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ミクロとマクロを貫く量子宇宙の謎

前回、量子力学の「収縮」(主観的な観測によって存在確率が1つに決まる慣習的に決まったルール)を否定した「多世界解釈」のさわりに触れました。

ポイントは、「収縮」でなく共存したままでその1つを観測しただけとし、他の状態が見れないことを「世界が分岐」した、と表現します。
この表現がどうしてもオカルト的な響きをもってしまいます。。。

それで、最後にしれっと「多世界解釈は多元宇宙論(マルチバース)と似ている」とする研究もあるよ、と下記の引用にとどめました。

さすがに乱暴だと思うので、もう少し補足しておこうと思います。(ただ、あくまで仮説ですので楽しむ程度に)

改めて「マルチバース(多元宇宙論)」の振り返りです。

ようは、
宇宙を始まりに起こったインフレーション(真空の揺らぎによるエネルギー)は1つでなく泡のように多く生まれた宇宙像である、
ということです。
逆に言えば、そうしないと今の宇宙の加速膨張エネルギー(ダークエネルギー)を説明するのが難しい、という見方も出来ます。

で、この泡のような多宇宙が生成される過程こそが、まさにミクロのみ通用すると思われてきた量子力学の確率的な過程(シュレディンガー方程式を解く)である、と提唱したわけです。

なかなか大胆な仮説ですが、確かに直感的にも構造が似ています。

改めて多世界解釈を説明すると、そのスケールによらず収縮はおこっておらず存在したままで、我々はその部分を観測する(シュレディンガー方程式で確率的に表現)、という見方です。

もう少し端的に言えば、すべてはシュレディンガー方程式であり、ミクロでみると量子力学の多世界解釈、マクロでみるとマルチバース理論だよ、ということです。

正直、なかなかすっと受けとめにくい仮説だと思います。
引用した英語投稿(一応その専門の方です)でも一般読者向けに考慮しており、補助的に「ブラックホール」の例を持ち出しています。

ブラックホールは超高密度かつミクロな存在であるため、量子力学と一般相対性理論を統合した量子重力理論の実験材料としてはうってつけです。

このブラックホールについて、かつてのアインシュタインVSボーアを中心とした「量子論争」に近い「ブラックホール論争」が起こりました。
量子論争の中身についてはメインでないので過去投稿にとどめておきます。

量子論争は言い換えると「実証VS実存」ともいえますが、ブラックホール論争は、「ブラックホールに入った情報は失われるか否か?」です。

やや込み入った話なので、大事なポイントだけ補足します。

車いすの天才とも呼ばれたホーキング氏は、ブラックホールが(輻射によって)蒸発し、それは「質量」にのみ依存すると提唱しました。詳細を知りたい方は下記のWikiや書籍を参照ください。

ブラックホールには、それ以上近づくと光ですら戻れない「事象の地平線(イベントホライズン)」と呼ばれる境目があります。

この境目に質量が同じで別の書籍をそれぞれ外から投げ入れると、いずれはブラックホールが蒸発して取り出されるのですが、そこで我々が確認できるのは「質量」のみです。
つまり、書籍で何が書かれているのかが消失してしまうのではないか?というのがホーキングの強烈な一撃(パラドックス)です。
一見それがどうしたの?と思うかもしれませんが、仮にホーキングが正しいとすると、物理学の基本原則が崩れることを意味します。

結論から書くと、ホーキングが賭けに負けました。(ホーキングは賭けに弱いことでも有名。ただ、ある意味ユーモアを含めています)

どう解決したかというと、観測者は事象の地平線を超えることは出来ない、という考えかたです。
つまり、その境目の外にいる観測者は外の時空、内は内の時空しか存在しえない、ということを受け入れることです。
これは、量子論の大家で有名なボーアが唱えた「波と粒子を同時には観測出来ない相補性原理」に近いことを言っており、「ブラックホールの相補性」と上記の記事では表現しています。(学術的な用語なのかは不明)

元記事でも触れてるので足しておくと、ブラックホールの外を語るときに内に入って直接観測することはできませんが、外から見た地平線の面積(2次元)からその内部構造(3次元)が分かるという魔法のような結果が超ひも理論から導かれており、それを一般化したものが「ホログラフィー原理」と呼びます。過去の投稿も添えておきますが、流したほうがよいかも。

マルチバースを泡宇宙と例えると、各泡の境界が事象の地平線に相当し、泡の外は別の時空間です。つまり存在しないと見なせます。
逆に別の宇宙を存在する、とみなしてしまうと、理論的には泡は「無限」に増えていくため、取り扱いが厄介になります。(過去に黒体輻射が古典理論だと無限大に発散するために量子力学という離散モデルを編み出したのと似ています)

そして、観測者と物理現象をセットで見ないといけない、というのは量子力学の思想そのものです。

復習ですが、通常の量子力学解釈では、観測するまでは量子(素粒子)は「重ね合わさられて」確率的にしか表現できず、観測者が観測した瞬間に「収縮」されてその物理量が一意に定まるというものでした。

その「収縮」を否定し、世界は収縮せずに多岐にわたって時間が続いても存在し、あくまで我々観測者によってその存在が1つだけみえるというのが「多世界解釈」です。(相当荒っぽく書いてますが)

つまり、常に時空は(収縮せずに)「重ね合わせ状態」にあり、それが我々が存在する単一の時空間だけでなく、別々の時空間(泡宇宙)が生じる過程でも同じなのではないか?
ということを、ブラックホールを引き合いに出して唱えたわけです。

元の英語記事以外に、日本語書籍で今回の内容を分かりやすく紹介した参考書籍を引用しておきます。

まだまだ世界(別宇宙含む)は不思議に満ち溢れていることが少しでも感じて頂けたら本望です☺ よいお年をお迎え下さい。


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