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與那覇開 1985年生 左投左打 / 韓国映画を中心に映画評論、あと教育関係や時事評論…

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與那覇開 1985年生 左投左打 / 韓国映画を中心に映画評論、あと教育関係や時事評論も書いています。

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  • 大学受験のための映画講義

    大学受験現代文の頻出テーマを映画を味わいながら解説していきます。

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共通テストに見る「英語帝国主義」

1 去る1月15日、16日に大学入学試験「共通テスト」が行なわれた。「共通テスト」とは、センター試験に変わる新しい大学入試のテストとして、2020年度から実施された。従来の知識暗記型の試験とはちがって、思考力を問うというのが基本的なコンセプトだ。国語試験における複数テクストの出題など、旧来のセンター試験に見られなかった新しいタイプの設問が各科目で見られる。なかでも、ひときわ入試改革の影響を受けているのが、外国語科目の英語試験だ。

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    • 時々、時事ネタ#2 映画『福田村事件』に思う

      9月8日に『福田村事件』(森達也監督)を観てきた。福田村事件とは、1923年9月6日、千葉県の福田村の自警団が、讃岐から上京してきた行商人の一行を無惨にも殺戮した事件である。事件の背景には関東大震災に伴う社会混乱があった。9月1日に発生した関東大震災によって人々は瞬く間にパニックに陥った。この社会混乱に乗じて日頃から痛めつけている朝鮮人が、仕返しをしてくるのではないかという日本人の不安心理が、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などというデマを呼び、当初は政府も新聞もそのデマに加担し

      • 大学受験のための映画講義#8

        こんにちは。與那覇開です。 だいぶ期間が空いてしまいましたが、「大学受験のための映画講義#8」をお送りします。今回のテーマは、「家族」です。 皆さんは、家族という言葉にどういうイメージを持つでしょうか。「絆」、「愛情」、「支え合い」等々、おそらくこうした肯定的な言葉が出てくるものだと思われます。しかし一方で、家族の存在が息苦しいと感じることもあるのではないでしょうか。離婚、別居にはじまり、家庭内暴力、ネグレクト、孤食など、家族の問題は社会問題にもなっています。おそらくこう

        • 時々、時事ネタ#1 基地問題への違和感

          ひろゆき氏が、10月3日に投稿したツイートが炎上した。その投稿内容は、沖縄県辺野古を訪問していたひろゆき氏が、「座り込み抗議3011日」の看板の前で、「座り込み抗議が誰も居なかったので、0日にした方がよくない?」というものだった。さらには、満面の笑みも添えられていた。 普天間基地の移設先として新しい基地が作られようとしている名護市辺野古では、基地建設工事を断念させようと、長年、抗議活動が続いている。その抗議の蓄積を「0日にした方がよくない?」というのは、揶揄にしても、あまり

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          大学受験のための映画講義 #7

          こんにちは。與那覇開です。 3月になり、暖かく感じる日も増えてきましたね。また新学年を迎える時期でもあり、特に受験生となる高校三年生は、すでに春期講習などで受験モードに突入している生徒も多いことでしょう。1年間しっかり頑張りきってほしいものです。 さて、この「大学受験のための映画講義」も今回で第7回となりました(10回で完結予定)。このシリーズの基本的なコンセプトは「評論を通して映画がより深く鑑賞できる」というものです。評論で学んだ知識を映画のなかで描かれる物語に溶かしながら

          大学受験のための映画講義 #7

          大学受験のための映画講義 #6

          こんにちは。與那覇開です。 受験生は共通テストお疲れ様でした。毎年、この時期は本当に仕事が忙しい。およそ二カ月ぶりの記事更新になります。 さて本日は「大学受験のための映画講義」の第6回目です。 今回はインド映画『ピザ』(2014)を題材にしながら、「消費社会」について考えてみたいと思います。 『ピザ』あらすじ スラム街に住む兄弟は、母と祖母との四人暮らし。父は刑務所にいて収入源がないので、学校にも行かず、毎日石炭を拾ってそれを換金して、どうにか暮らしています。家は貧しいで

          大学受験のための映画講義 #6

          大学受験のための映画講義#5

          こんにちは。與那覇開です。 大学受験のための映画講義シリーズの5回目です。 以前、某予備校の日本史テキストが外部からのクレームによって、テキストの中身の一部を削除したというニュースがありました(1)。削除されたのは、竹島と南京事件に関する記述のようですが、前者は韓国とのあいだで領有権が争われている問題ですし、後者は中国との歴史認識の論争で話題に上ることがよくあります。予備校のテキストに限らず、学校の教科書においても歴史という科目は外部からの批判の目に晒されやすいです。これは

          大学受験のための映画講義#5

          韓国の読解力事情

          私は国語講師として働いて9年目になりますが、この業界にいると、しばしば読解力論争に巻き込まれます。今の生徒は本を読めなくなっているのではないか、読解力をつけるためには何をしたらいいか、読書で読解力は本当に伸びるのか等々です。私がこうした議論に少し不満があるのは、「では、外国ではどうなってるのか?」という視点がほぼ皆無なことです。無論、教育制度や言語構造が違う外国の議論をそのまま日本に導入しても参考にならない場合もあると思います。しかし、外国の教育事情を知ることは内輪だけの議論

