見出し画像

欲望は果てしない。調子に乗ったら戻れない。次から次へと欲しくなる。『整形水』【映画レビュー】

評価:★★★☆☆(3/5)

映画『整形水』

2021年11月02日(火)
シネマート新宿にて鑑賞してきましたので
まとめていきます。

この記事にはネタバレが含まれます。
本編をご覧になっていない方はご了承ください。


■1. 映画の詳細情報

●タイトル:『整形水』
●公開:日本公開 2021年9月23日
    韓国公開 2020年9月9日
●監督:チョ・ギョンフン
●脚本:イ・ハンビン
●出演(声):
 ・イェジ/ソレの声
   韓国語版 ムン・ナムスク
   日本語吹替版 沢城みゆき

 ・ジフンの声
   韓国語版 チャン・ミンヒョク
   日本語吹替版 諏訪部順一

 ・ミリの声
   韓国語版 キム・ボヨン
   日本語吹替版 上坂すみれ

 ・施術者の声
   韓国語版 チョ・ヒョンジョン
   日本語吹替版 たかはし智秋

  他


●公式サイト:https://seikeisui.jp/


■2. あらすじ


見た目にコンプレックスを抱える女性
イェジ。


彼女は普段メイクの仕事をしている。


担当の女優ミリは、
見た目はキレイで美しい一方で
性格は最悪。


イェジに対して
『このブス!顔を隠しなさいよ!』
などと嫌な言葉を投げる。


そうした日々に嫌気が差していた。


そんな中、
ちょっとしたキッカケで
『整形水』
という商品の存在を知る。


その整形水を使用すれば
どんな女性も
理想の外見を手に入れることがデキるという。


半信半疑で商品を手に取るイェジ。


その結果、
イェジは誰もが振り返るほどの
美貌を手に入れる。


町中を歩くだけでも
男性に声を掛けられるようになったイェジ。


『キレイに成るってこんな感覚なんだ!』


美しさへの執着を強めた彼女は
段々と歯止めが効かなくなっていく。


そして彼女は
ある一線を超えてしまう…。


■3. 勝手解説


美容整形に対するハードルが低い韓国。

娘や息子の誕生日プレゼントとして
整形費用を負担してあげる
という親も少なくないそうです。


そうした文化を持つという韓国という国。


外見至上主義とも取れるような
見た目への追求心を
アニメーションホラーとして描いているのが本作。


整形水という
『一定時間身体を浸すことで
 身体を粘土のように
 自由自在に変形させることができる商品』

が登場します。


現実には存在しない商品ですが、
もしもこんな商品が存在したら
大金を叩いてでも欲しい!と思う人は
少なくないのではないでしょうか?


『外見が9割』
と言われるほど、
見た目というのは
その人を印象づける大きな要素です。


見た目がキレイで損をすることなんて
何一つないでしょう。


そしてその『美』というのは、
生まれ持った先天的なものに影響されてしまう
というのが現実です。


生まれながらに外見が優れている人というのは
現実世界に存在します。


外見というものは決して平等に与えられるものではありません。


そうした厳しい現実を打破できる技術が
『整形』という医療技術です。


見た目を自分の望むものに変えられる
というのは、素晴らしいことです。


一方で、美を追求するあまり、
整形を繰り返す人も少なくありません。


そうした依存的効果を持つ整形という技術。

人々の心を呪縛的に捉える魔法のようにも
捉えることができます。


そうした
●整形
●外見へのコンプレックス
●行き過ぎた追求心
というものをキーワードにして

『人間の欲望が生む恐怖』

を描いている作品です。


■4. 良かったところ

■ 良かったところ(1) 『共感と教訓』が得られる

ホラー映画と一口に言っても
様々なジャンルがあります。


モンスターや幽霊が襲ってくるような
パニックムービーだけではありません。


CUBE(1997年)のように
『追い詰められた人間の狂気』
が恐怖の対象である映画もあります。


日本でリメイクされたCUBEについて
意見をまとめた記事もありますので
よければお読みください。


本作は、
美を追求するあまり、
周りを巻き込みまくって
落ちていく主人公の女性を描いています。


整形水を使って美しさを手に入れるまでは
周りから見た目のことを悪く言われ続けていた。


それが一変して、
周りの男性が自分に釘付けになった。


その優越感を覚えてしまった彼女は
欲望を抑えることができず暴走します。


両親のお金を使うことも
人を殺すことも


なにもかも
『自分が幸せになるんだから仕方ない』
という勝手すぎる言い訳を作り出して
ドンドン後に引けない状態になっていきます。


そんな状態になろうとも
決して暴走を止めることのない彼女を見ていると
『人間の欲望って本当に怖いな〜…』
と改めて考えさせられました。



私自身、
彼女のように美容整形にハマった経験はありませんが、
ちょっとしたことで天狗になったり、
調子に乗ってしまって失敗したり、
なんていう経験は数え切れないほどあります。


