マガジンのカバー画像

25歳で脳梗塞になった話

17
14日間の入院生活を書きました。書きたいことが多すぎて長いです。
運営しているクリエイター

記事一覧

17:入院15日目、退院日

点滴の針も刺さっていない、身体が自由な朝。相変わらず5時半に目が覚めてしまうサイクルは変わらないが、今朝は体調不良もなくトイレにも行った。

朝食を食べ終えて、共用洗面台で歯磨きを済ませてベッドに戻った。少し経つと、回診の時間。私の順番がやってきた。先生がニコニコ笑いながらベッドサイドまでやってくる。「この間の検査ね、非常に順調です。ちょっと傷も見せてごらん。」ベッドを起こして、頭の傷を診てもらう

もっとみる

16:入院14日目

月曜日の朝、いつものように血圧と体温を測りに来た看護師さんに、「そろそろお風呂入りたい」とお願いしてみた。「わかった、調整してみるね」と答えてくれた。

すると、同室の女性も、「私も入りたいんだけど」と看護師さんに掛け合っていた。確かに、お互い同室になってから一度も入浴していない。いくら梅雨が長くて涼しい夏だとは言え、7月に1週間シャワーも浴びることができないのは、臭いももちろん、精神的にきつい。

もっとみる

15:入院13日目

日曜日の朝、この日も朝5時半ごろに廊下の向かいの高齢女性たちの話し声で目が覚めた。スマホを開くと、10件近くの通知が来ている。

何を隠そう、この日は私の誕生日である。26歳になった。出生時以来、初めて病院で誕生日を迎えた。最悪だ。

しかし、ずいぶん朝早くから祝ってくれるものだな、と思いつつグループLINEを開くと、高校で同じ部活だった友達が、私の誕生日を間違えて昨日の夜の時点で祝ってくれていた

もっとみる

14:入院12日目

土曜日の朝、また5時半ごろに、向かいの部屋のおしゃべりで目が覚めた。コロナ騒ぎのせいで大部屋のドアが閉められないから、毎日迷惑している。

起きてしまったから、トイレに行かないと気が済まない。このころは、食事も完食し、夜間の点滴から解放されていたし、歩行許可も出ていたから、歩いて個室のトイレに行けるようになった。

この病棟のトイレは、入り口が男女で分かれているのに、中に入ると男女のエリアが繋がっ

もっとみる

13:入院11日目

部屋の外から聞こえる音で目が覚めた金曜日。携帯で時間を確認すると、まだ朝の5時半だった。

廊下の向こうの部屋にいるハイテンションな高齢女性たちは、仲良く楽しそうにおしゃべりしている。私が起きたのはこの話し声のせい。やっぱり年寄りの朝はとことん早い。起きるのはいいけど、常識的な時間になるまでは黙ってて欲しい。3時間半しか寝ていない私はブチ切れそうだった。

絶え間なく点滴を落としている私は、いった

もっとみる

12:入院10日目

木曜日。座薬を入れなくても痛みを感じることなく、朝までよく眠った。心電図と血圧計はずっと付けたままだが、もう慣れて全く気にならない。

朝食を持ってきてくれた看護師さんが、「ご飯食べたらおしっこの管抜こうか」と言ってきた。寝返りを打つにも、座るにも、ずっと気になっていたこの管が、やっと抜ける。嬉しかった。

でも、管を入れるのは、麻酔がかかった状態だったから何ともないが、抜くって…?なんだか怖い。

もっとみる

11:入院9日目

手術翌日、水曜の朝、検温のために起こされた。廊下はガタガタと騒がしいから、朝食の時間らしい。入院してからというもの、体温が37度を下回ったことがないが、今日もやはり37度を超えている。

体温計を看護師さんに返して、窓の外をボーッと見ていると、今日は友達と遊ぶ約束をしていたことに気がついた。入院直後に、救急搬送された旨は伝えていたが、まさか頭を開いて手術するとは思いもよらなかったため、『もしかした

