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EP 06 真実への協奏曲(コンチェルト)08
「ずいぶんと派手にやられているな」
「……あなたは……? ボクは確かサロスさんと……」
ソフィが見回した景色。
それは、先ほどのサロスと戦っていた場所とは異なる景色。
周りは夜ではなく、明るい色調の鮮やかな……まるで夢の世界と形容出来そうなこの世とは思えないほど幻想的な場所だった。
ソフィの脳裏に嫌な予感が巡って青ざめる。
もしかしたらサロスと戦っている間に自分は死んでしまった
172 ルミニアのうた
視界に入ったその男の表情をウェルジアは知っていた。かつて自分もしたことがある顔。自らの不甲斐なさ、力の無さを呪うようなその表情。
後悔、苦悶、苦痛、絶望の入り混じった姿。
大切なものを助けられなかったあの日が脳裏をチラついてくる。剣から伝わる彼の人生が決して軽くはない。あの頃の自分と同じ感情だ。
「チッ」
九剣騎士に至った男の生き方になど興味はない、ないはずだった。それでも目の前の
EP 06 真実への協奏曲(コンチェルト)05
「そぉら、行くゾォ!!」
バネのように、地面を蹴り飛ばしアーフィが二人へと急接近する。
「サロスっ!!」
「あぁ!!」
二人は咄嗟に腕の一部を変化させ、襲い掛かってくるアーフィの背中にある触手が放った攻撃を防いだ。
「ほォ。一発で終わると思ってたガ、まだ楽しめそうだナ」
にやりとしてそのままアーフィが飛び上がると、空中で体を回転させて四方八方からの無数の触手攻撃を降り注ぐように二人
EP 06 真実への協奏曲(コンチェルト)04
「私たちとそっくりの人……?」
話を聞いていたヒナタがポツリと呟く。
「信じられないと思うけれど、僕とサロスは確かに君とヤチヨに似ている彼女らに出会ったんだ」
「まっ、性格とかは流石に違ったけどな」
「そう……なんだ。ちょっと会ってみたいかも……」
「それで……そのアーフィはどんな人だったんですか……?」
ソフィの発言にフィリアは目を閉ざした。
「……アーフィはその夜、いつもと同じ時間
170 英雄の左腕だった男
ウェルジアも二人から遅れてその足音に気付く。
(こんなに接近していたのに気配がない?)
明らかに学生とは異なるその風貌に警戒をせざるを得ない。この場所は人が到達する事が困難なはずのエリアにある洞窟のはずで誰かがいるなんてことはあり得ない。
「あらあら、こんなに簡単に倒されてしまったなんて予想外ねぇ」
倒れている巨体をそっと撫でるとまるで霧のようにホワイトグリベアの身体は消えていく。
EP 06 真実への協奏曲(コンチェルト)03
盗賊のような者達の襲撃を受け自分たちの身に起きた不思議な力の発露に対してまだ受け止め切れない二人はそれでも情報を得るために歩みを進める。
その道中では何も起きることはなかった。
目に入る景色はこれまでとは別物で自分たちが一体どこにいるのか現段階では検討も付かない。
しばらくの後、二人は小さな集落のような場所へとたどり着く。
ポツリと幾つかの建造物が立っているがその建築方法などは想像
169 対ホワイトグリベア
越冬中のグリベアは外気温が一定以上になると目を覚まして過ごすようになる。フェリオン領内の最北に位置するこの地域ではその活動開始の気温が他の地域より著しく低い。
そこまで気温の上昇を伴わなくても起きてしまう事がある。とはいえ起きた直後には長い眠りで瘦せ細っているはずだった。事実、先ほど撃退した二体のグリベアはさほど大きな個体ではない。
しかし、目の前に佇んでいる一体はといえば常軌を逸している
EP 06 真実への協奏曲(コンチェルト)02
「コニス……さんがいた場所と僕等がいた場所が同じかどうかはわからないけれど……とにかく、話を始めよう……僕等はその見知らぬ場所で気が付いてから、とにかく歩き始めたんだ……」
フィリアがゆっくりと話し始める。
舞台は、ヒナタの家から殺風景なその場所へと移り変わる。
サロスとフィリアはあてもなく、ただひたすらに道なき道を歩いていた。
「なぁ、フィリア。ここはどこなんだ?」
「僕が知るは
168 未知のグリベア
集団後方にいた生徒が何かに襲われて大きな悲鳴を上げると洞窟内へとその声は即座に響き渡る。
途端にパニックになる生徒達。後方へと光源を向けるリリアにフェリシアは咄嗟に叫んでいた!
「リリア! いいか、絶対に灯りを放すな!! お前が灯りを落としたら終わりだ」
「ええっ、あ、はい!!」
彼女の怒声に手が震えそうになるもリリアはギュッと唇を引き絞り、灯りを後方へと力強く振り向ける。
「なんだ?
EP 06 真実への協奏曲(コンチェルト)01
「ヒナタ! おっかわりぃー!!」
「はいはい」
空になった皿を元気よく掲げるサロスを見て、ヒナタが苦笑いを浮かべる。
紆余曲折はあったが、今彼らは長い時を経ての再会を堪能していた。
ヒナタの家に着くなり、コニスの「お腹が空きました」の一言からそれに続くようにサロスが「俺も~」と続き、そんなサロスをたしなめようとしたフィリアのお腹も遠慮がちにくーと鳴りはじめ、それを見たヒナタとヤチヨが笑い