建築家の言葉

【視野を広げる読書本4】建築家の言葉

 過去の建築家たちは何を語ったのか。
 その名言がこの一冊に詰まっています。

私たちの暮らす社会を、世界を動かした建築家たちは何を考え、何を語ったのか。
この本は株式会社エクスナレッジの「X-Knowledge HOME」という雑誌に掲載されていた「建築家の言葉」を抜粋したものです。

登場する建築家 (掲載順 敬称略)
アントニオ・ガウディ
吉阪隆正
藤森照信
フンデルトヴァッサー
内藤廣
ミース・ファン・デル・ローエ
香山壽夫
ルイス・バラガン
ロバート・ヴェンチューリ
トーマス・ヘルツォーク
隈研吾
ジャック・ヘルツォーク(ヘルツォーク&ド・ムーロン)
フランク・ロイド・ライト
バックミンスター・フラー
堀部安嗣
塚本由晴
オスカー・ニーマイヤー
アルヴァー・アールト
工藤国雄
リカルド・ボフィール
アントニン・レーモンド
高山正實
伊東豊雄
サルヴァドール・ダリ
サイモン&ガーファンクル
ダン・シモンズ
田所辰之助
石山修武
ZZ
アルヴァロ・シザ
デニス・スコット・ブラウン
鈴木了二
青木淳
中山繁信
ウィリアム・メレル・ヴォ―リズ
鯨井勇
内田青蔵
菊竹清訓
ル・コルビュジエ
難波和彦
原宏司
野沢正光
古谷誠章
マリー・ノイミュラース
ヴァルター・グロピウス
クラウス・ウエーバー
ラースロー・モホリ=ナギ
レム・コールハース
伊藤俊治
八束はじめ
パオロ・ソレリ
ハンス・ホライン
エリック・グンナール・アスプルンド
イサム・ノグチ
ルイス・カーン
ヨーン・ウッツォン
ハッディ・テヘラーニ
森川喜一郎
CKR
ヤコブ・ファン・ライス(MVRDV)
ブルース・マウ
クラウス・ウエーバー
磯崎新
各章
・建築とは何か
・建築家とは何か
・名作とは何か
・住宅とは何か
・芸術とは何か
・都市とは何か
・人間とは何か
・教育とは何か
・日本とは何か

以上の10章に名言が分けられています。
内容は雑誌版の「建築家の言葉」を各章のタイトルに沿って分け、まとめられています。

1ページにタイトル言葉と、その解説、略歴と出典が書かれています。

反対のページには、タイトル言葉をさすスケッチが時折はさまれ、分かりやすくなっています。

今回は、大学1年生のときに読んだ本を読みかえしました。

4年たって、言葉をそのまま受け取っていたころと、今で受け取り方がどう変わったのか知るために書きます。
読みにくかったり、言葉の意味が分かりにくいときもありますので、それはご了承ください。

前までは、本の言葉を鵜呑みにして、何の根拠もなく信じていました。
今になって読んでみると、疑問に感じる点が多く、本当にそうなのかと考えてしまいました。

言っていることは理解できるが納得できない。
ただそれは、内容が難解なわけではなく、「なぜ」そう言えるのか、という部分の解説が少ないからです。
(僕の知識と経験不足が一番の理由ですが……)

ただ、この本は正直にいうと知識として学べることは多くありません。
何かの参考になるようでもないです。

ただ様々な建築家が自分の考えを言葉にするときの文章は複数のタイプがありました。
そこが少し面白かったです。

受け取った感性を言葉にした詩のようで
自分のスタンスや思想を示す思想本のようで
先生が教えてくれる授業のようで
建築への愛をこめたラブレターのようで
基本的な知識を獲得する教科書のようで
建築家の言葉を考察する解読書のようで
建築家として意識を高める自己啓発本のようで
建築家の生活にふれた日記のようで
自分の認識を改める哲学書のようで
絵画や小説の一文を想起させる文芸のようで

建築家によって表現が違っていました。

その一例を紹介します。
(本文を参照に、文章が短くなるよう手を加えています)

受け取った感性を言葉にした側面(詩)

新しい空間とは
吉阪隆正

雨が降ってきた。
バナナの葉を一枚もいで頭にかざした。
雨のかからない空間ができた。
バナナの葉は水にぬれて緑にさえている。
パラパラと雨の当たる音がひびく。
この光とこの音の下に居る者は雨に当たらない。
この葉をさして歩くと 葉先がゆれる。
ゆれるたびにトトトと葉の上の水が落ちる。
相当な雨らしい。
(原文ママ)

 新しい空間とは こんな風にしてできるのだ。おそらくこれ以外の方法で 新しい空間は生まれない。葉っぱは傘になり 傘は屋根になり 屋根は住居になって それからまた 諸々の公共の場所にもなって言った。
p24 建築とは何か 参照

自分のスタンスや思想を示す側面 (思想本)

建築は形じゃない
隈研吾

「建築は形だ」というと退屈してしまう。形には限りがあるが、素材は無限に自由。素材を考えると楽しみが広がる。あきないで建築をつくり続ける自信がでてきた。
p45 建築とは何か 参照

