私は、真実の愛を諦めることにした。
私の恋愛観は、週刊少年ジャンプだ。
自分を鍛えて、より強い相手と対峙し、全力で向き合い、嘘をつかず、仲間と鼓舞し合い、成長し、また違う相手と対峙する。そしていつか、この世で最も強い相手と戦うんだ…!みたいな。
最強のラスボス(運命の人)とのラストマッチを目指して、情熱と勇気ほとばしる!ど根性ラブストーリー!を32年間連載してきた。一人で、ずっと。
4年半付き合った大好きな彼と別れて3ヶ月。最近、少しずつ傷が癒えてきたのかも。気になる人が出来たり、彼女持ちのレズビアンに弄ばれたりしながら過ごしていた。
そして、ふと。
(私の恋愛観を相手にも求めるの、とても酷なのでは?)
という真理に気付いた。
あぁ、自分の恋愛には根本的な思いやりが足りていなかったんだ。私は私の恋愛観を押し付けてきた。しかも全力の週刊少年ジャンプ恋愛観を。
ショックなんてない。むしろ、今まで全力で愛してきたはずの人たちとうまくいかなかった理由が分かって、心が晴れた。もう、超、腑に落ちた。
私は、真実の愛、運命の愛を求めていた。
でも、そんなのはあくまで私から見た真実の愛であって。
「これは、誰から見ても真実だ!」
なんて言えることは、この世に存在しない。30人を焼死させた人が当然の死刑判決を受ける我が国の地球の裏側では、より多くの人間を殺した奴がヒーローと呼ばれてしまう真実が堂々とのさばってる。真実なんて、それくらい曖昧で不確かなもの。
なのに、私の真実の愛を強要してしまった元恋人たちに、謝りたい。
私が考える真実の愛とは。
傷つくことも、傷つけることも覚悟して、私とあなたが私とあなただけを求め、わき目もふらず一緒にいつか来る死に向かっていくこと。余白も余裕も思いやりもない。私との愛に相手の人生の全てを捧げさせようとしていた。自覚はなかったけど、そうだった。
間違いだなんて思ってない。でも、たぶん、強すぎた。
私は、20歳頃から人生を生き直すつもりで、心理の勉強をして、自分を変えてきた。周りの人に恵まれ、支えられ、今や、超強い女になった。
そしてどうやら、いつの間にか一般人よりも強くなってしまったらしい。
当時は私が世界で一番苦しんでいると思い込んで、ぜったいに変わらなければ、という強い意思をもって全力で努力してしまった。この強さは、他人に強要しちゃいけない。さらに、私は今もなお強くなろうとしているのだから。
そんな私の週刊少年ジャンプな恋愛観を、相手にも求めてしまったら、そりゃ、相手は疲弊するよ。
そのときどき、ありのままの彼を愛することよりも、私と彼の真実の愛を育むことに必死だった。その時々の幸せを噛みしめて、目の前の彼を愛せていたら、真実の愛がつかめてたかもしれない。
申し訳ないなぁ。
心底そう思った。
心底そう思ったら、とても楽になった。私もきっと、私の恋愛観に捉われて、縛られて、実は、辛かったのだ。姿の見えないラスボスと戦うために鍛錬を続けてきた毎日だった。今は、休息が欲しい。週刊少年ジャンプで心と身体を燃やして興奮するんじゃなくて。リンネとHanakoを愛読しながらカフェでコーヒー飲んでたい。時々ことりっぷ片手に小旅行に出るんだ。
そして、またいつか、自分をちゃんと大切にしてくれるだれかに出会えますように。
いつか、穏やかな真実の愛らしきものを掴めますように。
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