          韓国の読解力事情

          ソンイ

          二〇二〇年の秋頃、語学アプリを通してソンイという韓国人の女性と知り合った。ソンイは首都ソウルに住んでいた。ソンイは日本語がとても上手だった。「日本のドラマを観てたら、自然と覚えました」とソンイは言った。ソンイとは本当にたくさんの話をした。ソンイは決まって、「仕事がつまんない」と言っていた。僕は「なぜつまらないのか」と聞いた。ソンイは少し考えた後で、「つまんないからつまんない」と韓国語で答えた。僕は「それは哲学だね」と日本語で言った。 その日、いつもの電話の中で、「明日も会社

          大学受験のための映画講義#4

          こんにちは。與那覇開です。大学受験のための映画講義シリーズの4回目です。 ところで、みなさんは、1942年に起きた朝鮮語学会事件をご存じでしょうか? 私も今回の映画を見るまでは、この事件の存在を知りませんでした。この事件の背景を少し説明しましょう。1940年頃、戦局の悪化にともない、帝国日本の朝鮮統治が一段と強まっていたようです。この時期には朝鮮で創氏改名や教育現場での日本語使用など、朝鮮人の民族精神を消滅させる政策が行なわれるようになっていました。そんな中、母国語である朝

          大学受験のための映画講義#4

          大学受験のための映画講義#3

          こんにちは。 與那覇開です。「大学受験のための映画講義」の第3回目をお送りします。 さて、今回は、ポン・ジュノ監督の『グエムル』(韓国 2006)、そして『シン・ゴジラ』(日本 2016)を取り上げてみたいと思います。『グエムル』も『シン・ゴジラ』も、どちらもジャンル的にはモンスター・パニック映画に括られます。一般的に、この種の映画では、突如出現した怪物が平穏な生活を攪乱しカオスをもたらしますが、最終的には、その怪物は退治され、秩序が再編成されるという形で物語は幕を閉じます。

          大学受験のための映画講義#3

          大学受験のための映画講義#2

          こんにちは。與那覇開です。 大学受験のための映画講義、第2回目です。 今回は、韓国映画『幼い依頼人』(2019年、韓国公開年)を紹介しながら、入試現代文の頻出テーマである「他者」について考えてみたいと思います。『幼い依頼人』は、2013年に韓国で起こった漆谷継母児童虐待死亡事件という実在の事件に基づいています。主演は、イ・ドンフィ。韓国映画歴代興行収入第二位の『エクストリーム・ジョブ』(2019)で、ちょっと間抜けな刑事役として出演していた俳優です。今回もひょうきんなキャラな

          大学受験のための映画講義#2

          大学受験のための映画講義 #1

          次の文章が信州大学(2014年)の現代文で出題されました。 科学技術がもたらすリスクの原因のひとつとして、「構造災」があります。文字通り、技術のエラーは、それを扱う人間の所作にあるのではなく、技術が抱えている構造そのものに起因するという考え方です。つまり、構造災とは「科学と技術と社会のあいだの界面(インターフェイス)で起こる災害」のことです(前掲、3頁)。合理的な科学技術の体系に人間集合体である社会が介入するときに、ある種の歪みが発生して、エラーを構造的に抱えてしまうように

          大学受験のための映画講義 #1

          思考の作法

          こんにちは。  與那覇開です。都内の塾で国語講師をしてます。 さて、今日は「考える」ことについて、それこそ考えてみたいと思います。近年、思考力という言葉が巷間に溢れています。入試改革の共通テストは思考力を問う試験だと言われています。そして、それに応えるように教育産業でも思考力を育てるなどと言っています。しかし、これだけ思考力という言葉が溢れているのに、肝心の思考力の中身については誰も具体的にどういうものであるか説明してくれません。思考力という言葉が、その中身を問われること

          思考の作法

          韓国映画年表

          1984年 鯨とり 1992年 われらの歪んだ英雄 1995年 ラン・アウェイ 1996年 つぼみ 1997年 ナンバー・スリー 1998年 八月のクリスマス 1999年 シュリ/ペパーミント・キャンディ/ユリョン/反則王 2000年 JSA/吠える犬は噛まない(ポン・ジュノ監督長編デビュー作) 2001年 猟奇的な彼女 /ひとまず走れ/受取人不明/悪い男/鳥肌 2002年 おばあちゃんの家/KT(日韓共作)/オアシス(第59回ヴェネツィア国際映画祭・銀獅子

          韓国映画年表

          書評のススメ

          こんにちは。 與那覇開です。  今日の記事は、「書評のススメ」と題し、書評の効用を説き、少しでも書評に興味をもつひとを増やして、書評文化の普及を目指さんとするものであります。 私はここ5年ぐらい書評ブログをやっており、現在に至るまで495冊もの本を書評しました。ちなみに私は1万冊書評を目指しているのですが、このままだと130歳ぐらいまで生きなければならない計算になります...。さて、ものを書くとは本当にめんどくさいことです。必死で練り上げた文章であっても、まともに読まれ

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