先生が教えてくれる側面 (授業)

有機的な建築
塚本由晴

 有機的といわれると曲線をイメージするが、それは造形的な一つの捉え方にすぎず、部分と全体が分かちがたくあることが有機的である。概念的な捉え方だが、生活の問題や人の振る舞いの問題、熱環境や雨など、建物は動かないが、建物の周りにある日々移り変わるものが、建物の構成に位置づけられていることが有機的といえる。必ずしも曲線が有機的というわけではない。
 そういった建築が都市空間で反復されると、こんどは建物同士で相互関係が生まれ、隣接を前提に、その振る舞いを取り込んで自分の振る舞いをきめていく。そうなってくると、都市空間としても有機的な関係が生まれると思っている。
p55 建築とは何か 参照

建築への愛をこめたラブレター的側面 (恋文)

自由な曲線の発見
オスカー・ニーマイヤー

私は人工的な直線に興味がない。
私が魅せられるのは、自由に流れるような感覚的な曲線である。
私は曲線を発見する。故郷の山々の稜線に、
うねる川の流れに、曽和に浮かぶ雲に、
そして私が愛してやまない女性の体の線に。
曲線が全宇宙をつくっているのだ。
アインシュタインの曲線的な宇宙を
(原文ママ)

p56 建築とは何か 参照

基本的な知識を獲得する側面 (教科書)

建築空間は時代空間を反映する
ミース・ファン・デル・ローエ

 建築家は特殊な立場にある。時代のなかにいながら、その時代を表現しなければならない。しかし結局のところ、建築はその時代の文明の表現でしかありえないのだということを、私は心から信じている。
p63 建築家とは何か 参照

建築家の言葉を考察する側面 (解読書)

「建築は存在しない」ルイス・カーン
工藤国雄

 カーンにとって建てることより、不浄してくるあらゆる建築の可能性を追い求め、それが本当にそうかどうかを確かめる日々だった。彼は「建築は存在しない(Architecture does not exist)」という。つまり「汝の建築は天国にあり」となる。日々のデザイン活動は、神の可能性に近づくことであって、確信できないものを建てる努力ではなかった。といって、それは静かに祈るような時間ではなく、朝の白けた顔が眞赤になり、そして夕方には眞黒くなるほど闘いつづけた日々だった。それは消耗こそ創造であることその証であった。「建築は存在しない」というステイトメントはせつなく胸をうつ。
p68 建築家とは何か 参照

建築家として意識を高める側面 (自己啓発本)

高いゴールに到達せよ
アントニオ・ガウディ

 真の建築をめざす者は、だれでも際立った技術を持つだけでなく、あたかも高い山に登ろうとしているかのように、大いに努力せねばならない。自分の力を知り、自己鍛錬と自己犠牲すら覚悟せばならない。非常に高いゴールに到達するためには、それが必要不可欠だからである。
p71 建築家とは何か 参照

建築家の生活にふれた側面(日記)

95歳の普通の生活
オスカー・ニーマイヤー

〈2003年、当時95歳のニーマイヤー〉
 僕は毎日、このオフィスに朝9時にきて、夜8時にでるような生活をしている。デザインができあがらうと、仲間の建築家たちに掘り下げてもらう。次に説明文をかき、それに説得力がないと、最初からデザインをやり直す。僕はひとり静かに部屋の片隅で考えながら、解決の糸口を探す。手は手段にすぎない。芸術家の成功にとって重要なのは直感を重んじること。その作品がもつ「サプライズ(劇的な瞬間)」に刺激されること。すべての芸術の根底には「サプライズがある」
p73 建築家とは何か 参照

自分の認識を改める側面 (哲学書)

時間を過ごす場所
青木淳

人は料理するために台所にいるのではなく、料理をつくるという時間を過ごすために台所にいるのです。確かに料理をつくるのに便利な方がいいけど、ある特定の時間を過ごす場所はどうあるべきか、と考えるのが建築の設計だろ思います。
p122 住宅とは何か 参照

絵画や小説の一文を想起させる側面 (文芸)

学校の起源とは
ルイス・カーン

学校の起源は、自分を教師と思っていない教師と、自分を生徒と思っていない生徒が、樹の下で話している姿である。
p215 教育とは何か 参照


以上で紹介したものは、本の一部にすぎません。
全部で150の言葉と解説が載っています。

僕個人としては初心を思い出す懐かしい一冊です。
今日は久しぶりの文章の練習を兼ねて書いてみました。

4月に入り、これから建築を学んでいく1年生には少し理解しづらいかもしれませんが、建築を学んで理解しはじめた方々には丁度よいと思います。

言葉を放った建築家をGoogleで検索片手に読むと、さらに面白くなります。

自分が興味をもった言葉や、疑問に思った文章、気になる建築家をもとに、次に学ぶ本を探す参考になるでしょう。

アマゾンの「なか見!検索」で、ほんの少し閲覧することができます。

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