そうした部分に共感を覚えると同時に
自分の行動を省みることの大切さを
教訓として教わったように思えます。


■ 良かったところ(2)狂気的『BADEND』

物語のラストは…


彼氏であるジフンが実はもともと女性で
整形水の力で男性になった。

そして、
自分が気に入った女性の身体の部位を
コレクションとして集めるため、
殺人を繰り返している。

イェジも彼のターゲットの一人であり、
イェジの瞳を手に入れるため、彼女に近づいた。


最後、
ジフンはイェジの瞳を切り取り、
自らの足に移植した。


という
狂気的ラストで物語が終わります。


なんとも救いのないBADEND!笑


ホラー映画を見に来ているわけですから、
観客はお金を払ってまで
恐怖体験や胸糞体験をしたいわけです。


そうした観客の心をシッカリと理解している
と思えるくらい胸糞悪い最後でした。笑


■ 良かったところ(3)日本語吹替版の『声優陣の演技は最高』


日本語吹替版で主人公のイェジを演じるのは
沢城みゆきさん。


今、売れに売れている声優さんです。


彼女の演技は素晴らしいの一言。


整形水を使う前のイェジは
太っています。

また、
ネットで自分の嫌いな相手のことを調べているときは
魔女のような如何にも悪いことをしている
という声になります。


一方で、
整形水によって美貌を手に入れた後のイェジは
声を聴いただけでも美人をわかるような
そんな女性らしくキレイで透き通った声になります。


こうした、
外見が変化していく女性の
心理的変化を声だけで充分に表現している彼女の演技は
もう最高としか表現できません。


加えて、
彼氏となるジフンを演じるのは
諏訪部順一さん。


声優界で最もエロい声を持っている
と言っても過言ではないくらい
セクシーな声です。


そして物語の最後、
ジフンは実はもともと女性だった
ということが判明するわけですが、


諏訪部さんの持つ
セクシーさが

男性の声なのにも関わらず、
女性的な妖艶さも表現しています。


やはり良い声優さんが声を担当するというだけで
作品の魅力はこんなにも上がるんですね!


ご視聴の際は、
ぜひとも日本語吹替版での視聴をオススメします!


■ 良かったところ(4) ちゃんと『ゴア描写』がある

整形水によって変形可能になった身体を
変形させたり、
引きちぎったりする描写は
アニメーションだからこそギリギリ観ることがデキる

といったレベルです。


もしもコレが実写の映画作品だった場合、
ムカデ人間2のように
最後まで視聴するのが難しい作品になっていたでしょう。笑


とは言いつつ、
そうしたゴア描写を期待してホラー映画を見に行っているわけですが。笑


お金を払ってまで
わざわざグロテスクな描写を見て気持ち悪くなるという
変態的欲求をちゃんと満たしてくれます。


この変態的感覚は、
ホラー映画好きなら共感してもらえる
と信じています。


■5. 悪かったところ

■ 悪かったところ アニメーションのクオリティが低い


本作は、
3Dアニメと2Dアニメが混合したアニメ映画です。


しかし、
そのアニメーションのクオリティは
低いです。


まず3Dアニメは、
PS2のゲームのムービーシーンを少しキレイにしたような映像。


続いて2Dアニメは、
20年ほど前のアニメ作品のような
挙動の荒っぽさがあります。


そして、
その3Dアニメと2Dアニメが
ゴチャマゼになった映像にも違和感が耐えません。


アニメーション映像自体のクオリティは
かなり低いです。


●まとめ 現実的じゃないけど、『現実にあったら欲しい』と思う


整形水という商品は、
もちろん現実には存在しません。


しかし、
もしもコレが現実に存在したのなら、
欲しいと思ってしまう気持ちもわかります。


そうした、
普段は言葉にしていないけれど、
本音ではそう思っている
という人間の欲求を恐怖の対象として描いた映画が本作なのでしょう。


本編90分という短い映画です。


スキマ時間にパッと見れるので
ホラー映画好きという方は
ぜひとも御覧ください!

ぜひぜひ日本語吹替版で!!!


という感想を書き終えて
筆を擱きます。


ではまた!:D

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?