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シンゲノム解析×CRISPRでシン疾患治療

遺伝子工学の急激な進化で、21世紀初頭にはヒトゲノム計画と呼ばれる我々のDNA内における塩基配列情報の解読作業は終わりました。
ただ、当時はあくまで1個体のコーディング(たんぱく質に翻訳される塩基部)エリアが中心で一部切り捨てていました。

その集団差・個体差まで特徴を突き止める探索は続いています。

上記の初めに紹介されているのは、民族(日本人という単位)差による病気のかかりやすさを解析して、効率的な医療に貢献しようという動きです。

このように、特定の病気や体質をターゲットにしてその集団または個体差を幅広く調査することをGWAS(Genome-Wide Association Study:ゲノムワイド関連解析)と呼びます。

下記によると世界に先駆けて理研が報告したようです。

冒頭記事の巻末で触れた通り、コーディングエリアでの塩基配列だけでは実用性はまだ低く、遺伝子発現メカニズム(塩基配列に対してOn Offを押す仕組みがある)を調べるENCODE計画で、ゲノム解析が続いています。

このコーディングエリアですが、DNA全体のわずか2%程度です。その他の「非(ノン)コーディングエリア」は、以前は「ジャンクDNA」とも呼ばれていましたが、近年その役割が見直されています。

最近の研究で、非コーディングエリアに対するGWASを行って、遺伝子の変異(以下バリアントと呼称)特定と治療に成功した、という成果が発表されています。

ようは、
GWASと単一細胞シークエンス(細胞内まで解析)を通じてバリアントの当たり付けを行い、そこをCRISPRで編集することで疾患の治療に道を拓いた、
という話です。

記事内で驚きだったのが、バリアントは非コーディング部にあるだけでなく複数存在し、それらが因果関係で繋がっているということです。

しかも近傍にある塩基も一緒に移動することもあり、問題のある遺伝子だけを丁寧に仕分けする必要があるとのこと、書いているだけでめまいがしそうです。
念押しですが、数十万名の被験者比較からスタートした研究です。

それを個体差から特定化し、複数のバリアントとそれらの因果関係を解きほぐし、本質的な原因となるバリアントをつきとめ、そこにピンポイント(周辺をいじらず)にCRISPRの技術で編集する、ということが出来てしまう時代です。

今回は鎌状赤血球貧血という疾患に対して行われ、シンプルにいえば酸素を届けるヘモグロビン不足をもたらす遺伝性疾患です。そこに今回75万名の被験者をGWASでパターンを洗い出し、543のゲノム箇所に候補を絞って問題のバリアントを特定し、遺伝子編集で無効化することに成功しました。

彼らが今回編み出した手法は、STING-seqと名付けられ、まさにふさわしいネーミングです。

今回の手法自体は、他の疾患にも応用が期待されており、もしかしたらブレークスルーが起きるかもしれません。

「科学技術は加速度的に進化する」とは言われますが、今回は既存の新技術を組み合わせて新しく発明する、という分かりやすい例だと思います。

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