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客席からの眺め

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お箏の演奏会は楽しい! お箏の演奏会に行くといろんな曲、いろんな情景に出会うことが出来ます。 どんな物を聴いて、何を感じたのか。素人が聴きに行った演奏会の感想を、綴ります。
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#二十五絃箏

「木村麻耶 箏リサイタル ~音楽でシエスタ~」

「木村麻耶 箏リサイタル ~音楽でシエスタ~」

西国分寺で古民家を再生した建物で1983年からクラシックのハウスコンサートを開催されている「りとるぷれいミュージック」さま。
今回登場されたのが木村麻耶さんです。

いつも思うのは、お箏はどこで演奏されるかによって、音が大きく変わるということ。
桐の木でできたお箏は、木造の建物の中で演奏されると、本当に柔らかい「お箏らしい」音になるとしみじみ感じます。
ホールで聴くことが多いですが、そんな建物での

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「箏と写ー生々流転」

「箏と写ー生々流転」

千葉県誕生150周年記念いちかわ芸術祭のイベントの一つとして、開催されたコンサートです。
市川市にある千葉商科大学の学生制作映像によるコラボレーション・コンサートとのことで、中山法華経寺本院大客殿にて開催されました。

会場は、お寺の大広間。
バックの襖には、河瀬 蛙友氏による水墨画「敦煌莫高窟・三危山」が描かれています。

演奏された5曲のうち3曲は、そのふすま絵に、曲に合わせて制作された映像

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「野坂惠璃二十五絃箏リサイタル ~繋~」

「野坂惠璃二十五絃箏リサイタル ~繋~」

二十五絃箏を作られた野坂操寿さんの娘さんでいらっしゃる、惠璃さんのリサイタルです。
とても、とても、素敵でした。

「赤とんぼ」
右手の爪音からトンボが飛び回り、左手からは茜色から藍色に移り変わる空と秋の空気が立ち上ります。
「雪は降る」
音が鳴っているのに、雪に吸い込まれた無音の世界が広がります。
辺り一面、真っ白で、何も見えず、何も聞こえない世界。
音が鳴っているのに。
「胡哦」
美しい美し

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「第9回 山本亜美 箏 二十五絃箏リサイタル ~手繰る、みちしるべ~」

「第9回 山本亜美 箏 二十五絃箏リサイタル ~手繰る、みちしるべ~」

昨年行きそびれてしまった山本亜美さんのリサイタル。
ようやく行くことが出来ました。
今年のテーマは「手繰る、みちしるべ」
様々なご縁が繋がり実現したという、貴重なプログラムを披露してくださいました。

まずは何と言っても、「太助箏」
江戸時代の名工、菊岡太助が作った箏が、100年以上の時を超えて、舞台に登場しました。
美術館のコレクションになってもおかしくない、骨董品のような楽器です。
それが、

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「佐藤亜美 二十五絃箏リサイタル」

「佐藤亜美 二十五絃箏リサイタル」

2日前はオール長澤勝俊作品でしたが、今回はオール伊福部昭作品です。
長澤作品が「湿った日本の風土」だとしたら、この度の伊福部作品は「乾いた西アジアの風」。
演奏スタイルも、大合奏とは対照的に、お一人だけでの演奏です。
一音一音丁寧に紡ぎ出される音を聴いているうちに、いつの間にか伊福部ワールドに引きずり込まれていました。

プログラムは3曲ながら、いずれも大曲ばかり。
「胡哦(こが)」
「胡人のう

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「公園通りクラシックスProject 佐藤紀雄 公園通りプロデュース シリーズVol.17」

「公園通りクラシックスProject 佐藤紀雄 公園通りプロデュース シリーズVol.17」

連日の暑さで停滞気味の脳みそには、現代音楽の刺激が必要!
ということで、真昼の渋谷に行ってまいりました。

トロンボーンと二十五絃箏。
この組み合わせを聴くのは初めてです。
トロンボーンは村田厚生さん。
二十五絃箏は、実は密かに大ファンの木村麻耶さん。
木村さんは、演奏はもちろん、歌声も大好きなのです。

演奏された4曲、いずれも、曲も楽しく演奏も素晴らしく、とても楽しかったです。
一人でした

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「当道音楽会 第140回定期演奏会 ー未来へつなぐ伝統の音ー」

「当道音楽会 第140回定期演奏会 ー未来へつなぐ伝統の音ー」

当道音楽会は明治38年に設立された、箏・三絃・胡弓を伝承している団体です。
伝統文化の維持・継承をはかる団体であることに公益性を認められ、公益社団法人の認定を受けられています。
この度、第140回定期演奏会が、超豪華ゲストを招いて開催されるとのことで、足を運びました。

