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宇宙はファインチューニングされているのか?その2

前回の続きです。

前回は、
重力と電磁気力の絶妙なバランスで天体が安定して存在しているが、宇宙全体で起こっている加速膨張の原因については謎として残っている、
という話です。

残りの力は「強い力」「弱い力」と呼ばれているもので、これも宇宙の成り立ちに影響します。

ちなみに、ゆるい名称に聞こえますが、これは電磁気力からみた強弱です。簡単にそれぞれの定義を書き下します。

強い力:原子核を構成する核子同士をつなぎとめる力
弱い力:中性子を陽子に崩壊させる力(有名な例:ベータ崩壊

元々ビッグバン直後の宇宙では、水素→ヘリウムと段階的に大きな原子核を持つ元素が誕生してきました。
実際今の宇宙の大半はまだ水素・ヘリウムが大半です。(99%相当)

もし、強い力が今より強いと、水素原子(陽子が1つ)が2つ集まったヘリウムの割合が増える、つまり水素が減ります。
逆に弱いと炭素・ケイ素など天体に必要な原子の生成確率が低くなります。

もし、弱い力が今より強いまたは弱いと、中性子と陽子のバランスが崩れ(大半がほぼ同数)、さらには前回触れた電磁気力とのバランスも崩れてしまい、安定的な原子の数が少なくなります。

つまり、前回からの総括ですが、今の宇宙が安定的に存在しえるには、4つの力が絶妙にチューニングされていると思わざるを得ないわけです。

基本的に自然科学は自然の謎を解明する営みですが、では「この絶妙に仕掛けられた謎」はどこまで解明されているのでしょうか?

現時点では、あるようなないような、というモヤモヤな状況です。

あるような、と書いたのは「人間原理」という考え方です。以前にも登場したワインバーグを偲ぶ投稿でも軽く触れました。

最後にちらっとその考えを書いてますが、結構解釈によっては誤解されがちな用語です。なので自然科学ではない、と揶揄されることもあります。

比較的無難な表現を選ぶと、我々(今の物理定数)の宇宙以外に無数の宇宙が存在(マルチバース)し、それぞれで異なる宇宙定数をもっている、という主張です。

いやいやそれはちょっと・・・、という方もいると思いますが(私もその1人)、ただ冷静に考えるとこちらのほうがより客観的かもしれません。

どういうことかというと、そもそもこの宇宙定数に対する疑問を持つこと自体が、「宇宙は人間にとって都合の良い存在である」、という思い込みがあるのかなと思います。

つまり、宇宙視点にたつと人間が存在する必然性はないわけで、むしろいろんな宇宙があってたまたまその1つで我々含む生命が生まれた、と設定したほうが自然です。

例えば、いろんなテナントが出店している広大なアパレルモールがあったとします。自分の身丈にあった洋服を探すためにいろんなショップで試着し、その1つでついにぴったりの服を見つけます。

まさに今は、ぴったりの服を見つけたことしか知りえない状態で、そうすると奇跡的な偶然、さらにはこの店は自分のために存在するに違いない!、と誤解してしまいます。

そうでなく、実は他にも試着できる店は膨大にあるため、決して奇跡でなくむしろ必然だよ、ということですね。

といいながらも他に宇宙があることを証明するのは難しいため、もはや自然科学で扱えるテーマではないのかもしれません。神学論争にならないよう、いったんこの話はここまでにしておきます。

ただ、今ふれた「生命」についても、今まで触れた素粒子と宇宙の奇跡的なファインチューニングの痕跡が見え隠れします。

次回は、現時点で唯一の知的生命体を育んだ「地球」から見たファインチューニングを覗いてみます。

<参考リソース>

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