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30年の子育て終了で思うこと~今が結果じゃない

■「さくら」を送る相手

♪さくらさくら
今咲き誇る
刹那に散りゆく運命と知って
さらば友よ 旅立ちの刻 変わらないその想いを 今

昨夜、お風呂から流れてきた末っ子(18)の絶唱。

もう、この絶唱も聞けなくなるんだなぁと思うと、しんみり・・・。

小学5年生から不登校を繰り返し、高校に至ってはあと半年行けば卒業というところで休学。

「楽しくない」

末っ子が高校に行かない理由はそこだけでした。
高校でたまたま会った学友、先生。
その人たちとの繋がりを、末っ子は楽しいと思えなかったようです。

きっとこの「さくら」は
小学校の時いじめてきた学友でもなく
高校の時、ぼっち飯を容認したクラスメートでもなく
時には殴り合い、時には励まし合いした中学校の友人たちに向けたもの。
高校のクラスで馴染めない末っ子を慕ってくれた、クラブの仲間たちに向けたもの。
ここ数日は一緒に出掛けたり、泊まりっこしたりと忙しそうでした。

末っ子は、いくら周りが拒絶しても、常に仲間を求めていました。
自分には友達が必要だと分かっていました。

それは「さくら」を贈れる仲間を渇望するような日々でした。

そして、今日、彼は東京に旅立ちます。
新たな仲間を求めて。

今日はそんな末っ子の、高校休学から今日までのあれこれを書いてみようと思います。

■子育てってすごい

4人中3人の子が不登校になった私としては、末っ子の不登校で「私のせいなんじゃない?」と強く思うようになりました。

そこから、自己否定→このままの自分じゃやだ→読書、の流れをたどることになります。

それにより
「せめて高校は出とかないと。」が「別に生き方なんていくらでもある。」と言えるようになっていきました。

その影響を大きく受けたのが末っ子。

やりたくないことをやることが、いかに苦痛で心をすり減らすかを、高校の時に嫌と言うほど感じたよう。

そこに私が共感できたのは、子どもが不登校になり、心を病み、自分と向き合うきっかけをもらえたから。

私の独りよがりな視点で見れば「子どもは身を挺して私を救ってくれた」と言えます。

ただ、あくまでも子どもは自分の幸せを追求するもの。
親の為に生きてはいません。

どう受け取るか。私の心を柔軟にしてくれたのは子ども。
そして、柔軟になったお陰で子どもの選択も柔軟に受け取れました。

子育てって凄いです。

■リゾバ

高校休学に際して、末っ子は相当悩んでいました。

平気なふりをするのが現代の子ども達の傾向と言われますが、末っ子だけではなく他の3人の子たちもあまり弱音は吐きません。

何でも言い合える親子。
それが正解だと思っていましたが、次男に言わせれば「子どもは子どもで考えている。親の影響はさほど考えなくていい。」だそう。

確かに、親がどうかでその子の人生が決まるなんてことはありませんね。
子どもの意思、子どもの思考、子どもの選択、子どもの世界。
それを尊重し、信じて見守る。

親は親、子は子、ですね。
どちらかに合わせる必要はありません。

そんな中でバイト難民と化していた末っ子。
電車の本数も少なく、田舎なのでバイト先も限られる。
高校の同級生たちは卒業に向けて着実に勉強している中、末っ子は相当焦っていたと思います。
前に進めない日々が流れていきました。

そんな様子を見ながらも、子どもの選択を優先してきた私は、大人の視点からアドバイスすることはずっと避けていました。

でも、この過疎地でバイトをしてお金を貯めるのはかなりなハードモード。私の時代や上の子たちが育った環境とも違うので、今回は一緒に考えることにしました。

そこで思い出したのが、リゾートバイト。俗にいうリゾバです。

調べると、今はエージェントがいて斡旋してくれるとか。

仲間を求めていた末っ子はすぐに登録を完了。その日にZOOM面接も終えて、あっという間に北海道行きを決めました。

その間約1週間。1週間後には北海道へ旅立つことになりました。
私が若い頃憧れていたリゾバに末っ子が行くことになるなんて・・・。
うらやましくもあり、私の知識が役立ったことが嬉しくもありました。

やっぱり彼は会社員向きではなかったんですね(笑)。

北海道のバイトでは、スノボ三昧。英語三昧。カラオケ三昧にパーティ三昧。
たくさんの外国の方とも友達になり、海外で暮らすことが目標となったようです。

確かに、この片田舎では経験できなかったと思います。また、あのまま高校に通い続けていたら心が壊れてしまったかもしれません。

彼は水を得た魚のように生き生きとした表情になりました。

■リバ邸

11月の半ばに旅立ち、なんだかんだで4ヶ月のリゾバ体験を終えて帰ってきたのが4月2日。
かなりなバイト代をもらっていたにも関わらず、そこで出会った友達と遊びまくって所持金0。