第1部は、ゲストの競演
「笹の露」
富山清琴さんの三絃と、菊原光治さんの箏、善養寺惠介さんの尺八です。
清琴さんと光治さんの掛

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「第13回飛山桂作品・フルートリサイタル 時空を超えて」

「第13回飛山桂作品・フルートリサイタル 時空を超えて」

フルーティストで作曲家でもある飛山桂さんのリサイタル
前半は、新曲を飛山桂さんのフルートと飛山百合子さんの箏・三絃で
後半は、これまで作曲された曲の作品集でした。

1曲目は、初孫が健やかに育って欲しいとの願いを込めた「彩花」
2曲目は、故郷の岡山県津山への想いを託した「津山組曲」
どことなく懐かしいメロディーがフルートと箏・三絃で優しく奏でられ、飛山さんの、温かい想いが伝わって来ました。

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「日本歌曲協会「春のステージ2023」アンサンブルの多様性を求めて」

「日本歌曲協会「春のステージ2023」アンサンブルの多様性を求めて」

年に2回、春と秋に開催される、日本歌曲協会の「邦楽器とともに」
ピアノ伴奏で歌われることの多い声楽家の方が、このステージでは邦楽器とともに、日本語の歌を歌います。
今回は「アンサンブルの多様性を求めて」というテーマで、様々な楽器が奏でられました。

美しい「幽かなるもの~一枚の絵より~」ソプラノと箏・十七絃・ヴァイオリン
力強い「朱夏抒情」ソプラノと箏・三絃・尺八
楽しい「都々逸どいどい」メゾソ

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「中井智弥 砧の系譜 箏・二十五絃箏リサイタル」

「中井智弥 砧の系譜 箏・二十五絃箏リサイタル」

中井智弥さん。
二十五絃箏をメインに演奏され、ご自身で作曲もされます。
リサイタルは毎回凝ったプログラム。
今回のテーマは「砧(きぬた)」です。

昔、麻や葛の着物の繊維を和らげるためや、木綿のしわを伸ばすために、布を木槌で叩いていました。
この動作や道具を「砧」と呼びます。
秋の夜長に、あちらこちらから聞こえる砧の音は、秋の風物詩となり、様々な文化芸能に取り入れられています。

箏曲にも数あ

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「金子展寛箏リサイタルvol.2」

「金子展寛箏リサイタルvol.2」

十三絃箏、低音二十五絃箏、二十五絃箏。
一言で「箏」と言っても、それぞれ個性的なこれらの楽器の持つ音、響きを存分に堪能することが出来ました。

一音一音すべてをコントロールし、緩急強弱自由自在に箏を操る演奏は、いつも曲の世界に引き込まれます。
張りのある澄んだ爪音が、減退すること無く、どこまでも飛んで行きます。

個々の曲の素晴らしさはもちろんですが、選曲とプログラムの流れがとても良かったです

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「二十五絃箏製作30周年記念フェスティバルコンサート」

「二十五絃箏製作30周年記念フェスティバルコンサート」

野坂操寿先生が二十五絃箏を製作されて30周年とのことで開催されたコンサートです。
二十五絃箏ばかり16組。
13時から19時(途中休憩あり)という長丁場。
聴くにも覚悟がいるなあと身構えて行きましたが、あっという間でした。

なにしろ、出演者の皆さまが、一度は聴いてみたかった演奏家の方ばかり!
コロナだったり、遠方でご活躍の方だったり、タイミングがどうしても合わなかったりして、泣く泣く諦めていた方

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「内藤美和 二十五絃箏リサイタル」

「内藤美和 二十五絃箏リサイタル」

「内藤美和 二十五絃箏リサイタル」行って参りました。

面白かった!
リサイタルの楽しみの一つにプログラムがあります。
1回限りのコンサートで演奏出来る曲は、とても限られます。
その中で、何をテーマにどんな曲を選ばれるのか。

もちろん、事前のフライヤーにも載せてくださっていますが、実際にそれらの曲を順番に聴いていくことで、なるほどなるほど、と頷かされます。

1曲目に演奏された「津軽」は、二十五

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二十五絃箏の力

二十五絃箏の力

二十五絃箏。
これまで見たことも聴いたこともあります。

しかし、先日聴いた演奏会で、改めてこの楽器の持つ力を思い知らされました。

風にそよぐ草花、キラキラ輝く小川のせせらぎ、地球を洗い流すほどの激しい雨風、聞こえないはずの雪の降る音、星の瞬き。
時には美しい主旋律、時にはそれに静かに寄り添うハーモニー。
人々の優しく暖かい感情、心の奥底に潜む激情。
この世に存在する森羅万象も、存在しない未知な

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