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地方「らしさ」と「らしくなさ」がカギ

マンションメーカーで広報担当15年、PR会社経営15年のPRプランナーが、地方の中小企業に特化した広報PRのヒントを発信しています。

1.地方発・全国ニュースになるには

 地方の中小企業が、在京のテレビ局や大手雑誌社から直接足を運んで取材してもらいたいと思っても、距離的なハンディもあってなかなか難しいのが現実ですね。ただ、コロナでリモートワークが当たり前となった今は、地方企業のPR上のハンデは無くなりつつあります。

 そうはいっても、地方の企業の全国メディアへの登場は、依然として敷居が高いのは確かです。やはり、地方企業は最初から直接東京のメディアを目指すのではなく、まずは地元でのパブリシティに最大限注力するのがセオリー。NHKや大手新聞社の地方支局、ローカルテレビ局、共同・時事通信社などは、全国ネットに乗せられる価値のあるネタはないかと、日々探しているのですから。

 ただ、並みのネタでは県内版、地方版に載っておしまいで、なかなか全国版や全国ネットでは取り上げてもらえません。しかしこの高いハードルを越えない限りは「地方発・全国ブランド企業」にはなれないのです。

 では、メディアから高い関心を呼び、全国に波及させていくには、どうしたらよいでしょう。それには、メディアの期待に応える「田舎らしさ」か「イメージを覆す先進性」をアピールするというふたつの道があります。

2.地域の特色や伝統か、地域にとらわれない未来型か

 前者は、たとえば、地方の農産物や海産物、伝統産業などの特産品を扱っている企業で、昔ながらの製法やしきたりを踏襲し、社屋は築100年の木造建築、社長はスーツでなく法被を着ている。わが町の伝統を誇りにし、都会に媚びないことをポリシーにしている、といったイメージです。

 こうした「絵になる田舎企業」は、何かにつけて地元のメディア(特にテレビ局)が取材に訪れ、たまに全国ネットでも報道され、社長は地域の有名人になっています。

 後者のイメージは、地方にあって都会以上に先進的な工場や研究設備を備え、ネットを駆使してグローバルなビジネスをしているような企業です。社長はベンチャー精神が旺盛で、経営理念は明確。社屋やオフィス内はあか抜けていて、社内の様子だけ見るととても地方とは思えない。

 田舎としては珍しい未来型企業として取材され、この会社で働きたい若手が全国から集まってくる、そんな企業です。

 また、後者の社員たちが、出勤前やオフの日にはアウトドアや農作業を楽しんでいるという「田舎だからこそできる豊かな暮し」の一面を見せれば、さらにニュース価値は上がります。

3.地方らしさと先進性を兼ね備えた「葉っぱビジネス」

 ここで、「地方ならではの絵面」と「地方らしくない先進性」を兼ね備えた、ニュースになる事業の例をあげてみましょう。

 徳島県の山間にある村で、おばあちゃんたちが家の庭先や周辺の山で取った葉っぱを東京や大阪の料理店に「つまもの」として販売するという「葉っぱビジネス」をご存知の方も多いと思います。元農協職員の横石知二さんが仕掛け人で、今はJA東とくしまが事業主体となっている、上勝町の「いろどり」です。

 70代、80代の高齢者が農家の庭先や周囲の山で季節ごとの葉っぱを採る様子は「田舎らしい」光景であり、写真でも動画でも絵になります。
 その一方で、高齢者がパソコンやタブレット端末を使いこなして受注している様子は、一般の人たちが描く「田舎の高齢者像」からかけ離れた先進的なイメージもあります。

 こうして「いろどり」は事業開始から30年間あまり、「田舎のおばあちゃんが、ただの葉っぱを大金に変えている」として着実にメディアに露出し続け、数年前には映画化もされ、日本はもちろん世界中から注目を集めています。今では全国のつまもの市場の6割のシェアを占め、2億円以上を売り上げるに至っています。

 そして「いろどり」の成功をきっかけに、この町でビジネスを志す若者が各地から集まってきており、移住・起業する人たちが後を絶ちません。カフェやレストランを開き人を招き入れようとする人、ゆずやお茶などの地元産品を海外に向けて輸出している人。人口2000人に満たない小さな町は今、全国規模のニュースにあふれています。

4.目に見える姿は極端な方がいい

 「地方らしさ」を極めるか、「地方にしてはすごい」と驚かれるか?地方の中小企業の大多数は、このどちらでもありません。先進的な企業になろうとしても、中途半端な田舎臭さが残るものなのです。
 目に見える姿が極端であればあるほどメディアは取り上げやすく、パブリシティでは成功します。

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