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量子力学の多世界解釈

今年のノーベル物理学賞で話題になった「量子もつれ(エンタングルメント)」。
我々の直観に反することから誤解が生じますが、その代表例が記事として紹介されていました。


下記がその代表的な誤解です。
1.猫は生きていても死んでいてもいい
2.もつれは単純なアナロジーで説明できる
3.世界は実在していない
4.誰も量子力学を理解していない

最後のセリフは、過去シリーズでも紹介したリチャード・ファインマンによる言葉です。あちらこちらで見かけるので相当こすられています。

上記シリーズ1回目に登場したファインマンの指導教官、ジョン・ホイーラーはファインマン以外にも多くの天才を生み出しました。

その中で若干異色ですが、今回あげた誤解に深く関わる「ヒュー・エヴェレット」という物理学者がいます。

量子力学の解釈で頭を悩ませるのが、
「観測」することでその確率を表すシュレディンガー方程式(別名:波動関数)が収縮(1つに定められる)する、
という表現です。

誤解1はそれを揶揄したものですが、収縮はあくまで素粒子レベルで確認できる干渉があるミクロなシーン限定での話です。

でも、ミクロだからそんな非常識が許されるわけではないのも分かります。

エヴェレットもその一人で、上記の表現に沿って書くと、

「シュレディンガー方程式は収縮せずに、多世界に分岐する」

と考えて、1956年に博士論文を書き上げました。

ただ、この時代は(量子論の解釈に死ぬまで抗った)アインシュタインも丁度世を去り、収縮是非についてはモノ申せない空気に支配されていました。
従って、指導教官ホイーラーも「多世界の実在性」を論文から外して、論点を「量子宇宙」に絞らせることにしました。

「量子宇宙」と書くとより混乱を招きそうですが、それまで一般相対性理論で記述した宇宙の構造に、量子論を組み込もうとしたと思ってください。

ホイーラーはまさにそれを専門にしていた一人で、ざっくりいうとシュレディンガー方程式を宇宙に拡張しようとしました。

実際に、ホイーラー・ドウィット方程式と呼ばれるものも考案しましたが、エヴェレットはその「観測者」はいわゆる神以外ありえないのでは?
と疑問を呈します。(量子論の観測者は我々人間です)

つまり、そもそもマクロもミクロでも「収縮」という現象は起こっておらず、我々が認識できない多世界が実存しているという主張につながります。
(繰り返しですが博士論文ではそこまでは控えました。ホイーラーの親心もあったのでしょう)

確かに何をしてミクロとするのかは厳密な定義はなく、収縮という応急処置でごまかしているようにも見えます。冒頭記事でも、素粒子よりはるかに大きな物質(フラーレン)でも量子(重ね合わせ)現象が起こっていることも20世紀末に実験で証明されています。

多世界解釈で量子力学を整理すると、
ミクロもマクロもシュレディンガー方程式が適用され、それは(存在確率ではなく)共存する度合いなのだ
と主張します。

これは「収縮」というもやもやを取っ払ってくれますが、同時に我々が共存を認識できない世界って何?という新しいもやもやが生まれてきます。

ただ、最新の宇宙論ではマルチバース(多元)宇宙論という研究も真剣に行われています。

研究者のなかには、これを多世界解釈と同じという指摘もあります。1つだけアクセス可能な記事を引用しておきます。

こう書くと、なんとなく素人目には論理は通っているように感じます。

科学的に正しいかどうかはともかく知的娯楽としては十分に楽しめるので、ぜひ関心を持った方は深堀してみてください☺

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