短歌人8月号

短歌人8月号

あじさいに一眼レフを向けているわたしの写真を撮る人がいない さみしさをごまかすためにつづけてる会話の中身に意味なんてない 目の悪いわりにこまかい文字を書くわたしの手紙はとても読みづらい 道をゆく誰とも服が完全に同じではないことが不安だ いつかみんないなくなるってこと以外なにも考えられなくなった

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生きてる短歌のタイムでワッサー vol.28

生きてる短歌のタイムでワッサー vol.28

アイツにも彼女ができた放課後にシュートをきめたカッコイイ俺 故郷へもうすぐ還るわたくしの愛した人はいるのでしょうか 「あの方は悪い人です」嗚呼どうか、どうか私を許してほしい。 当然の帰結なむめり望まれし命が望まざれたることは 幸せだ、うちのこがいて幸せだ。我が家に来てくれてありがとう。 損したり悔しかったりする日々も私はきっとこの子と生きる 出口へと導く役を終えながらピクトグラムは焼け落ちてゆく 愚かしい大阪人の清濁を眺めつづける道頓堀は 感情に色があるなら明

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2021年かばん7月号詠草「不穏の日めくり」

2021年かばん7月号詠草「不穏の日めくり」

2021年かばん7月号詠草「不穏の日めくり」 風野瑞人 いつの日か終わりが来ると思えずに背中をまるめつづけるソリテア 星々の孤高の距離はどれぐらい 明るい夜の点の少なさ いつまでも選べない色 まっ白なスケッチブックが黙って責める あとかたもない存在として生きているひかりの気持ちで街を見つめる 陳列棚に佇むグラス 偽物のクリスタルだから願いを持てない 黒猫に横切られるたび電卓を呼び出している 自分の確率 棄てられた段ボールから読み取れたかつての樹々の恐れていたもの

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未来2021年7月号詠草「滞る日々」 風野瑞人

未来2021年7月号詠草「滞る日々」 風野瑞人

未来2021年7月号詠草「滞る日々」 風野瑞人 ガラス越し見える景色の晴れ晴れと 満員電車の口を閉ざす日々 終わりへと向かう名所のスクランブル交差点の青が止まない いつまでも休符にならない旋律のようなグラフがテレビに映る ひとを避けつづけて独りの散歩まで風に帰れと背中を押され 走る悪寒 枯れかけているサボテンの健気なみどりの吐息のような ディストピア小説ばかり読み耽る 文脈をぬう檸檬の不条理 感情の日持ちがしない 風景がモノクロームにみえる眼球 割りばしでひと

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いつの間に追い抜かされてただひとり気の遠くなる夢を見ている #短歌 #tanka #jtanka

いつの間に追い抜かされてただひとり気の遠くなる夢を見ている #短歌 #tanka #jtanka

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歌集 『アンパラレル』

歌集 『アンパラレル』

アンパラレル  Unparalleled 早瀬ちの(はやせ・ちの)  2002年2月13日奈良県生まれ。小学四年生で小倉百人一首に出会い、和歌の虜になる。小学五年生で口語短歌を知り、翌年から作歌を始める。普段は短歌を読まない人にも短歌を楽しんでもらうことをひとつの目標としている。趣味は競技かるた。地図が読める系の重度の方向音痴。ペペロンチーノとマカロンが好物。本著が第一歌集。 イノセンチュア「幸せになってください」と去る先生 出会いの春など嘘だと説いて いつまでも子供

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生きてる短歌のタイムでワッサー vol.27

生きてる短歌のタイムでワッサー vol.27

それゆえに宿敵である、おそろしく未熟であった親の背中は。 しょっぱいの「ょ」ってだいじね、たいていのことは涙で洗い流せる。 遊ぶ金ほしさにやった労働で失ったもの たとえば家族 幸せが壊れた先で安酒をぐずぐずと飲む、この先ずっと 復興を遂げたニュースは心まで閉創済みのハッピーエンド 血縁がなくて保護者と見なされずじっとりとした迷子センター うまれつき風船をみる運命だ きらいなものは眼圧検査 どうせなら滅んでほしい(わたくしを抱きしめたまま滅んでほしい) あなたっ

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花筐(はながたみ)めならぶ人のあまたあれば忘られぬらむ数ならぬ身は(読人しらず)

花筐(はながたみ)めならぶ人のあまたあれば忘られぬらむ数ならぬ身は(読人しらず)

#読人しらず #古今和歌集 754 #jtanka #短歌 #恋 あなたには、花籠の編み目がぎっしり並ぶようにたくさんの見比べる人がいますから、きっと忘れられてしまうでしょうね、取るに足りない私などは。 「花筐(はながたみ)」は「花籠(はなかご)」。編み目が細かく並んでいることから「めならぶ」の枕詞になっている。 「めならぶ」はバ行四段動詞「目並ぶ」の連体形。「見比べる」の意味。 「あまたあれば」は「あまた+あれ+ば」。「あまた」は副詞「数多(あまた)」で「たくさん・

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わがごとく我をおもはむ人も哉さてもや憂きと世を心見む(凡河内躬恒)

わがごとく我をおもはむ人も哉さてもや憂きと世を心見む(凡河内躬恒)

#凡河内躬恒 (おおしこうちのみつね) #古今和歌集 750 #jtanka #短歌 #恋 私が恋い慕うのと同じように私のことを恋い慕ってくれるような人がいればいいのになあ。そんな人がいても恋はやるせないものなのか、試してみたい。 「おもはむ人」の「む」は婉曲を表す助動詞「む」で、「私のことを恋い慕ってくれるような人」の意味。 「哉(がな)」は願望を表す終助詞で「……がほしいなあ」や「……があればなあ」の意味。 「さてもや憂き」の「さても」は「そうであっても」の意味の

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みても又またも見まくの欲しければなるゝを人は厭ふべらなり(読人しらず)

みても又またも見まくの欲しければなるゝを人は厭ふべらなり(読人しらず)

#読人しらず #古今和歌集 752 #jtanka #短歌 #恋 逢っても逢ってもまたさらに逢いたくなるので、逢うのがあたりまえになるのをあなたは避けているのでしょうね。 「見まくの欲しければ」は「見まく欲しければ」に同じ。「見まく欲し」は「見たい、逢いたい」の意味。 「なるる」はラ行下二段活用動詞「慣る・馴る」の連体形〔れ・れ・る・るる・るれ・れよ〕。「馴れ親しむ。なじむ」の意味。 「厭ふ」はハ行四段活用動詞「厭ふ」の終止形。「嫌って避ける」という意味。 「べらな

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