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ハローキティの「笑わない理由」から学ぶ共感型マーケティング

世界的に有名なサンリオの人気キャラクター、ハローキティ。世界中を賑わせた前回オリンピックの閉会式での特別映像にも出演するなど、日本を代表するキャラクターとも言える存在だ。

特に子どもや女性に愛されるキャラクターであるが、実はハローキティには表情がない。笑うということがない特殊なキャラクターである。正しくは、キティちゃんの表情には口が描かれておらず、目元も笑ったり閉じたりということが少ないため、イラストによって表情が変わることがほとんどない。
(たまに目をつぶっていたりすることはありますが…)

ミッキーマウス、ドラえもん、アンパンマン、エルモ、スヌーピー…世界的な人気を誇るキャラクターには口が描かれていることがほとんどで、口元は笑顔や困った顔など、表情を表す大事な要素となっている。愛されるキャラクターには、豊富な表情や愛嬌が求められるとも言えるはずなのに、なぜキティちゃんの顔には口がないのだろう…

実はこれには驚くべき理由があった。

「キティちゃんにはお口が描かれていない。実はそこには、やさしさや思いやりは口(言葉)で言うだけではなく、態度で示しましょう!というメッセージが込められているのです。困っている人には、相手の気持ちになって自ら進んで手を差し伸べて助けてあげることが必要だと、キティちゃんは私たちにそっと教えてくれているのです。」
(サンリオホームページ:「いちごの王さまからのメッセージ」より

口が描かれていない理由には、幸せや平和を大切にするサンリオのキャラクターらしい「手を差し伸べることの大切さ」が込められていた。ここまで深い背景があったとは恐るべし…
しかしさらにすごいのが、このホームページのメッセージの中でキャラクターのことがより愛おしく感じられるようなストーリーをファンに届け、キティちゃんというキャラクターを通してサンリオが目指す社会や理念をやわらかに発信しているという点。キャラクター愛と社会を想う気持ちに溢れた仕掛けに感動すら覚えた。

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そして、口が描かれていない理由としては正式に認められていないものの「固まった表情がないからこそ、ここまで愛されるキャラクターになった」と担当デザイナーが語るエピソードがある。
私も幼い頃から周りから教えられた話で、ネットでも有名なエピソードなので知っている人も多いはず…過去に海外留学でホームステイをしていた際、滞在先の子どもがキティちゃんが好きだったことからこのエピソードを伝えると、「日本人って本当に丁寧で、こんなに素敵なバックグランドがあるのね」と賞賛されたことがある。国を超えても感動されるエピソードとは一体…

「愛らしい顔でありながら固まった表情がないからこそ、自分の感情の変化に寄り添って共感してくれるキャラクターになる。自分の気持ちがキティちゃんの表情に投影されてもっと同じ気持ちを共有できたり、本当の意味で癒されるキャラクターになる。泣きたい時も寂しい時も辛い感情を受け入れて、そっと寄り添ってくれる」

おそらくキティちゃんの誕生時にはここまでのストーリーはなかったものの、唯一無二の存在となった理由を語るには大切なエピソードである。キャラクターといえば決定的な特徴や性格を持つものが多い中で、キティちゃんは「共感してくれる、寄り添ってくれる」ということで絶大な人気を築いてきた。(もちろん見た目の可愛さもありますが。)大事な要素である口がなかったことで、辛い時にこそ愛おしく感じられたというファンもきっと多いはずで、強烈なインパクトや特徴がなくても「共感」というものがキャラクターの存在感をここまで深めるものだということを証明しているような気がする。最近ではSNSやデジタルマーケティングの中でこの「共感型マーケティング」がさらに注目されているが、ハローキティはその先頭として、「同じ気持ちで寄り添ってくれる」という大切さを教えてくれている。

ここからは私の事業の話になるが、ブランドを立ち上げて最初にSNSを始めた際、自分のキャラクターをどう作っていくか深く悩んだことがある。私はただの25才のOLで、世界を変えられるほどのセンスはなく、カリスマのような天才的な魅力もなかった。顔は特別美人でもないし、輝かしい経歴があるわけでもない…本当にどこにでもいる、普通の25才だった。

それでも、少しでもブランドを知ってもらうためには、そしてSNSで存在感を出すためには圧倒的なキャラクターが必要であると思った。何日も悩んだ後で思い出したのが、まさにこの「キティちゃん」である。
「ブラジャーに悩んだOLが作ったブランドならば、女性の悩みに寄り添える存在であればいいんだ…」そう確信した。
それからは、強烈なキャラクターを演出することは止めて、ただひたすらにお客様の声に耳を傾け、ふっと相談できるような柔らかさを大事にした。
むしろ私の個性や性格はあまり押し付けず「辛い時にこそ寄り添ってくれる商品」というイメージを今も大切にしている。まだまだキティちゃんには及ばないけれども、これからもキティちゃんの持つ「同じ気持ちで寄り添う優しさ」を大事にしていこうと思っている。

最後に…キティちゃんには表情がない、笑わないと書いておりますが、イラストからはキティちゃんの喜びや嬉しさを感じられるし、またサンリオピューロランドで会うキティちゃんは、表情が変わらないとは思えないぐらいに体や動きで楽しい気持ちを表現しています。決して無表情ではない、かわいらしさが詰まったキャラクターであることはしっかりとお伝えさせて頂きます。そしてもちろん、口が描かれた表情豊かなキャラクターも、人の心に寄り添う魅力はたくさん持っていると思っています。(コロナが落ち着いたらサンリオピューロランドでキティちゃんにまた会いたいなぁ…)

▼筆者紹介
小島未紅(29)
ランジェリーブランドBELLE MACARON代表。 2018年11月にオリジナルランジェリー24hブラを発表。 SNSを中心に人気を集め、最高日商1000万円以上の売上を記録。 立教大学法学部卒。新卒でNTTグループに入社後、2016年に起業し、株式会社ashlynを設立。




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