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結晶

もう歳だなあ。歳はとりたくないなあ。とは思わなくて、
むしろ歳をとるのは面白いと思っている。
難しいと思っていたことができるようになったり、
深刻だと思っていたことが意外と気楽になったり、
たしかに体はどんどん衰えていくような気がしているけれど、
心はどんどん奥深く、見えなかったもの、感じられなかったものをどんどん感じられるように、見えるようになっているようにも思えて、それが良い。

親のことを思う。
いまの私の年齢でもう結婚もしていて子供もいて、信じられなくなる。

あのときの先生のことを思う。
自分より若いのにしっかり働いていて、偉いなあと振り返ったりする。

毎年重ねるごとに増えていくのは経験で、記憶で、思い出で。
特に楽しかった思い出は時間が経てば経つほどに宝石のように結晶化してどんどん輝くように感じてしまう。あのときのことを夢に見ることもあって、それはまた経験したくても2度とできない得難い経験で、きっと私が死ぬまでにあと何回も何回も思い出して夢を見て、抱えて生きていくんだろうと思って切なくなったりする。


私はあなたに受け入れて、
あなたは私を受け入れてくれて、信じられないくらいに重なって、
二人とも信じられないほど、その重なりは途方もなく幸せで、
そのときしっかり繋いだ手は二度と離れないと疑う隙間もないほどだった。


きっと誰しもそんな思いを抱えて生活している。
何年か前の、何十年も前の心の中にある結晶を大事にして生きている。

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