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手をかける

久しぶりに家でみそ汁を作った。
切った大根を入れただけのみそ汁。まったくこだわりのない料理。
それでも大根がたっぷり入ったみそ汁は、食べ応えもあり、夕食で一緒に食べた妻と
「おいしいね」と言いながら味わえた。
インスタントのみそ汁よりも深みのある味わいに、やっぱり手作りの方がいいなと思えた。
「手をかけて作っているから美味しいんだね」
妻がそう言ってくれた。
 
 先日、写真セミナーに参加した。
 素敵な家族写真を撮る方のお話。その方は、一時間で約一千枚近く、撮影するという。
 僕も家族写真を撮るが、一時間で一千枚はかなり多い。撮ろうと思えば撮れなくもないが、後で行う写真整理がとても大変になる。写真が多ければ多いほど時間も手間もかかる。
 その方が撮影後の写真整理をどうしているのか、気になり、質疑応答の際、手を挙げて質問をした。
「一千枚も撮影すると、後からの写真整理が大変になりませんか」
その質問を聞いた彼は微笑み、答えてくれた。
「メチャメチャ大変です。時間もすごくかかります。でも、写真って効率じゃないと思うんです。写真を撮って欲しいご家族は、良い思い出写真にしたいから依頼をしてくれる。それを効率で片づけるような写真家にお願いしたいとは思わないと思うんです。
 効率よく撮影することもできるとは思いますが、そういうやり方ではいずれ先細りして続かなくなると僕は考えています」
 時給換算で考えたら写真の整理は最小限に抑えたい。そのためには、撮影枚数を極力減らしてポイントだけに絞った撮影をしたい。これまでいくつもの撮影案件をしてきて、そんな考えを持っていた自分。
 でも一番大切なのは、言うまでもなく依頼してくれたお客さんが喜んでくれるかどうか。
 どんなに効率よく撮影してもお客さんが満足してくれなかったら、いい撮影とは言えない。逆に、たくさん撮りすぎて写真の整理に時間がかかってしまっても、お客さんが満足してくれたなら、いい撮影をしたと言えると思う。
 いい撮影をしなければ、次の撮影は来ない。
 一回一回が大事で、どれも手抜きは許されない。
 経験を積めば、もしかしたら効率良くいい写真を撮れるようになってくるのかもしれない。それでも、最優先すべきは、効率でなく、お客さんの満足するいい写真を撮ることだと思う。満足してもらえれば次につながるが、そうでなければ、口コミで次第に依頼も来なくなる。
 質問に答えてくれた彼の言葉を聞いて、改めて撮影の一つ一つを丁寧にしようと思えた。
 
 みそ汁を作った翌日の朝食。
 大根のみそ汁は、昨夜の作り立ての時とは違う味わいだった。味に深みが増し、大根の中にまでみその味が染みわたっているようだった。
 忙しさにかまけて、ついついインスタントみそ汁に手を伸ばしていた生活。
 少しばかりの手間をかけても、手作りみそ汁をしばらくは作っていこうかな。
 その方が、生活の楽しみが増えるように思う。
 効率やスピードで、日々を過ごすのは、先に進んでいるように見えても、かえって本質を見逃しがちになるのかもしれない。
 写真撮影でも日々の生活でも、効率は一旦置いておいて、じっくり丁寧に向き合うことをしばらくは心がけてみたい。

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映像写真作家 小西隆博
はじめまして。写真と映像制作をしているフリーランスの小西と申します。文章作品にも力を入れています。作品はご自由にお読みいただけますが、応援したいというお志も大歓迎です。