年間ベストコンサートか⁉︎ ノセダ/N響のショスタコーヴィチ
ショスタコーヴィチ/交響曲 第8番 ハ短調 作品65
指揮:ジャナンドレア・ノセダ
管弦楽:NHK交響楽団
ノセダを生で聴いてみたいと思ったのはこれを見てから。
こんなに完璧なジャジャジャジャーンはないね😅
私は一時期ゲルギエフの追っかけをしていたが、ノセダはマリインスキー歌劇場管弦楽団の首席客演指揮者も務めていた。
今回はC定期なのでこの曲だけ、60分のプログラムだったが、超濃密、大満足の公演だった。
明日も公演があるから騙されたと思って行った方がいい😅
ショスタコーヴィチは好きな作曲家だが、歴史的な背景には疎い。
最近聴いたのはノットの4番やマケラの「レニングラード」(7番)。5番ですら久しく生で聴いていない。
15曲も交響曲あるのに、日本での演奏頻度は必ずしも高くはない。
ノセダの8番は私の好きなショスタコーヴィチ像だった。
背筋の凍るような不気味さ。おどろおどろしさ。
かつては「ショスタコーヴィチの歓喜は強制された歓喜なのだ」と言われたものだが、最近は古い解釈になってしまったのか、テミルカーノフ/読響とマケラ/都響の「レニングラード」はまったく違っていた。
テミルカーノフはパワフルで、まるで「エロイカ」。
マケラはゲームをプレイしてるような音響の見本市。
さすがにノットは神経が痺れるような苛烈さがあったが(2ndVn奏者が失神して運ばれたことで話題になった)、ノセダもその路線だった。
口の悪い知人が「N響の凄いところはNHKホールの鳴らし方を知ってるところ」と言っていた。
つまりそれくらい響きにくいデッドなホールということだ。
実際、わりと即物的でふくよかさのない響きがショスタコーヴィチらしくてよかった。
そして、ffもppもここはNHKホール⁉︎と思うほどまったく不満を感じさせなかった。
ヴァントがオペラシティでブルックナーの9番をやったとき、ホールの壁に響きが入るのでは⁉︎と感じるほどのffだったが、ノセダもそれに近いものがあった。
打楽器、管楽器、弦楽器、みな不満なし。
第1楽章の途中でうとうとしてしまったほかは(こちらのコンディションの問題)集中して聴けたが、NHKホールでこれほど息をひそめるようなppが聴けるとは!
近くにいた人がppで晦渋な箇所にくるたびプログラムをめくっていたが、わからない→つまらない→「聴く」から「読む」に逃げる→「ながら」で聴く→わかった気になる、では一向にクラシックを好きになれないと思う。
つまらなく感じるときほど、音楽に耳を傾けるべき。
そこを乗り越えてこそ、深い感動があるのだ。
戦車のようなffの熾烈さ、衛兵から身を隠すようなppの細やかさ、ショスタコーヴィチに欠かせないダイナミクスの幅が尋常ではない。
オーケストラを自分の楽器のように完全にドライブするノセダ。
聴衆が息を呑みながら喰らいついてるのがわかる。
ラストはヴァイオリンがヴェールのように薄い響きを奏でる中、静かに曲が閉じるが、このときの音楽のデリケートさもなかなか聴けないレベルに達していた。
終わった後の余韻もたまらない。いつもは余韻の最中に指揮者より先に気持ちが切れてしまう私だが、最後までしっかり味わえるほど会場の聴衆の心は一つになっていた。
拍手の熱量が半端ではない。ソロカーテンコールになっても大勢の人が残って大きな拍手を贈っていた。
N響の2022-2023年プログラムは明日の公演とB定期で終わり。
私はブロムシュテットのニールセンやルイージのチャイコフスキーを生で聴いた以外は“FM定期会員”だが、今夜のノセダのショスタコーヴィチは年間ベストコンサート筆頭格ではないか?
2026年で東京交響楽団の音楽監督としての任期が切れるジョナサン・ノットの後任に、ジャナンドレア・ノセダを抜擢してほしいと思ったのは私だけだろうか。
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