黒木 邦彦

言語學者。社會の問題を素人も語らむとてするなり。言語學入門マガジンも更新中。言語學關連記事はこちらにも: https://researchmap.jp/96ki/%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%83%96%E3%83%AD%E3%82%B0

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    研究ノウトにも満たない水準ですが、無いよりはマシかと思い

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    自分の研究を題材にして、言語学の実態を紹介する記事を書いていきます。1記事の分量は2000字以内を目安に。更新頻度は週1程度でしょうか。ただし、途中で飽きるという事態も充分にありえます。

最近の記事

古典日本語の活用

見出し畫像は筆者自筆。同じ時に同僚の書家に書いてもらった言語學系の書も上げたいが、掲載許可を頂き忘れてゐた。そちらは後日。 早いもので、毎年のやうに「早いもので」と錯覺される12月がやって來る。言語學界の12月と言へば、近年は Advent Calendar「言語学な人々」であらう。 上記サムネのとほり、不肖私くしも、別館に當たる Annex の初日 (24/12/01) にこうして寄稿してゐる。翌日も、漢語を主題とした文章を寄せる。 (24/11/30: Annex へ

    • 水汲みは本當に樂しかったのか

      水汲み、もとい、航空機內Wi-Fiに關する怨嗟をXにて目にした。 この怨嗟から眞っ先に思ひ浮かんだことは、現代人からすると重勞働でしかない水汲み。上/下水道が整備されてをらず、人力で水を汲むしか術べが無かった當時も無論重勞働だった譯けだが、時に憩ひだったらしい。Wi-Fi環境不良的免罪符に成りえたからだらう。 とは言へ、眞に憩へるかどうかは同道者に據るだらう。 日頃の(重)勞働から解放されるとは言へ、同道者がパワハラッサー、モラハラッサー、セクハラッサー(の三重奏)では

      • ウェブ連載「ことばのフィールドワーク 薩摩弁」を始めた意図

        はじめにこの記事は、松浦年男氏が企画した「言語学な人々 (Advent Calecndar 2023)」の4日めに位置するものです。と言いつつ、先陣を切って、締め切りに遅れているのですが。 薩摩弁調査記のウェブ連載今年の10月から、ひつじ書房ウェブ マガジン「未草」で連載を持っています。題目は「ことばのフィールドワーク 薩摩弁」です。 鹿児島県におもに分布する薩摩弁が主題ですから、同方言に特徴的な発音、語句、言い回し(が持つ魅力)の解説を多くの人は期待したかと思います。最

        • 女友達が激甘カノヂョに ...

          標題は次の漫畫 (たゞし、未讀) に觸發されたもの。 めちゃコミからの類推でいきなり脱線するけれども、先日、窪薗晴夫『アクセントの法則』がコミック シーモアでも買へることを知った。或る授業の敎科書に指定してをり、未購入だった學生が授業中に電子版を買はむとして發覺。當の學生は「流石にシーモアで讀むかよ!!」と突っ込んでゐた。 https://www.cmoa.jp/title/1101295847/ この發見と同じ日に、女友達から 「好き」 といふメッセイヂが來た。驚くと

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          まさに駄文 (2)

          海外に對する興味が30代半ばから急に湧いて、これまでに20ヶ國弱を主に旅行で囘った。仕事でも、インパクト ファクター零ながら、數ヶ國經驗してゐる。 下手の橫好きが長じてか、今は、言語學に強いハワイ大學マノア校に置いてもらってゐる。5階建ての雙頭ビルが全部言語系の施設といふ、素晴らしい環境で、獨り寂しく過ごしてゐる。家にをるんと變はらんがな。 マノア校の有るホノルヽ市に對しては、ミーハーが集ふ初級觀光地といふ、割りと酷い印象を持ってゐた。それが今は、此處よりえゝとこは早々無

          まさに駄文 (2)

          まさに駄文 (1)

          自己と自宅とを愛して已まないので、なるたけ家に獨りで居たいんだけど、學期が始まり、大學に賑やかさが戻ったので、合成寫眞以來に、自宅から10km以上離れる[*]。我が家は遠くなりにけり。 まづは、敎會が無料で開いてくれてゐる英會話敎室へ。神も佛も信じてゐない割りに、現世利益には目敏い不肖わたくし。少し前なら、「地獄に落ちるわよ!!」と叱られてゐたかも。 參加したクラスの半分は日本人、1/4は韓國人だった。どこの鶴橋やねん。先日神戸牛を食べたといふ誰得情報まで頂き、不覺にも笑

          まさに駄文 (1)

          ふぞろいの単語たち (1)

          見出し画像は、東シナ海に浮かぶ鹿児島県甑島列島の上甑町瀬上地区集会所。当地の伝統方言を教えてもらいに、度々訪れている施設である。 はじめに標題の「ふぞろいの単語たち」とは、日本言語学会第159回大会 (2019年11月16日於名古屋学院大学) にて行なった研究発表の主題である。この主題で同大会に応募したところ、拒否されるどころか採択してもらえた。日本言語学会、心ひろっ。 この研究発表が契機と成って、語形成や統語の研究においても音調を観察する習慣が身に付いた。忘れられない主

          ふぞろいの単語たち (1)

          豊島/羽生さん?強いよね。 *日本語(の歴史)に關する話し

          この記事は、researchmapの研究ブログに書いた記事を改變したものである。 (A) 豊島?強いよね。序盤、中盤、終盤、隙が無いと思うよ。 羽生さん?強いよね。序盤、中盤、終盤、隙が無いと思うよ。 (A) をリアル タイムで (NHK杯は錄畫だけど) 觀たことは、人生のファイン プレイのひとつである (どんだけショボい人生やねん ... )。この衝撃 (笑劇?)[*]が10年以上前のことゝは、俄かに信じられない。橋本崇載八段 (通稱ハッシー) は引退してしまふし。

