稚拙極まる迷作『ジャスティス・リーグ』
『Justice League』★☆・・。(4ツ星満点中、1ツ星半。)
「クリストファー・ノーラン製作総指揮」というクレジットの意味はもはやどこへやら。ザック・スナイダー印のDC・エクステンデッド・ユニバースは『マン・オブ・スティール』『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』『スーサイド・スクワッド』と軒並み酷評続きで、コアファンの義務感による興行収入でかろうじて保っている。本作もまた、公開初週で96億円(1ドル100円換算)を記録したものの、スタジオが期待した110億円の目標には遠く及ばず。「なんとかリクープをするが、マーベルほどのフランチャイズを築くには程遠い」現状が続く。大方の予測に反して唯一成功している『ワンダーウーマン』は、DCとワーナーを救うことができるのか。
[物語]
スーパーマン亡きあとの地球に、新たな敵が迫る。「マザーボックス」と呼ばれる三位一体のエネルギー集合体を求めて、地球外生命体が飛来。その前兆を察知したバットマンことブルース・ウェインは、対抗策としてヒーローたちのチームを組もうと画策する。候補者に当たりをつけていたブルースは、寂れた港町で暮らすアクアマン(ジェイソン・モモア)や、都心部に暮らす若者として身を隠していたフラッシュ(エズラ・ミラー)を勧誘。故郷を襲われ、事態を把握していたワンダーウーマン(ガル・ガドット)を合わせ、スーパーヒーロー集団「ジャスティス・リーグ」が結成される。
[評価]
ザック・スナイダーが撮影した映画に、ジョス・ウェドンが追加素材を投げ込み、後処理。とことんジェネリックな凡作、一丁上がり。
浅い。休日朝の特撮戦隊モノやアニメよりもよほど浅い。トーンとカラーコレクションはジョス・ウェドン・テイストへ一気に傾いたが、コスチュームや美術デザインはスナイダー・バージョンのまま。『バットマン vs スーパーマン』のような、どこまでも暗くジメジメした絵作りにも辟易だが、明るくなった結果、各ヒーローの胸板水増しなゴム製コスチュームで普段の会話を展開させられる滑稽さは一層増した。
スナイダーとウェドンの対比でいうと、本作のどのシーンがどちらの演出で成立しているかを想像するだけでも、ある種の捻れた楽しみがある。スローモーションの、形ばかりの無意味なカットは大方スナイダーだろう。キャラクターのユーモアを引き出そうと努めるフラッシュやアクアマンのシーンは、ウェドン。悶えるほどに長かった『マン・オブ・スティール』や『バットマン vs スーパーマン』と比較すると、カツカツと物語が進む編集スタイルは確実にウェドンとスタジオ側の意向だと想像できる。しかし、小手先の技では中身の薄さを如何ともしがたい。
そもそも、稚拙なストーリーテリングはここに極まれり、というほどに脈絡のない物語だ。ぶしつけに紹介される、ありきたりな脅威。馬鹿馬鹿しい謎解き。筋書きと全く関係のないアクション。理屈の通らなさばかり気にさせられるキメのカットとポーズ。そして、伏線や動機の微塵もないヒーロー集めのプロット。どれも、あいも変わらず予告編を切って無理やりつないだような、形だけのシーンばかりだ。敵の動機もデザインも、ひと昔前のゲーム・グラフィックかというほどに、新しさがない。マーベル作品の悪役たちが至高の存在に思えてくる。極め付けは、公然の秘密と化してわかりきった展開の、脇の甘すぎるメロドラマ的展開だ。これだけあからさまに薄い物語を紡いでしまうとは、観客も舐められたものだ。
なお、某登場キャラクターの表情にも、要注目だ。再撮影に際し、他作品との関係でとある身体的特徴を変えられず、本作は全編CGで修正した、と話題になっている。また、今作からハンス・ジマーに変わって音楽を担当したダニー・エルフマンは、ティム・バートン版の「バットマン」のテーマや、リチャード・ドナー版の「スーパーマン」のテーマを要所に忍び込ませているので要注目かもしれない。しかし懐かしさと同時に、違和感も覚えてしまう。全く異なるトーンのキャラクターたちじゃないか、と。ファンの思い出に媚びていると捉えられなくもない。
フラッシュのユーモアも小手先。褒めどころの少ない映画。
[クレジット]
監督:ザック・スナイダー
プロデュース:チャールズ・ローヴン、デボラ・スナイダー、ジョン・バーグ、ジェフ・ジョンズ
脚本:クリス・テリオ、ジョス・ウェドン
原作:クリス・テリオ、ザック・スナイダー(ストーリー)/ガードナー・フォックス(原案)
撮影:ファビアン・ワーグナー
編集:デヴィッド・ブレナー、リチャード・ピアソン、マーティン・ウォルシュ
音楽:ダニー・エルフマン
出演:ベン・アフレック、ヘンリー・カヴィル、エイミー・アダムス、ガル・ガドット、エズラ・ミラー、ジェイソン・モモア、レイ・フィッシャー、ジェレミー・アイアンズ、ダイアン・レイン、コニー・ニールセン、J・K・シモンズ
製作:DCフィルムズ、ラットパック・エンターテイメント、アトラス・エンターテイメント、クルーエル・アンド・アンユージュアル・フィルズ
配給(米):ワーナーブラザース・ピクチャーズ
配給(日):ワーナーブラザース
配給(他):N/A
尺:120分
ウェブサイト:『ジャスティス・リーグ』公式HP(US)
鑑賞日:2017年11月21日(火)20:00〜
劇場:Pacific Theaters Glendale 18
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