セッション定番曲その132:Dear Mr. Fantasy by Traffic
ロックセッションの定番曲。長時間のジャムに展開することも出来ます。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:Dear Mr. Fantasy
1967年発表のアルバムのリード曲。シングルヒットした訳ではないようですが、英米ではすごく知名度が高い曲で、今でも映画などで頻繁に使われています。
時代を反映したサイケデリックな歌詞とアレンジ、Steve Winwoodのソウルフルな歌、リードギターもおそらく彼が弾いていて意外とハード。5分半の中にポップな要素とロックな要素が詰め込まれていて、目眩く展開になっています。歌のテーマ部分はコード進行もシンプルでジャムセッション向きです。
ポイント2:Traffic
1967年から1974年まで存在した米国のロックバンド(その後、数回再結成)。メンバーの出入りが激しく、方向性もどんどん変わっていって、その自由な感じがある意味「理想のバンド」で大好きです。
The Spencer Davis GroupからSteve Winwoodが独立して、仲間を集めてTrafficを結成。「黒人のように」歌えて、オルガンもギターも上手いリーダーに、歌えるドラマーJim Capaldi、サックスとフルート奏者Chris Wood、歌えて作曲も出来るとして加わったDave Mason(初期はギターが下手だったらしい)の4人組で、4人が平等な立場で作品を作り上げていくバンドでした。
その後Dave Masonはバンドを出たり入ったりを繰り返して、他のメンバーも「仕方ないなぁ」という感じで見守っていました。その後1969年にはリーダーのSteve Winwood自身がBlind Faith参加の為に脱退、それが崩壊した後はGinger Bakerのバンドにも参加して、そこからリズム隊を引き連れてTrafficに戻ってきて、その後はマッスルショールズのスタジオミュージシャン達をメンバーに加えて「拡大Traffic」に。バンドの変遷というよりも、最初から自由度の高い集合体としてバンドを捉えていた感じです。
音楽性も、初期のポップでサイケデリックな(当時の流行りにのった)音楽から、フォーク色を強めたり、米国ロック色を強めたり、英国トラッドを取り入れたり、ジャズロック/フュージョンを志向したりと変化していきました。
そんなTrafficの出発点がこの曲。だから時代によってライブでのアレンジがどんどん変わっていきました。
1971年ライブ録音
リズム隊が強化され、パーカッションも加わってスケールアップ。Dave Masonが弾いていると思われるギターも味があります。
1972年ライブ録音
リズム隊がマッスルショールズチームに変わって、重心低く粘り強い演奏になっています。オルガンをサポートミュージシャンに任せてSteve Winwoodがギターを弾いています。
1994年ライブ録音
ベースは1974年頃にメンバーだったRosko Gee。ピアノとオルガンを加えた編成で音の厚みがすごいです。終盤の盛り上がりがハードロックです。
2004年ライブ録音
時代は飛んで、自身のソロ活動での演奏。現代的なタイトな演奏になっていますね。声が全然落ちていないのがすごいです。この派手なドラマーはWalfredo Reyes Jr. だと思われ、ラテン音楽のバックグラウンドもある人です。
ポイント3:様々なカバー
Stephen Stills, Graham Nash
あの懐かしいCSNコーラスが効果的なアレンジ。
Grateful Dead、1989年ライブ録音
Big Sugar、1995年録音
ヘビーロック・アレンジ。
ポイント4:Mister Fantasy
Dear Mister Fantasy, play us a tune
Something to make us all happy
Do anything, take us out of this gloom
Sing a song, play guitar, *make it snappy
Mr. Fantasyはたぶん魔法が使えるミュージシャン。ギターを弾いて歌って、みんなの落ち込んだ気分を吹っ飛ばしてくれる存在。
素晴らしいミュージシャンはみんな魔法使いなのかもしれません。
「*make it snappy」は「さっさとやってくれよ」という意味。
You are the one who can make us all laugh
But doing that you break out in tears
Please don't be sad if it was a straight mind you had
We wouldn't have known you all these years
あんたの音楽を聴いているとみんな笑顔になるよ
でもステージに立っているあんたは実は泣いているのかな
そんな風に感じていたとしても悲しみに負ける必要はない
僕らは魔法を忘れてしまっていたこともあったね
魔法使いの心のうちを覗いてしまった観客の様子、あるいは子供の頃は信じていた魔法を大人になって忘れてしまっていたことを思い出した自分、を描いた歌詞。「音楽は世界を変える」と本気で信じていた時代の曲。それを歌い続けているSteve Winwoodは素敵ですね。
◼️歌詞
Dear Mister Fantasy, play us a tune
Something to make us all happy
Do anything, take us out of this gloom
Sing a song, play guitar, make it snappy
You are the one who can make us all laugh
But doing that you break out in tears
Please don't be sad if it was a straight mind you had
We wouldn't have known you all these years
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