          豊島/羽生さん?強いよね。 *日本語(の歴史)に關する話し

          日本語を研究する (7): ハヒフヘホな音素講座 (2)

          見出し画像はこの記事の分析対象に託けたものです。ピッタリなものが配布されていました。4yournote913さんに感謝。 前回記事前回は、音色の異なる音声を、我々が頭の中で音素という範疇に選り分けていることを確認しました。今回は、音色の異なる音声同士をある音素の異音同士と考えることの妥当性を確認していきます[*]。 異音と見なす根拠清音/濁音の別 前述のとおり、我々はハ行音を発する際、フ音の前半においてのみ唇をすぼめます。 調音運動に生じるこの違いは、日本語ローマ字表

          日本語を研究する (7): ハヒフヘホな音素講座 (2)

          日本語を研究する (6): ハヒフヘホな音素講座 (1)

          見出し画像はこの記事の分析対象に託けたものです。ピッタリなものが配布されていました。4yournote913さんに感謝。 前回記事長い脱線 (本連載A1, A2, B) を経て、前回から漸く自然音類の解説に復帰しました。とは言え、自分の中で上手く整理できていないからか、母音の音色(が一定ではないということ)を解説するに留まってしまったのですが。 今回は、音色の異なる音声を我々が頭の中で範疇化していることを確認します。このような認識が作り出す音声の範疇を専門的には「音素」と

          日本語を研究する (6): ハヒフヘホな音素講座 (1)

          日本語を研究する (5): 自然音類、その前に

          見出し画像は次の論文から引用したMRI撮影の敷き写しです。日本語母語話者がアイウエオ (見出し画像ではaiueo) を発する際の口の構えを示しています。 いつつの図の中で形を違えている部位が舌です。舌に対しては、目視できる範囲の印象から、平べったい形状を想像しませんか?実際はこの画像のように、シチューに使う牛タン並みに分厚い肉なんです。 今回までの流れ本連載第4回のあとに脱線 (本連載A1, A2, B)[*]を重ねたせいで、だいぶ遠回りしてしまいました。今回からは、第4

          日本語を研究する (5): 自然音類、その前に

          日本語方言雑記 (2a): 大分県南東端

          見出し画像は、大分県南東端に位置する旧南海部郡宇目町 (現佐伯市) のJR宗太郎駅。現在は、上下合わせても、僅か3本しか停車しない秘境駅であり、1日平均乗車人員は1に満たない (JR博多駅のそれの10万分の1未満)。 ただし、この写真は、学友に車で連れて来てもらうという、秘境技ならぬ卑怯技の末に撮ったものである。この駅で13時間半ほど過ごす気力は流石に無い。(と言いつつ、9時間ほど過ごしたことは有る。うろ覚えながら。) 大分県南東端2013年度から2015年度に掛けて、日

          日本語方言雑記 (2a): 大分県南東端

          日本語を研究する (B): 日々の発見

          調査協力者にお見せする関係上、今回から現行表記に戻します。ありがたいことに、この連載をすでに読んでくださっている調査協力者がいらっしゃるということも知ったので、なるべく読みやすい表記を、と思いまして。 見出し画像は先日訪れた有田市のみかん畑です。写真を撮る習慣を持たないので、現地に行っておきながら、人様の画像をお借りするという失態。 自分が撮った写真って、腕が悪いからなんでしょうが、のちに見返すと、失望するんですよね。自分が目にしたものとあまりに違うので。これが写真を撮ら

          日本語を研究する (B): 日々の発見

          日本語方言雑記 (1): 兵庫県北西端

          見出し画像は兵庫県香美町香住区の鎧集落。この記事で取り上げる浜坂からは東に15kmほど離れている。 兵庫県北西端今年度後半の大事に備え、英気を養っている、という口実でどこそこ漫遊している。先日は、兵庫県北西端に位置する新温泉町を訪れた。 かつての但馬国として見ても、やはり北西端に当たるこの町は、その名のとおり、温泉に恵まれた町で、日本海側では海の幸にも有り付ける。 ただし、この町名の通用期間は直近20年弱に過ぎない。近隣の人々や旅好きには、「浜坂」や「湯村」といった地名

          日本語方言雑記 (1): 兵庫県北西端

          日本語を硏究する (A2): 過程/完了の區別

          前囘記事前囘は、音聲のグループ「自然音類」を深掘りするつもりでしたが、見出し畫像 (琴電にて撮影) の讃岐辯「おっりょんのに」に氣を取られて、ラ行音やイタリア人の名字に脱線してしまひました。既に2,000字超の寄り道をしてゐるのですが、見出し畫像にはもう1點、觸れておきたいところがあるのです。 見出し畫像左側に見えるこの記述が今囘の主題です。 「おっりょんのに」の共通語譯見出し畫像の讃岐辯「おっりょんのに」は共通語で「降りているのに」と譯されてゐます。でも、共通語の「降り

          日本語を硏究する (A2): 過程/完了の區別

          日本語を硏究する (A1): はからずもラ行音に脱線

          前囘記事前囘は、發音に關する調査がどのやうなものであるかを記しました。その最後に取り上げた音聲のグループ「自然音類」を今囘は深掘りしていきます … と思ったのですが、見出し畫像の解說がことのほか長くなりさうです。そこで、今囘はちょっと、ラ行音に脱線します。 きっかけは琴電まづは見出し畫像をご覽ください。高松市や琴平町を走る琴電 (正式には「高松琴平電氣鐵道」と言ふらしい) で2017年8月に撮影したものです。 高松市あたりの方言 (以下「讃岐辯」) では、'降りようとして

          日本語を硏究する (A1): はからずもラ行音に脱線