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呪われた美女

その夜あたしは学校に忍びこんだ。

生まれて初めて面と向かって「ブス」と言われたあの日以来、あたしは自分の顔にコンプレックスを持っている。

こんな顔じゃ幸せになれない。

この夏休みに手を打ってかわいくならなきゃ。


ドアを開ける。

どこ?

棚に並ぶビーカーや試験管。骸骨の模型。

見慣れた光景が違って見える。


足を忍ばせ、息を殺しながら、視線を必死に動かして探す。


ふと、白い布が掛けられた楕円形のものが目に留まった。

恐る恐る布をはずすと、

見つけた。


『夜中に理科室にある紫の鏡に顔を写すと理想の顔になれる。だがもし誰かに見つかれば不幸になる』

そんな噂があった。

まるっきり信じたわけじゃないけど、ものは試し。

それだけで理想の顔になれたら親に隠れて整形する必要もない。


そっと覗き込み、「紫の鏡さん、あたしを世界一の美女にして」


そう呟いたが、何も起こらない。

鏡の中のあたしの顔は、あたしの顔のまま。

なんでよ。

嘘だったの?

鏡に手を触れたら、


ガシャーン。


やばい、どうしよう。

床には粉々の紫。

「誰かいるのか?」

廊下の方から男の声。心臓が止まった。

逃げなきゃ。

咄嗟に窓の鍵に手をかけたその時。


「おい、何やってんだ」

……終わった。けたたましい音が響く。






ハッとして目を開けた。

「ユカ!学校遅れるわよ」


あたしの夏休みは、まだ始まってもいない。


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