セッション定番曲その126:The House Of Rising Sun
ロック/ブルース・セッションの定番曲。暗いメロディの曲ですが、どんな内容なのでしょう?
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:Bob Dylan
1961年録音、デビューアルバムに収録されました。
初期のBob Dylanは過去の様々なジャンルの曲に影響を受けていて、それらの発掘者でもありました。レコーディングに際しては下記のDave Van Ronkからこの曲を習ったようです。後述のThe Animalsのバージョンの原型がここにありますね。
Dave Van Ronk
この人も当然その前の世代の誰かの歌を聴いて覚えた訳ですが、ベースランニングを入れたり工夫して「モダン」な感じにアレンジして、ライブで歌っていたようです。Bob Dylanからは「この間教えてもらったアレ気に入ったからレコーディングしちゃった」と言われたみたいです。
Joan Baez、1960年録音
Bob Dylanと交流のあったJoan Baezも近い時期に録音しています。この歌声はやはりいいですね。
Woody Guthrie、1941年録音
このアレンジ(シャッフル)はなんか陽気ですね。早い時期からブルース畑だけでなくフォーク畑でも歌われていたのが分かります。
ポイント2:Rising Sun Blues
Tom Clarence Ashley & Gwen Foster、1933年録音
Leadbelly、1944年録音?
この辺の古いブルースは誰がオリジナルとかないですね。誰かが歌っているのを誰かが聴いて、オリジナルのアレンジを加えて歌って、それをまた誰かが聴いて、という繰り返し。この歌詞というかテーマがやはり魅力的だったのでしょうね。
ポイント3:The Animals
みんながイメージするのはこのバージョン、1964年録音。Bob Dylanの録音を聴いたのではなくて、英国のフォークシンガーがこの曲を歌っているのを聴いて知ったということになっていますが、どうかなぁ。ライブのクロージングナンバーとして演奏していたようです。
初期のロック曲らしくリズム隊はお行儀の良い演奏ですが、Eric Burdonの突き抜けたシャウトが既に暴力的です。Hilton Valentineのギターアルペジオが曲の骨格になっていますが、Bob Dylanのリズムアレンジを発展させた感じ。ソロを取るオルガンのAlan Priceがメンバーに相談せず単独クレジットで著作権登録(編曲者として)してしまったようで、大ヒット後に大揉めしました。他のメンバーはいまだに許していません。大金が絡んでいますからね。
ポイント4:The House Of Rising Sunとは?
「朝日のあたる家」とは19世紀に米国に実在した娼館の名前という説があります。堕落していく女性を描いた歌。徐々に男性にも歌われるうちに主人公が少年/男性に変わって、「朝日のあたる家」も少年院/監獄の名前に変わっていきます。やはり堕落していった人生を振り返って嘆く歌詞。別の説としては酒場/ギャンブル場、女性向け監獄、などでそれぞれ歌詞が違います。以下はThe Animals版をもとに書きます。
There is a house in New Orleans
They call the Rising Sun
And it's been the ruin of many a poor boy
And God, I know I'm one
南部のニューオリンズに「朝日のあたる家」があった
沢山の貧乏な少年の人生がそこで破滅していった
そうだよ、俺もそのひとりだよ
My mother was a tailor
She sewed my new blue jeans
My father was a gamblin' man
Down in New Orleans
母親は仕立て屋で、俺にジーンズを縫ってくれたけど、
親父はクソ野郎でギャンブル場に入り浸り
Now the only thing a gambler needs
Is a suitcase and a trunk
And the only time he's satisfied
Is when he's on a drunk
そういう奴に必要なのは胴元から逃げ回る為の荷物をまとめたカバンだけ
やつがちょっと幸せなのは酔い潰れている時だけ
と、かなり悲惨な家庭環境だったのが分かります。本人もグレてしまってケチな犯罪に走ってしまい、少年院や監獄を出たり入ったりの人生。
Oh, mothers, tell your children
Not to do what I have done
もしあんたに子供がいるなら、俺みたいにはなるなって教えてやってくれ
と偉そうに説教しますが、本人は惨めな生活のまま。なんとも救いが無い歌です。
ポイント5:様々なバリュエーションを聴いてみよう
Nina Simone、1967年ライブ録音
さすがの独自の解釈でアップテンポ(2ビート)で歌っています。
Frijid Pink、1970年録音
頭の悪さ全開のハードロック・アレンジ。悪い子はどんどん真似しよう。
Dolly Parton、1980年録音
1980年代丸出しの陽気なアレンジ、なぜ?
浅川マキ、1971年ライブ録音
藤圭子、1971年ライブ録音
忘れてはいけない昭和の歌姫。
高田渡、1999年発表のライブ録音
Idris Muhammad、1976年録音
ファンクアレンジ、嫌いじゃない。
◼️歌詞(The Animals版)
There is a house in New Orleans
They call the Rising Sun
And it's been the ruin of many a poor boy
And God, I know I'm one
My mother was a tailor
She sewed my new blue jeans
My father was a gamblin' man
Down in New Orleans
Now the only thing a gambler needs
Is a suitcase and a trunk
And the only time he's satisfied
Is when he's on a drunk
Oh, mothers, tell your children
Not to do what I have done
Spend your lives in sin and misery
In the House of the Rising Sun
Well, I got one foot on the platform
The other foot on the train
I'm goin' back to New Orleans
To wear that ball and chain
Well, there is a house in New Orleans
They call the Rising Sun
And it's been the ruin of many a poor boy
And God, I know I'm one
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