6:入院4日目、病状説明

金曜日の午後2時、家族を交えての主治医からの病状説明が行われた。夫以外の家族は、ここで初めて、私に何が起きたかを詳しく知ることになる。ナースステーションに、夫、県外に住んでいる私の両親と夫の両親が集まり、そこに車椅子で私が合流した。なんだかみんな緊張している。

ここで私は初めて自分で頭の検査画像を見たのだが、右前頭葉に黒い影が写っている。しかしこれは腫瘍では無いだろうと言われて、これは静脈が詰まったことにより、行き場がなくなったから出血したのだろうと最終診断が下された。そして、この場所はとてもとても運が良い、と。

右利きの人間は、左の脳をよく働かせて生きているから、今回は右前頭葉のおかげで麻痺もなく会話も支障なく、字も書ける。場所が浅いから、手術もできる。これがもっと奥まった場所に起きていたら、寝たきり人間になったかもしれない。

今まで宝くじがちっとも当たらなかったが、ここで全ての運を使い果たしたと言うくらい、奇跡的に良い場所だった。しかし、今回静脈が詰まった原因は、今まで飲み続けていた低容量ピルの可能性が極めて高い、とも言われた。まさか自分が稀な副作用を引き当てるとは思わなかった。

説明はまだ続く。

手術は、来週火曜日の朝1番で入室。頭にメスを入れて、頭蓋骨を外して、壊死した脳と血腫を切除する。その前日にお風呂に入って、頭を丸坊主にする。そして、手術当日の朝に、さらに剃り上げて短くすると説明された。お風呂に入れると聞いただけで、私はとても嬉しかった。ちょうど丸1週間ぶりのお風呂。もうとにかく自分がくさい。枕がくさい。いくら毎朝体を拭いていても、頭ばかりはどうにもならない。嫌で嫌で仕方ない。

この日、介護職の経験を持つ母から、水の要らないシャンプーを差し入れてもらった。説明が終わって早速試したが、清涼感を感じるだけで、あまり気持ちの良いものではなかった。汚れが取れているとも思わなかった。

ここで、手術2日前の日曜日に、ブライダルフォトの打ち合わせを予定していたことを思い出した。幸い、夫が先にキャンセルの連絡をしてくれていた。

そういえば、私はこのために我慢して髪を伸ばしていたのだった。もともとぱっつん前髪を、2年かけてワンレンにし、髪が長い方がアレンジが効くと思って、ショートが楽で好きなのに仕方なく伸ばしていた。思い出した瞬間に少し悲しくなったが、まあこれは仕方ない。むしろこの話を聞いた看護師さんたちの方がよっぽど悲しそうにしてくれた。

ここから写真撮影用の怒涛のウィッグ探しが始まる。友達や親戚に連絡しまくり、どうやってウィッグを探したらいいのか教えてもらう。普段から美容に一切興味がなかった私には、教えてもらうまで見当もつかなかった。しかし、ネットで探し始めても、病気のせいなのか全く集中力が続かず、なかなか目当てのものが見つけられない。医療用ウィッグで検索すると、ミセス用の短い髪のものばかり出てくる。そうではなくて、ヘアセットができるようなロングで、生え際を隠せるような前髪の長さをもつもの。もしくは、最初からセットしてあるもの。これがなかなか見つからない。イライラした。

予約をしていた写真屋さんに電話してみたが、パーツのウィッグはあるが、フルウィッグはないとの返事を受け、もう諦めようかな、とも思った。


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