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短編 祇園祭

「見つけた。」

手を掴まれ、彼女は私を見つけてくれました。

初めての祇園祭の夜。道を歩いていてどこを見ても人人人。

コロナ前、多分外国人も、日本人も一番の密度で京都にいたと思います。

「蟷螂鉾、長刀鉾、大船鉾、鉾が休んでる時にね。狭い道と道の間でおじさん達が座って休憩してるの見れるよ。」

彼女は生まれ育ったこの場所で何度も見た風景なのだろう。

いつもよりも饒舌に教えてくれました。ただ仕事疲れと暑さですぐにダウンしたのは、いつもの俺たちだなと私は思います。

そしてグルーッと鉾を見渡して、巡行は一緒に観に行こうねって約束をしました。

地下鉄でバイバイして、その数日後巡行を見に行きました。

「大船鉾、再興して初めて見るから楽しみ。」

人が多くて、体力が少ない自分達にはかなりきつい人の数でした。

でもその時に見た巡行は今でも目に焼き付いてます。そして帰りに京都の事を色々話してくれる彼女が堪らなく愛しく思いました。

「時代祭は、、、、葵祭が、、、で今回の祇園祭、、、」

自分は広く浅く知識を持って、彼女は狭けれど深い知識を持っていて、お互いが知らない部分を話すとお互いが目をキラキラさせて話を聞いていました。

手を繋ぎながら、この日々が来年も続いて、また鉾を見に行きたいなって、夕日に照らされた京都タワーを見つめていました。


一年後、願いも叶わず、コロナで祇園祭はなくなり。

そして3年の月日が経って今年、巡行があります。

仕事で見にいけないですが、蟷螂も長刀も、大船も、もう一度逢いたいと思うので14日、あの夜をにまた逢いに行きます。

鉾は何年も何年も変わらない。

私の芯も変わらないですね。

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