を感じながら、パチパチと思った以上に溢れ出てくる脂の跳ね具合に少し戸惑いながらも美味しそうだと見つめながら缶ビールを開けて一口喉に通したときの充足感がたまらない。

机の上にじゅうじゅうに焼いたサンマと、火をかけて熱々になったおでんと、
炊き立てのごはんと、これは少し手を抜いたインスタントの味噌汁と、漬物。
この光景をあらためて席に座って眺める。
窓を開けるとひんやりした空気と外の音が部屋の中に入ってきて、
私は秋に満たされた。
春にも、夏にも満たされない私はただただ秋だけに満たされるようです。

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