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大切な存在のために 須佐之男命様の“変容”ことの葉綴り。其の百十二

出雲の国へ


こんにちは。週末もパソコンに向かう“サボり屋”です。
神話は今も生きている!
神様も“失敗”されて成長された物語。
「ことの葉綴り。」14回でも、須佐之男命様の前後編で、大まかにご紹介しましたが、もう一度、綴ってみたいと思います。

高天原を追放された、須佐之男命が向かわれたのは、
妣上(ははうえ)のいる死の「根の堅洲国」ではありませんでした。

孤独なアウトローはどん底の状態で、
けれど、清め祓われ、罪を贖われた御心の中は
何かが大きく「変容」されていました
伸び放題の不浄なヒゲもありません。
苦しみの中から、見出された尊いもの
ご自身が、神として生まれた使命への気づき
きっと“見た目”にも、その「変化」は立ち現われたでしょう

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そして、須佐之男命さまは、葦原中つ国、
出雲の国の、肥の河(斐伊川)の上流
鳥髪というとことへ降り立たれました

ここは、鳥取県と県境になる、島根県仁多郡の「奥出雲町」。
須佐之男命さまが降り立った山、鳥髪の峰・船通山(せんつうざん)は、「八俣の大蛇退治」の舞台として、今にも伝わっています。

須佐之男命さまは、川岸に腰を下ろしました。

ようやく葦原中つ国に、辿りついたのか……。
父に追放され、姉神に会い、それから……ずいぶんたったように思うが……。

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涙する家族

森の深い山です。人気もまったくありません
目の前に流れる肥の河を眺めていると、小さな一本の細い木片が流れてきました。
よ~く見てみると、それは箸のようです。

箸ではないか……こんな山奥の川の上流に、誰か暮らしているのだろうか……よし、行ってみよう

須佐之男命さまは立ち上がり、その川上へと歩いて登っていきました。

すると、森の中に一軒の家を見つけました。

おお~誰かいるようだ

近づいていくと、家の中から、泣き声が聞こえてくるではありませんか。

中をご覧になると、家の中で、年老いたおじいさんと、おばあさん二人が、真ん中にかわいらしい乙女を真ん中にして座って、泣いています

身丈もあり屈強な須佐之男命さまからすると
おじいさんもおばあさんも、乙女も
とてもか弱そうに見えます。
そして、たいそう悲しそうに泣いているのです。

どうしたんだろう。
何があったんだろう?

須佐之男命さまは、なぜか放っておけず気づくとこう言葉にしていました。

お前さんたちは、誰なのだ? 名前はなんという?

いきなり声をかけられたおじいさんは、驚いて顔をあげます。
目の前には、見たことのない、大きく強そうな神さまがいます。

流れる涙をふきながら、おじいさんはしっかりと、こう答えました。

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運命の出会い

「わたしは、古より山の奥に暮らします、国つ神の大山津見神の子で、足名椎(あしなづち)といいます。
ここにいるのは妻で、手名椎(てなづち)といいます」

高天原の神さまにたいして、葦原中つ国の地上にいらっしゃる神さまを国つ神といいます。

大山津見神さまは、山の神さまで、大(おお)は偉大な、山の、津は、の、見(み)は、ご神霊という意味で、偉大なる山の神さまという意味です。
そのお子さまである、足名推・手名推とは、娘を、優しく足で撫で、手で撫でて、慈しみ育む、ところからつけられた神の名前だそうです。

慈愛に満ちた父と母、ですね


その足名推は、こう続けます。

ここにおります娘の名は、櫛名田比売(くしなだひめ)といいます

乙女を見て須佐之男命さまは、その麗しさに胸がときめくのを感じました。

これまで母恋し~と、泣きわめいたいたときの思いとも、
姉神の天照大御神さまへの甘える気持ちとも、
何か、何かが、違います。

そして、とても気になるのです。気づくとこう問いかけていました。


「なぜ、あなたたちは泣いているのだ? その理由はなんなのだ?」

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―次回へ

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