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詩 『糸/音』

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音にすると 少し離れる。 たけど繋がっている。
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#自由詩

ある晴れた日に
てのひらで砂を掻いて
さらさら
さらさらと
くるぶしまでを埋めました

すこし動けば
ゆびの間をくすぐって
くすぐって
砂は下へ落ちる

そのつぎの日も次の日も
砂を掻いて
さらさら
わしわしと
足首までを埋めました

しっとりとぬるく、すこし黒い

やがて雨が降る
潮が満ちる
波がその指を広げ
わたしを噛みにくる

だれか
私の足にもっと砂を
もっと深く
一歩も動けないように

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なぞらえる

なぞらえる

              こい瀬 伊音

ひとりでいたとき
わたしは完全体だった
両輪を揃え前進していける
うつくしさがあった

きみといたいとおもってしまったとき
わたしは自分を手放した
片割れをただ
きみに差し出して

きみはわたしを抱き寄せるとき倍にふくらむ
わたしは半分になる
不平等や不公平をいいつのる
ほんとうのわたしは眠ってしまった

いまはただ
それが落ち着く形だと言うのだから可笑

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もうなかぬ

もうなかぬ

             こい瀬 伊音

はばたけといったあなたが
もうとばなくていいという
とぶのはおしまいのじかんだと

ならばりょうのつばさを
あなたがてずからおとせばいい

かごのなかでさえとべぬ
とりへとつくりかえたらいい

声をなくした人魚姫のように
プリンセスはまた翼を折られる
ただよろこびをうたいたい
ねがいは
象牙の船に
おきざり

おとなのナイトブラ

おとなのナイトブラ

あのね
こっそりというけど、
膨らみかけてた夢がしぼんで
流れちゃうんだよね

着けてみよう
なけなしのきもちかきあつめて
そして眠って
もう一回
描こう

胸おどる
胸はずむ
胸ふくらむ


………

楽しくてただ泳いできたけど
苦しくもなってきて

夢中で息継ぎして
進む

ほしい筋肉をつけて
浮力を残して
あやふやな水をかいている

ゴールかな
タイムかな
それともおおきなタオルかな

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こぼれる

こぼれる

船底に穴が開いている
押さえても押さえても浸水してくる
まだ船には余裕があるという。
穴だらけの船が

わたしたちは船底をおさえ
手のひらで水をすくい
何度も何度も必死に往復し
水を海へかえしている

こころが折れないと
どうして思えるのだろう?
明るい夜が明けない

……

2020.07.26

わたしたちは人間のからだを持ち
人間のこころを持っています

AI搭載のヒトガタロボットであること

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あたらしいからだ

ぬけがらだ
いのちがない
だって重みが感じられないもの

羽化するときには
何を思う?
みどりがかった透明の背中

わたしの羽はもう色つき

2020.05.26

………

スマホケースを新しくしようと
中身を取ったら
くったりとして虚ろな姿。
(これまでありがとうね)

ところで、
スマホじたいを
からだじゃなくて魂、
のように感じちゃうのは
なんでなのかなあ?

触れなば落ちむ

         こい瀬 伊音

その肩紐はずしてみようか
もう片方も

そう言われるのを待っている被写体

レンズの奥には
どの目があるの
だれの
何個の

まだ
なにもないのに

2020.01.22

だれかにみつけてほしい
いっそほどかれたい

そんな風におもうことも自然だったと受け入れながら

自分で「今だ!」と決めていける
こわさ、自由さ。

ぜんぶてのひらにあるんだなぁ。
ほんとうの

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プログラム、プログラミング

プログラム、プログラミング

ふりかえりふりかえり駅に向かって
ふりかえりふりかえり電車に乗った

すぐに帰ってこれるよ
それは嘘だと知っている

行き先のわからない世界へ向かうんです
未来といいます
ここじゃないところへいくんです
春になったから

2020.01.13

むかし見ていた「いきもの地球紀行」で。
まだ満足に狩りもできない中ぐらいのからだのまま
季節にせかされて縄張りを去る動物たち。
ずっと一緒にいればいいのに

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その肩にのせて

その肩にのせて

100回噛んでも怒らないナウシカがほしくて
プチプチをひねる

「だいじょうぶ」 
「こわくない」

2020.01.12

臆病風に吹かれて
ほんとは何度だって試したくなる。

だから、
あきれた顔を思い浮かべて
じゅもんをとなえます。

だいじょうぶ、きっとだいじょうぶ。

糸電話をしっていますか?

糸電話をしっていますか?

ぴんとはった糸を 声がつたっていく
ぴんとはった意図が 音になっていく

細くて頼りなくて震えている
つたえるために

この糸のむこうに息をひそめて
耳をそばだててくれるひと
片割れをもってくれるひと

糸が張っているのはいま
いま

もしもし
聞こえますか

2020.01.11
細くて尖っている想い、というのは頼りなくて。
大きくてあたたかいところへ誘いたいです。
いま、外へ出るにあたって

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