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禊祓のこころを受け継いで 伊邪那岐命 ことの葉綴り。其の八五

海中から生まれた禊の神さま

おはようございます。日曜の朝、珈琲を片手に“サボリ屋”ですが、「ことの葉綴り。」に向かえました。ありがたい。

伊邪那岐命さまは、黄泉の国でついた穢れを
清く澄んだ海の中で、
一つ一つ祓われていきました。
我が身を清められ、心も清められて
邪気を取り去られていきます。

そこから、陸路の神、海路の神の十二神と、
なんと、すべての禍事、凶事の禍の神と、
さらに、禍を直し吉へと変える直毘神
も生まれました。

それは、まるで伊邪那岐命さまが、黄泉の国で体験した
恐れ、別れ、悲しみ、怒り、不安、死
禍と思える、その、もやもやとしたこころの陰をも
そこに光と意識が向かい
一つ一つの禍が、明らかになり光へと転換していく。
その都度「境」があり、
身とこころが、清らかに明るく、浄化されて
スッキリとして、視界も広がっていくような
晴れやかになっていく道筋でもありました。


伊邪那岐命さまは、今度は海の底へと潜られて
身を清められます

そこで、海をつかさどる神さまと、
海の航海をつかさどる神さまが誕生
されます。

底津綿津見神(そこつわたつみのかみ)
わたつみということばを聞いたことあるのではないでしょうか?
綿(わた)が海。
津(つ)は、~のを意味し
見(み)は、神さまの神霊
を意味します。
他にも、海神、綿津見大神とかいて、わたつみのかみと呼びます。
これは、「底」がついていますから、
海の底をつかさどる海の神さまです。

次にお生まれになったのが、航海の神さま
底筒之男命(そこつつのをのみこと)。
航海は天体の星を目印にすることからこの筒が、星という説もあるようですが、津は、船の停泊するところ。
昔の和の「船玉の神」を納める、帆柱を受ける筒ではないかと言われています。津々之男とも書くようです。

次に伊邪那岐命さまは、海の深さでいう、海底と海面の真ん中で
身を清められます。
ここでも、海の神と航海の神が生まれます

漢字に注目してくださいね。

海の神さまが、中津綿津見神(なかつわたつみのかみ)
航海の神さまは、中筒之男命(なかつつのをのみこと)

伊邪那岐命さまは、さらに海面へと上がられてきます。
そこで、身を清められました。
なんだか、海でダイビングしながら身を清められているようで、おもしろいと思いませんか?

海面でも海の神さまと航海の神さまが誕生します。

さぁ、お名前どう書くでしょう?
きっと、予想されているかと思いますが……。

海の神さまは、上津綿津見神(うはつわたつみのかみ)
航海の神さまは、上筒之男命(うわつつのをのみこと)


そうです。
海の「綿津見神」さまも、航海の「筒之男命」さまも
海底は、底
海中の中は、中
海面は、上
というグループ
になっています。

神話では、こう続きます。
この海の神さまの綿津見神は、海をまとめる海人族(あまぞく)の阿曇連(あづみくらじ)らの祖先神として崇めお祭りしていると。
綿津見神の子ども・宇都志日金折命の子孫が、阿曇連であると。

そして、航海の神さま、底筒之男命・中筒之男命・上筒之男命は、
墨江(すみのえ)の三前の大神です。

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禊の神さま住吉三神 住吉大社

墨江は、住之江であり、今の、大阪市の住之江にある
「住吉大社」さんです。

住吉大社さんは、“すみよっさん”と、大阪の人に愛されて、初詣でも有名で、今も崇敬を集めています。
古来は、難波津の近くで、白砂青松の風光明媚なところだったそうです。

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航海の安全つかさどる神様ですので
昔、遣隋使や遣唐使が、隋や唐へ向かうときには
住吉大社さんで、必ず航海の安全をお祈りしました。
あの、弘法大師空海さん、最澄さんも、
航海前にお参りされたでしょうね。

「住吉に斎く祝(はふり)が神言と
行くとも来とも 船は早けん」
遣唐使に無事の帰還を約束した住吉大神のお告げを詠んだ万葉集の歌です。
住之江の 岸による波 よるさへや
夢の通ひ路 人目よくらむ 
百人一首 藤原敏行朝臣

と、万葉集や、百人一首など
多くの歌にも詠まれており和歌の神とも親しまれています。
海の神さまなので、漁業、農業。弓の神、相撲の神でもあります。

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そして、何より、
伊邪那岐命さまが、黄泉の国から脱出して、
筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原で禊をされて
お生まれになった神さまですので、
「禊祓の神さま」ともいわれています

大阪三大祭の一つ夏の「住吉祭」は
「おはらい」
とも呼ばれます。
古来、摂津国・河内国・和泉国はじめ国中すべてを
お祓いするご神事で、「祓の神」と崇敬されてきたのです。

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「禊祓」を受け継ぐ私たち

伊邪那岐命さまの禊祓いを紹介してきましたが、

伊邪那岐・伊邪那美さまがお産みになった自然豊かな国土。

私たちは、その自然豊かな列島に暮らしています。

そして、「水」にも恵まれています。
河川が多く、森も豊かで
清らかな清流が流れている。
水道をひねれば、飲料の水がある

おかげで、お風呂好き・温泉好き
身を清め、清潔さを尊んできました

一日の終わりに私たちは湯船につかり、その日の汚れを落とす
湯船に足を入れた瞬間に
漏れる
「あああ~っはあ~っ」
という安ど感

身も清らかに
心もほぐれ、疲れを癒す。

湯船につかっている間に
その日も出来事も
流れさっていく
心に溜まった澱も
流れでてゆく

我が身もこころも
清く
みずみずしく
リフレッシュしていく

お風呂に入ることは
あたりまえのように思っていますが、
実は、神話の「禊」にもつながっている
とても、ありがたいことなのですね。


黄泉の国のその経験を洗い流し、
清め祓いを続けられ
穢れをすべて
きれいさっぱりと
禊ぎ、祓われながら、
ご経験を統合し、神々をお産みになられた末に、
身も心も清らかに浄化され
天の大神の御心と一つになられた伊邪那岐命さま。

いよいよ、
「三貴神」の神さまが、お生まれになるのです。

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―次回へ

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