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罪を贖って 須佐之男命⑧ ことの葉綴り。其の百九

罪を贖って

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こんにちは。早朝に神社にお参りすると、夏至が近いからか、朝日の光が、とても強く神々しくて美しくて! ありがたかったです。(上の写真)
神話は今も生きている! 神様も“失敗”されて成長された物語。
天の石屋戸の神話は、天照大御神様復活、再生、成長物語でもありました。
一方、神生みされて以来、ずっと、好き放題をして、
父神にも追放されて、
高天原からも追放されてしまった、須佐之男命さま。

日本の神話は、須佐之男命さまも、ただの、“ダメダメ”では終わりません。


高天原の八百万の神さまたちは、須佐之男命さまを「追放」するにあたり、「罰」を与えました

それは、自分の持っているものを差し出す“罰金刑”のような「千位の置戸」とともに、穢れのたまっていた、須佐之男命さまの髭や爪を剥がしました。

ただ、悪いものを罰するというよりも、
あまりにも自分の行動に無自覚で、ご神威の強さもわからず
周りに与える影響の大きさにも気づかずにいた
“やんちゃ坊主”の若き不良の青年神に、
これまでの暴虐は、「天つ罪」にあたる重罪であること。
自分の犯した「天つ罪」をきっちりと「自覚」し、
「罪」を贖う
ことで、
これまで、溜めてきた穢れを祓い清め、
裸一貫のゼロになって、まっさらな状態で
心機一転
新たな場所で、やりなおしなさい~

そんな思いもあったのかもしれませんね。

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孤独なアウトロー

高天原を追放された須佐之男命さまは、
ほんとうに、すべてを失ったことで、
穢れも祓われていました

ご自身の強い強い「我」も、へしおられていたでしょう。
お心も無防備になられて、
「我」の奥に眠っている、本来お持ちの、
神としての特性が、現れ出でようとしていました。

なにものでもない
人が成長するとき
そんな、なにものにも属さないなにか
無防備な状態
になることがあります。
まさしく須佐之男命さまは、
孤独なアウトローとして
たった一柱で、さまようことになります

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五穀の起源

やがて、葦原中つ国の、出雲の国へと降りたつのですが、
その前に、一つのエピソードがあります。
それが、五穀の起源。

一人ぼっちで、さまよい歩く中、
あまりの空腹を感じた須佐之男命さまは、
食物(をしもの)をつかさどる女神の
大気津比売神(おほげつひめのかみ)さまに
「なにか食べ物をいただけないだろうか?」
と、食事を頼みます。


大気津比売神(おほげつひめのかみ)さまは、
お気持ちよく、ご馳走を準備してくださいました。

ただ、その食べ物が、大気津比売神さまの
鼻や口、お尻から出された材料
だったのです。

須佐之男命さまは、その料理の様子をご覧になって
「なんて、汚らしいものを!」
と、殺してしまいます

すると、大気津比売神さまの死体から
頭からは蚕が誕生し
両目からは稲の種が成り、
両方の耳からは、粟が。
鼻からは、小豆が。
陰部からは、麦
お尻からは、大豆がなりました。

このとき、高天原の、「産霊(むすひ)」の神さま神産巣日神。
その御母の神さま
がご覧になり、
大気津比売神さまのお身体から成ったものを取り「種」としました。
それを、須佐之男命さまに与えて、
葦原中つ国の人々へもたらしたのです。

これ、何か覚えていませんか?

須佐之男命さまの母神の伊邪那美命さまが、
火の神を産んで大火傷をされました。
病に臥せて、亡くなる前に、伊邪那美命様の
嘔吐、屎、尿からも多くの神々が誕生しました。


古来、こうしたものも、決して“汚らしい”と扱わず
この自然界、森羅万象に存在するものとして神々とされた
のです。

須佐之男命さまは「汚らわしい」と思い、
大気津比売神さまを斬ったとき、
それは、こうしたものを「汚いもの」と思う気持ち
ご自身の中に残っていた「我」を、「邪」を、
斬り祓われたのかもしれません

そして、ご自身の本来奥に眠る
天之御中主神さまと同じ神聖さ、
須佐之男命さまの神さまとしての特性、
ご神威、そのものへと清め祓われたのかもしれません
ね。

『日本書紀』の一書によると、
この物語は、月夜見尊さまと、保食神(うけもちのかみ)さまのお話になっています。

すでに、ただのやんちゃなマザコンのワガママ神は
清め祓われました。
孤独なさまようアウトロー
“なにものでもない”自分と向き合う須佐之男命さま。
これから、どうなるのでしょうか?

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―次回へ


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