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ショート小説まとめ

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オリジナルのショート小説をまとめています。科学を題材にしたものから、ノンジャンルまで。
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#短編小説

目覚ましとマスク

目覚ましとマスク

リモートワークが続いて身たしなみを気にしなくなってから1年過ぎたころ、朝になると鼻がかゆくて目が覚めるようになった。
鼻がかゆいんだけど、布団から起きるとかゆみが引く。布団にダニがいるわけでもないようだ。
以前は寝坊が多かったのに、いつも7時ちょうどに目が覚めるようになってむしろ気分良い。
ある朝用事で早く起きて歯を磨いていると、7時ちょうどに鏡の前の自分の鼻毛がうねうね動いているのがわかった。ど

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花柄の魔法瓶

花柄の魔法瓶

ルイボスティーを持ち歩いていた水筒を無くしてしまった。外出先で落としたらしい。300円ショップで買った、透明のボトルだ。

買い直すのももったいないので実家に顔を出して水筒を余らせていないか探してみた。すると、母がそういえばと台所の下をゴソゴソし始めた。

取り出したのは1Lは入るだろう大きな水筒。肩掛けの紐がついた、赤いコップのついたもの。そしてなにより目につくのは、側面がベージュ地にオレンジの

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公園の赤い木の実

公園の赤い木の実

 僕らがよく遊んだ公園は2つあって、片方は砂場やブランコやすべり台があった。もう片方は真っ平らな空間の端に鉄棒と木があるだけ。小学2年生ころまでは砂場やブランコで遊んでいたけど、だんだんサッカーや縄飛びに凝っていって真っ平らな公園に行くことが増えていった。

 真っ平らな公園に生えてる木がなんの木か、同級生も兄も誰も知らなかったけど、夏も冬もいつも葉っぱが青々と生えていた。小学校低学年では登れなか

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落下した告白 #宇宙SF

落下した告白 #宇宙SF

一台のロケットで複数の小型人工衛星を打ち上げられる様になったため、最近では宇宙空間との通信実験がカジュアルに行える。

僕がいた大学の貧乏研究室でも、手のひらに乗るサイズの通信衛星を開発している。今日はクライマックスの組み立ての日だ。事前に念入りに動作確認した電子回路とセンサーを黒い15cm四方の箱に組み付けていく。もうドライバーを何周回転させているだろう。

組付けをちょうどいいところまで行いた

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