大阪城は五センチ《 1 》 【創作大賞2024】
脱いでいた服を身につけた後は、宇治のそばにいる資格をすっかり剥奪されたような気持ちになる。
バスルームに水の音が響くのを聞きながら鏡台の前に立ち、クリーニングしたてのスラックスをしっかり引き上げ、新品のセーターの裾を整えた。申し訳程度に眉を書き足し、色付きの薬用リップを塗っただけのささやかな顔が、鏡の中から心配そうにこちらを見つめ返してくる。励ますようにショルダータイプのスマホケースを肩から掛け、カバーの内側に挟んである一枚のカードに、ケース越しに手を当てた。自分の顔と