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セッション定番曲その25:Sweet Home Chicago

ブルースのど定番曲として、今日も日本中のセッションイベントで演奏され、歌われている曲。「ご当地ソング」でもあります。シカゴってそんなにいい所なのか?
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここでは歌詞のポイントだけ説明します。


ポイント1:シカゴ・シャッフル

実は一番有名なバージョンは「ブルースブラザーズ」のバージョンかもしれませんね。その元ネタはマジック・サムの1957年発表のバージョンと言われています。ブルースブラザーズなんて元々はパロディっぽいものだったのに、映画の大成功でいつの間にか「ブルースといえばコレ」みたいな存在になってしまいました。


ジャッカジャッカと2拍4拍のスネアを強調した前進するようなリズム。それ以前の泥臭いカントリーブルースと比べるとノリが明快になって、ロックに近づいていますね。このリズム/ノリはブルースセッションで頻繁に登場するので、身体に染み込ませておきたいですね。このつんのめるような「前進力」が魅力です。少し後ろに引っ張られるような「スイング」と対照的ですね。

みんな大好きイノヤンのお手本動画があります。
シャッフル#3 シカゴシャッフル 井上inoyan尚彦 ドラム講座

実は3連符が水面下に潜んでいて、よく聴くと複雑なリズムです。身体に染み込ませましょう。

ポイント2:Sweet home Chicago

ご当地ソングと言われる訳ですが、何故「シカゴ」なのでしょうか?

1910-1930の約20年間で南部州(の田舎)にいた黒人達(アフリカン・アメリカン)は数十万人単位で北部のシカゴ、デトロイト、NYなどに大移動し始めて、この動きは1950年代頃まで続きました。原因は色々ありますが、やはり人種差別から逃れること、南部州で起きた大洪水の被害、綿花収穫の機械化、北部で工業化が進み働き口があったこと、などの状況が重なって、先に移住した者が徐々に親戚や知り合いを呼んで増えていったようです。この辺りの要素はどれもブルースの歌詞になっていたりします。慣れていない寒さの北部での暮らしも大変だったと思いますが。

という訳でシカゴは彼らにとっての「約束の地」のひとつであった訳です。

ポイント3:Back to the land of California, to my sweet home Chicago

「Back to that same old place, Sweet home Chicago」というのは分かり易いですが、元ネタのロバート・ジョンソンは「Back to the land of California」と歌っています。ん?西海岸のカリフォルニアとシカゴってどういう関係があるのでしょうか?

これについては諸説ありますが、「the land of California」=「金が稼げるところ」という意味で使われているんじゃないかというのが一番説得力のある説明ですね。つまり、やはりシカゴはまだ行ったことのない南部州の黒人達にとっても「約束の地」だと思われていた、と。

ブルースブラザーズの、単純化されたお祭り騒ぎっぽい歌詞もいいですが、ロバート・ジョンソンの歌詞は「憧れのシカゴ」というイメージが広がりますね。

ポイント4:ブルース進行

5-4-1 「キーに対して不安定な和音」→「ちょっと不安定な和音」→「キーの主音への着地感/安定感」という強力な推進力がブルース進行の魅力です。原点にして最終形。このコード進行と前述のシカゴ・シャッフルの前進力が合わさると、永遠に続くトランス状態の音楽になります。

ブルースのセッションではこの状態が延々と続いて、そのマンネリ感を楽しむ感じです。途中でスローブルースを挟むこともありますが、リズムが変わってもコード進行的には一緒。隙間の多い音空間でまた別のトランス状態
に。ブルースのセッションでステージに上がる人がみんな恍惚の表情になってしまうのは避けられないことですね。

慣れていない人だと「いつも同じことやってる」「自己満足じゃないの」と感じてしまうかもしれませんが、一度中に入ってしまって快感を覚えると沼にハマります。

ポイント5:Well, one and one is two, Six and two is eight, Come on baby don't ya make me late

ここはバンド全体がブレイク(ストップ)するところです。これも気持ちいい箇所なのでビシッと意思統一してキメたいですね。あんまり歌詞には意味は無さそうで、語呂がいいで決めたんじゃないかと。わざと計算を間違えて歌ったらどうなるんだろう?酔っ払った感じが出るかも・・・

ブレイクする場合、小節数が増える場合とそのまま12小節で進行する場合があるので、事前の確認が大事です。やっていると雰囲気で分かるけど。

発音としてはいかに歯切れよく歌えるか、ですね。
強調する箇所は「two」「eight」「(make me) late」あたり。ブレイク後の次のブレイクへの勢いを付ける箇所です。

ポイント6:たまにはダウンホームな感じで

ロバート・ジョンソンの元ネタは上記のシカゴ・シャッフルではなく、それ以前の素朴なアコースティックギターでの弾き語り。いわゆるカントリー・ブルースで、ダウンホーム・ブルースとも呼ばれます。

ノリノリの演奏に疲れたら、たまにはこの原点と言えるスタイルをバンドで再現してみるのもアリですね。土の匂いのする素朴なノリって意外と難しいですよね。


ポイント7:様々な演奏を聴いてみよう

ブルースを演奏する人でも「ブルースを(じっくりと)聴く」という機会は意外に少ないのでは?

Magic Sam

セッションでやっているイメージに一番近いかもしれません。

Freddie King

ちょっと後ろノリで歌うのがたまりませんね。

豪華なメンバーによる演奏

このゆったりとした大きなノリは参考にしたいですね。

Foghat

全盛期のFoghatの演奏、ハードロックですね。

■歌詞


Come on, Oh baby don't you wanna go
Come on, Oh baby don't you wanna go
Back to that same old place
Sweet home Chicago

Come on, Baby don't you wanna go
Hidehey, Baby don't you wanna go
Back to that same old place
Oh sweet home Chicago

Well, one and one is two
Six and two is eight
Come on baby don't ya make me late
Hidehey, Baby don't you wanna go
Back to that same old place
Sweet home Chicago

Come on, Baby don't you wanna go
Back to that same old place
Sweet home Chicago

Six and three is nine
Nine and nine is eighteen
Look there brother baby and see what I've seen
Hidehey, Baby don't you wanna go
Back to that same old place
Sweet home Chicago

Oh come on, Baby don't you wanna go
Come on, Baby don't you wanna go
Back to that same old place
Sweet home Chicago

==== Robert Johnsonのバージョン =============

Oh, baby, don't you want to go
Oh, baby, don't you want to go
Back to the land of California, to my sweet home Chicago

Oh, baby, don't you want to go
Oh, baby, don't you want to go
Back to the land of California, to my sweet home Chicago

Now one and one is two, two and two is four
I'm heavy loaded baby, I'm booked, I gotta go
Cryin', baby, honey, don't you want to go
Back to the land of California, to my sweet home Chicago

Now two and two is four, four and two is six
You goin' keep on monkeyin' 'round here friend-boy
You goin' get your business all in a trick
But I'm cryin', baby, honey, don't you want to go
Back to the land of California, to my sweet home Chicago

Now six and two is eight, eight and two is ten
Friend-boy, she trick you one time she sure gon' do it again
But I'm cryin', hey baby, don't you want to go
Back to the land of California, to my sweet home Chicago

I'm goin' to California, from there to Des Moines, Iowa
Somebody will tell me that you need my help someday, cryin'
Hey, hey, baby, don't you want to go
Back to the land of California, to my sweet home Chicago



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