見出し画像

「気にしない」じゃなくて、「味方がいることを気にする」こと。

いと…ミュージカルスタジオの講師。
美和…ミュージカルスタジオに通う、中3の女の子。


寒さが目立つ1月の夕方。
レッスン後のミュージカルスタジオ。
スタジオの掃除をしている、いと。
そこに突然、温かい恰好をした美和が訪れる。

美和「いとさん~」
いと「あれ、美和ちゃん、どしたん?」
美和「いや、ちょっと、」
いと「あ、そうだ、忘れ物でしょ!」
美和「はい~、すみません。」
いと「中入り。」
美和「すみません~」

いと「あったー?」
美和「ありました!ありがとうございます~。」
いと「いえいえ。最近どう?」
美和「いや~」
いと「いや~?」
美和「ん~」
いと「レッスンは楽しい?」
美和「いやー、それは楽しいです。皆相変わらず仲良くて。」
いと「それは良いことだ。元気だもんねみんな。」
美和「元気だけはあります!最近いとさんのレッスン無くてめっちゃ寂しいんですよ~」
いと「えー、何それ嬉しい。」
美和「今日会えてうれしいっす」
いと「私もうれしいよ~」
美和「めちゃ話したかったっす。」
いと「私も話したかったよ~」
美和「え、何話したかったんすか、聞きたいっす」
いと「えー、そうだなぁ。あ、最近ピアノ弾けるようになった。」
美和「え?いとさん前からピアノ弾けてたじゃん。」
いと「弾けてないよ、音符が読めてただけで、そのあれだ、両手でメロディーを弾けるようになった。」
美和「え、すごいっす、すごいっす。それはすごい。」
いと「でしょ。アラベスクとか弾いてる。」
美和「それはガチ。」
いと「せやろ。」
美和「ウチのレッスン持ってない間にそんな進化があったとは。」
いと「レベルアップしたよ~。美和ちゃんは?何話したかったの。」
美和「いや~、。」

美和「最近学校いけてないんすよ。」
いと「あ、そうなんだ。」
美和「はい~、ちょっといろいろあって。」
いと「まぁ、そういうときもあるよ。」
美和「親激おこっス。」
いと「あー。」
美和「ちゃんと行きなさいって。」
いと「行ってほしいのか。」
美和「でもがんばったんすよ、12月も、数回は頑張って行って。」
いと「えらいじゃん!」
美和「えらいですよね私!」
いと「うん、えらいえらい!」
美和「でもまぁ、しんどいというか。…周りの目とか、言葉とか。」
いと「しんどいよな。」
美和「っすねー。」
いと「スタジオの子には?相談した?」
美和「香緒瑠とか、晴っちとか、ほんとうに仲いい人には話したんですけど。」
いと「うんうん。」
美和「他はなんかまだ。」
いと「それでいいと思うよ。」
美和「でもきっとバレてるんすよ。スタジオにいる同じ学校の子とかからも、なんか、そういう目で見られている感じがして。噂されているような、ハブかれてはないけど、なんか、目が。」
いと「目線って、怖いよね。」
美和「そうなんす。いろいろ考えちゃうんすよ。」
いと「うんうん。」

いと「…チープかもしれないけど。味方がいるってことを忘れないでね。」
美和「…。」
いと「美和ちゃん今、周りが怖いって言ってくれたから、私もと思って。私は、味方。美和ちゃんの味方。相談したって言ってた、香緒瑠も、晴子ちゃんも、もちろんこのスタジオのスタッフはみんな、何があっても味方、友達だから。」
美和「いとさん、ウチの友達なんすか?」
いと「あ、やだったね。」
美和「いやいやいやいやいや、なんか不思議で。先生と生徒なのに。」
いと「そんなの建前だけじゃん。私はレッスン以外の時は、みんな友だちだと思ってるよ。」
美和「変なの(笑)」
いと「変で結構~」
美和「友達なら一緒に学校来てくださいよ~」
いと「それは厳しいものがある。」
美和「ケチ~」
いと「若返らせてくれるならいいよ。」
美和「それは無理~」
いと「学校なんてね、行かなくていいんだよ。」
美和「いいんすか?」
いと「いいよいいよ、行きたくなったらいけばいい。それまでは好きなことやりたいことを極めればいい。だからレッスンにちゃんと来てる美和ちゃんは、それでいい。」
美和「…なんか、ありがとうございます。」
いと「うん。まぁ、「気にしないで」なんて無理なことは言わないから、味方いることは忘れないで。また話そうよ、いつでも。」
美和「いいんですか?」
いと「もちろん。ダチだもん。」
美和「ウケる。ありがとうございます。」
いと「うん。さ、気をつけて帰るんだよ。」
美和「はい!あ、今度ダンス見てください。振り考えたんで。」
いと「おっけ、楽しみにしてる。」
美和「はい!じゃあさようなら。」
いと「うん、気を付けてね。」




この記事が参加している募集

私の作品紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?