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短歌

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ぽとぽと詠みます
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tanka #9 12.01〜12.13

tanka #9 12.01〜12.13

ゆび先でかすかに触れたかなしみに「いいね」しかできなくってつらい

もうぜんぶ気持ち悪くてだめ、あたしの知らないあたしだけ愛して

気を抜くと心はドーナツになって 足踏みをしてしまえる今日だ

「だれよりも早く起きて遅く寝ること」世界のひみつを知る方法

十二月の格好したおっさんがすごい形相で走る冬の日

オリオンに這わせた指から溶けだして心ばっかり碧くてだめだ

きみはまだ師走の風に吹かれてて 

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tanka #8 11.21〜11.30

tanka #8 11.21〜11.30

きっともうすぐ朝だから「会いたい」の気持ちに夜がついていかない

 

脱ぎかけの過去で蓋した 飲んだ水そのまま出てくるみたいな夜に

「甘い」って味だから変 鼻をつく焦げた香りがそんな感じの

ポケットを逃げ出すカイロ貼りつけて こっそり上がる地球の温度

たまにみじん切りにされる心から ため息みたいなしゃぼん玉

帰り道 籠のたまごが跳ねるたび わたしの中で母が鳴いてる

お湯はりのメーターひ

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tanka #7

tanka #7

信号のボタン押したら手に入るそんな世界もあるって知ってた?

面影がコップの底に貼りついて あと一口を残すきみの癖

このとおり息も吸えない夜だから お許しくださいストロングゼロ

わたしたち間違えてたね いちばんに大事にすべきは自分だったのに

撫でる風に冬の匂い タートルネックが汗ばんで 飽きないね、秋

今もまだこころのなかに君はいて ひとつの枕を不思議がってる

がんばって生きてるわたしを

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tanka #6

tanka #6

まあるくてざらざらしててつめたそう かなしみの意思 かなしみの石

すくったら指の隙間をすり抜けるつめたい雫に名づけよう「愛」と

いっぽんの煙草で朽ちた家があり 消し忘れたの火の消し方を

オレンジの街が暮れたら赤緑 血糊をつけたサンタクロース

スコールが火照った心を冷ますから 傘のいらない雨の日もある

一瞬は一瞬のまま微睡んで 光を呑んだ 淡い夢とおく

やさしくて あたたかい あのぬるま

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tanka #5

tanka #5

「好き」だけが降り積もっては溢れゆく 擦れる肩からふれあうゆびから

照りかえす月の灯りが荒海をやわらかく凪ぐことも知らずに

れいぞうこ ネギが窮屈そうにおり ドアを引くたび身構えており

六畳の立方体に囚われて どこにも行けないわたしをどうする?

わたしたちもう無理なんだね あつい背をなぞる夢すらさめてしまった

ぽたぽたと水滴石を穿つように緑がかったせかいにやられる

喉のおく つっかえた

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tanka #4

tanka #4

あふれてはこぼれおちてく言の葉をすくいとっても救いきれずに

言葉だけ溢れてもむなしいばかりです 幸せになれないのなら(きみと)

太陽のいない時間に起きちゃうし、きみがいうほどきれいじゃないよ

食べる・寝る・書く・読む・話す・歩く ぜんぶつかれて、なんだっけ、休むって

きみの黒いところをなぞる いつまでもぼくのために傷ついていて

つかまえて離さないでいてあのときの気まぐれを運命だと証明して

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tanka #3

tanka #3

2020.10.20 a.m.5:00 鴨川にて

明け方、BGMはDAMチャンネルで、世界にふたりでもいいのになあ、

白んだ空が青になり 鴨川はわたしをせかいでひとりにする

まあ生きて、生きてゆきましょう 柴犬を散歩させるなどしながら

鴨川、まじくそぬるかったです、指をにほん浸してみたんですけど

見ず知らずのおじさんのために泣けそう、いろいろあったようですし

鴨川は鴨がいるんで鴨川

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tanka #2

tanka #2

ゆめであれ ひとひら千切って 嘘になれ こゆびの先から 火花かすかに

酒を飲むそのたび死にたくなってしまう膝小僧しね脳味噌とけろ

いいよこの苦しみだって愛だってひとつ残らず詠んでやるから

「おめでとう!」「びっくりした?」マンションは壁が薄くて今夜もひとり

あしたなど止まない雨などなくていい ただこの一瞬息ができるなら

退屈で美しいんだワンカップ、やわらかい風、めくる音とか

みじかいき

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tanka #1

tanka #1

#tanka つければ許される黒くよごれたわたしのこころ

二十年生きても「おとな」になれなくて五十年後もそんな気がする

れいぞうこ、あけてもみつからなかったな、いつかのわさび、わたしのいばしょ

キリトリセン切れたためしがありません はみ出つづけた人生でした

傾いた地軸のように斜めだし、わたしひとごとみたいに恋する

「きみが好き」言葉にすればあまりにもシンプルすぎてテンプレすぎて

夜の風

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