見出し画像

無冠の女王「呉健雄」氏の業績:史上初の量子もつれ実証

前回の補足です。

もう1つ、あまり知られていない呉氏の業績について紹介します。

「量子もつれ」を史上初めて実証したことです。

2022年のノーベル物理学賞で「量子もつれ」を実証した3名が選ばれました。

今でも、その技術的応用は注目され、最近だとこんな面白い発表も行われています。

https://www.riken.jp/press/2024/20240329_2/index.html

上記受賞者の先人として「ジョン・スチュワート・ベル」も紹介されますが(故人のため対象外)、実はベル(1960年代)よりも前に量子もつれを示す実験を行ったのが呉氏でした。

下記に呉氏の歩んだ人生含めてその実験を紹介するサイトをみつけたので貼っておきます。

下記に要約も載せておきます。量子もつれとパリティ対称性破れに絞ってますが、それ以外の科学史としても興味深い内容です。

この記事は、2022年のノーベル物理学賞の研究の背景にある、物理学者のChien-Shiung Wu(呉建雄)の功績について述べています。1949年、WuとShaknovは光子のもつれ合いの証拠を初めて記録しましたが、当時はほとんど注目されませんでした。もつれ合いは量子力学の奇妙な現象で、離れた粒子間に瞬時の相関があることを示唆しています。アインシュタインなどは説明不足だと考えましたが、その後の研究でもつれ合いの存在が確認されました。

Wuは中国系アメリカ人の女性として、物理学の分野で差別に直面しましたが、1956年にYangとLeeの仮説を実験的に証明し、パリティの法則が破れることを示しました。この功績に対し、YangとLeeは1957年にノーベル賞を受賞しましたが、Wuは除外されました。

近年、歴史家のSilvaらによって、Wuの1949年のもつれ合いの実験が再評価され、その後の研究の礎となったことが明らかになりました。Wuの物語は、科学における女性やマイノリティの貢献が見過ごされがちな現状を示すとともに、科学の進歩が孤独な天才ではなく、多くの人々のつながりに依存していることを教えてくれます。

by Claude3 Opus

個人的に意外だったのは、呉氏は今話題の「オッペンハイマー」の教え子でもあったという点。

オッペンハイマー自身については過去にも書いたので関心のある方はそちらへ。

呉氏は、当時から優秀でしたが、なぜかマンハッタン計画に招聘されませんでした(ただ、のちになって関わったようです)
そして戦後、オッペンハイマーも呉氏のパリティ非保存則を示した実験については公の場で称賛していたようです。

話を戻すと、当時「量子もつれ」の実証自体が風当たりが強かった(あのアインシュタインも最後まで裏に隠れた変数があると信じていた)ようです。
そういったためらいもあったのか、呉氏自身も強くアピールはしなかったようです。

これはジェンダーだけの問題ではないのかもしれませんが、こういった歴史に埋もれた偉大な業績がこのように掘り起こされてくるのは素晴らしいことだと思います。

ぜひノーラン監督には、呉氏の人生を映画化してほしいなぁと無邪気なコメントで締めておきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?