もっとみる

10:入院8日目、手術日

入院からちょうど1週間の火曜日、朝はみんながご飯を食べる匂いで目が覚めた。

昨日の21時から絶飲食のため、今朝はそのまま歯磨きに行った。他の患者は食事中だから、まだ誰もいない。歯磨きを終えてベッドに戻ると、看護師さんが点滴を替えに来た。ほぼ毎日針を刺し直していたため、もう刺せる場所がなかなか見つからなく、今回は左の手背に刺した。今日はもう自力で動くこともないから、ここでも邪魔にはならない。

もっとみる

9:入院7日目

待ちに待った月曜日。今日は1週間ぶりにお風呂に入ることができる。そして、ついに明日は手術だ。

朝、点滴を交換しに来た看護師さんが、「今日は午前中に脳波の検査をして、午後にお風呂ね、順番きたら迎えに来るから」と教えてくれた。

朝食を食べ、歯磨きをしていると仲良しのおばあちゃんに遭遇。今日お風呂入って坊主にしてくるね、と報告してベッドに戻る。しばらくぼーっとしていると、赤いケーシーを着た知らない女

もっとみる

8:入院6日目

日曜日、こんなに長い時間ベッド上で過ごしたことがないから、脚が浮腫んでとにかく痛い。そして、昨日から出血が始まっているため、お腹も腰も痛い。出血量は少ないのに、28日周期を崩したせいなのか、今までとは体調が違うからなのか。ピルを飲まなかった時期と同等の生理痛が襲ってくる。あまりに痛むからナースコールを押すが、朝食後と夕食後に頭痛に対するロキソプロフェンを服用しているため、追加の痛み止めはもらえない

もっとみる

7:入院5日目

土曜日、この日も嫌々ながらウィッグ探しを始めた。モデルをしている友達に連絡してみたり、伯母の行きつけの美容師さんと連絡をとってみたり。

しかし、もともとヘアセットのしてあるフルウィッグというものはなく、ロングのウィッグを美容師さんにセットしてもらうしか手段がないのだと判明した。しかも、毛の色やサイズなど、結局実物を見ないことには選べない。あとで美容室に置いてあるカタログを差し入れてくれると言うの

もっとみる

6:入院4日目、病状説明

金曜日の午後2時、家族を交えての主治医からの病状説明が行われた。夫以外の家族は、ここで初めて、私に何が起きたかを詳しく知ることになる。ナースステーションに、夫、県外に住んでいる私の両親と夫の両親が集まり、そこに車椅子で私が合流した。なんだかみんな緊張している。

ここで私は初めて自分で頭の検査画像を見たのだが、右前頭葉に黒い影が写っている。しかしこれは腫瘍では無いだろうと言われて、これは静脈が詰ま

もっとみる

5:入院3日目

木曜日の朝食後、看護師さんから「今日の午後に造影剤の検査があります」と告げられた。ついでに、ちょうど左腕に点滴漏れを起こしていたため、右腕の肘近くに刺し直してもらった。

しかし、この刺し直した針が、肘を少し曲げるだけで血管に当たって痛む。この日の昼食は冷やしたぬきうどんだったが、あまりに痛くて右手で食べることができなかった。ナースコールを押して、針が当たって食べられない、と訴えたが、フォークを持

もっとみる

4:入院2日目

水曜の朝食を終えると、清拭の時間がやってくる。昨日お風呂に入っていないため、拭くことができて嬉しいのだが、体を拭くタオルがいくら洗濯してあるとは言え、臭う。体を拭き終えたタオルは、洗濯をして漂白をして次の日また誰かが清拭で使うのだが、乾かす間も無く濡れたままでいる布はやはり嫌な匂いがする。ハムスターの小屋の匂い。

顔・体用のタオルと、陰部用のタオルは決められていて別の物なのだが、患者に配布される

もっとみる