最後はコロナにもなり入院し、長女、長男に借金して、帰りの交通費を私に無心。それでも意気揚々と日に焼けた顔で帰還しました。

最後のバイト代で姉兄の借金返済。私にもきっちり返してくれました。

ただ、リゾバで貯めたお金で長女とオーストラリアに行く計画は白紙に戻り、またこの片田舎で上京に向けてお金を貯めるはめになりました。

なんでも北海道で知り合った友達が東京に住んでいるので行きたくなったそう。何かを得て帰って来るとは思っていましたが、末っ子はたくさんの人との出会いを得て戻ってきたんですね。残念ながらお金は得られなかったようですが(笑)。

それからまたハードモードのバイト探しが始まりました。
同時に、東京で暮らす部屋も見つけなくてはいけません。

東京に行く→お金が無い→バイトを探す→バイト先が無い→特に短期のバイトは皆無→東京なら仕事ある→東京に行く・・・

この負のループで考えるのは私も全く楽しくありませんでした。
経験値も低く、つても無い末っ子には私以上に困難な課題だったと思います。

しかも5月には上京する!と決めたようで、あまり時間がありません。
焦りといら立ちの日々が数日続きました。

そんなある日、私がぽろっと話した内容に末っ子は大きく反応しました。

「家入さんっていう元不登校の社長さんがいて、引きこもりの子や無職の子を対象にしたリバ邸ってのを各地でやってるらしい。家入さんは尊敬できる人。そこなら住ませてもらえるかも。」

早速検索した末っ子。
たくさんヒットしたリバ邸情報に歓喜し、その日のうちにリバ邸の住人になれることになりました。

学校の課題は全くやらなかった末っ子。
でもやりたいことにはとても行動的。
休学してからの末っ子の変化には目を見張るものがありました。

一番驚いたのが英語。
学校では課題どころか授業にもほぼ出席していなかったのに、北海道では海外の方が多かったので休憩時間に必死に勉強したそう。

「かっこいい外人さんと話したかった」とのこと。

環境と思い。
これに勝る動機付けはありませんね。

こちらが子どもの未来を決めなければ、子どもってこんなに生き生きと人生を動かしていけるんです。

どんなことが起こっても、きっと彼なら乗り越えられる。
そんな安心感と信頼感を、そのワクワクした笑顔から感じることができました。

■今が結果じゃないんだな

実は高校を休学する前後、末っ子はメンタルに支障をきたしていました。

社会のレールから一人飛び出し、先生や周りの人から「あと半年頑張れ。」「高校ぐらいは卒業しておけ。」と言われる中での決断は、かなりなプレッシャーだったと思います。

何を隠そう私も「その道は自由だけどかなりしんどい。」と話しました。

まだまだ学歴が大きく影響する今の日本では、中卒は働く場所が限られるからです。

でも、視点を変えれば、中卒は大きなアドバンテージとも言えます。

高卒、大卒が圧倒的多数な中、中卒で人生を楽しんで生きられれば、学校へ行けない子たちにとっては大きな希望となります。
末っ子が学歴に左右されない場所で、生き生きと生きていければ、社会のレール神話を突き崩すことができますね。

ただ、これは私の勝手な願い。
末っ子は自分の思うように生きていけばいいです。

振り返れば、不登校だった時はきっと「かわいそうな子」に見られていたと思います。

そして休学に至って、本人も「このままでいいのか」という焦りや不安にさいなまれました。

でも、リゾバに行って自分の居場所を見つけた。自分の生き方が少し見えたように思います。

なのにまた金欠・・。

そこで彼は苦渋の選択をします。
本当はやりたくなかった肉体労働をすることを選びました。俗にいう日雇い労働です。

仲のいい友人たちは運転免許を取り、車を買い、大学に進学する子もいる中で、自分は汗と埃にまみれる肉体労働。毎朝6時に起きて、通学する学生に紛れて通勤していました。

そうやって稼いだ上京資金。

昨日、家賃も振り込み、荷造りも終え、いよいよ旅立ちの日になりました。

なんでもシェアハウスの住人たちで「たこパ歓迎会」を催してくれるそう。
有難い限りです。また機会があったら綾部名産を送りたいな、と思います。


結局。
今が結果じゃないんだな・・・。そんなことをひしひしと感じます。

周りの目を気にして、周りにどう思われるかで自分の思いを封印しては勿体ないですね。

「今が結果ではない」

そう思えたら、今がどんな状況であってもただの通過点にしかなりません。

ただただ諦めないこと。
純粋に、自分の心に従って動き続けること。

勿論、生きていればしんどいことはいくらでもやってきます。

それでも一喜一憂せず、今が結果ではないと自分を信じていれば、きっと今この時を大切に生きられます。

そして、今が未来の自分を創っていく。

末っ子に多くのことを学ばせてもらいました。

そしてその末っ子を見守れる私にしてくれた、長女、長男、次男にも心からの感謝を伝えたい。

ほんとにほんとにありがとう。
お母さんの子に生まれてくれてありがとう。
こんな幸せな毎日を与えてくれてありがとう。

今、子育てが終わった私が心から思うことです。

だから、子育てする皆さんに声を大にして伝えたい。

今が結果ではない。

子どもを信じて、そして自分も信じて、せっかく我が家にやってきてくれた子としばしの時間を楽しんで下さい。

いつか必ず子育ては終わります。

安心して見守ってあげて下さい。

子どもには、幸せになる力がちゃんとあります。


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