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言葉の宝石がつまった絵本『誰も知らない世界のことわざ』

『翻訳できない世界のことば』という本を知っている人もいるかもしれない。詳しい紹介は以下の記事に譲るとして、この本には、世界中の様々なユニークかつ「そうそう!」と共感できるような言葉たちがきらきらと散りばめられている。

何十もある言葉の中には、日本語の「コモレビ(木漏れ日)」や「ツンドク(積ん読)」もある。どれも世界共通で存在している事象だけれど、それを単語として切り取るかどうかは各言語によるのだろう。

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今回紹介したいのは、同じ著者による『誰も知らない世界のことわざ』。今度はことわざだ。フランス語、セルビア語、ラトビア語、カシミール語、ヘブライ語、ヒンディー語、ペルシア語…その他、たくさんの言語のことわざ51個がユニークなイラストとともに掲載されている。日本語からは「猫をかぶる」、「サルも木から落ちる」が登場。その他に、「ほほう!」と思ったことわざを3つ紹介したい。

1つ目はスペイン語から。

あなたは、私のオレンジの片割れ

「オレンジの片割れ」?これは日本語で言うなら「比翼の鳥」や「連理の枝」。相手を自分の魂のパートナーとして生涯愛する人として呼ぶ表現なのだそうだ。ひとつとして同じオレンジはない。だから、半分にしたオレンジにぴったり合うのは、その片割れだけだとか。「オレンジ」で例えるところにスペインらしさを感じるのは私だけだろうか。

2つ目は英語から。

PとQに気をつけて(Mind your P's and Q's)

さっぱりわけがわからない。意味は「それでいいかどうか言動によく注意して、お行儀よくふるまいなさい」だという。なぜだろう?話は15世紀にまで遡る。初期の活版印刷技術では、左右反転の文字を組み合わせていた。そのため小文字のpとqがよく間違えられたことから、「物事によく注意するように」という意味になったのだという。その言語圏の暮らしに密接したことわざだと言えるだろう。

そして3つ目はアラビア語から。

ある日はハチミツ、ある日はタマネギ。

人生はうまく行くときもそうでないときもある。つまるところ、人生は予想のつかないもの。英語には「You win some, you lose some(勝つときもあれば負けるときもある)」という言葉があるそうで、これはそのアラビア語版。ハチミツとタマネギに例えるその絶妙なセンス。ある日がもしタマネギのように辛い一日であったとしても、次の日はハチミツのようにステキな1日になるかもしれない。もし日本の食材で例えるとしたら?タマネギはワサビに置き換えたい。ハチミツはなんだろう?

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言語が異なっても、その言わんとすることを理解できるのは、きっと私たちが同じ感覚をどこかで感じたことがあるから。それを表現する言葉が母語になかったり、長い文章になってしまうとしても。

絵本のように美しいイラスト満載で、小説というよりは詩のように言葉が綴られたこの本をぜひ手に取ってみてほしい。



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読書感想文

ありがとうございます。いつかの帰り道に花束かポストカードでも買って帰りたいと思います。