記事一覧
165 テラフォール流の閃
東西の生徒がパーティを行っている大広間の建物の外ではシュレイドがパラパラと本をめくる音がする。
ウェルジアの持っていた擦り切れる程に読み込まれていた本に視線を注いでいた。
パタリとシュレイドが本を閉じ、読み終えると彼はその内容に心底驚いていた。
「お前、ほんとにこの本の内容だけでひたすら剣を振り続けてきたのか?」
「ああ」
彼は祖父グラノとは実戦の中でしか剣を教えてもらっていなかった為
EP 05 炎と氷の助奏(オブリガード)05
「ずいぶんと到着が遅かったですね。ゼロ」
「……」
コニスを掴み上げ拘束しているゼロと呼ばれた人物はじっとコニスを見つめていた。
その顔は、無表情のように見えて、どこか嬉しそうにも見える。
人物と形容はしたものの、そう称して良いものかどうか判断しがたいそのゼロの風貌に背筋を冷たい風が撫でていく。
「あ……な……た……は……?」
「生きていたのカSC-06……もっとモ、お前ハ俺のことヲ覚え
164 遠征初交流パーティ
交流模擬戦が終わった後、生徒達は宿舎に戻り普段はほとんど使われることがないという大広間にてパーティを開いていた。
東部の生徒の中に日頃から学食への出店者が多かったため、エナリアの計らいで西部の生徒を招待するような形で食事などを振舞い、ここまでの遠征活動を労う。
これまで東西遠征時にこのような親睦の交流が行われたという記録はない。
遠征の直前には必ず両学園の生徒達の心に禍根をこれまで生ん
EP 05 炎と氷の助奏(オブリガード)04
ゆっくりとこちらを見定めるように、その巨体は一歩、また一歩とコニスに近づいてくる。
コニスもこのような大型個体を見るのは初めてであったのだろう。自然と額に汗が滲んでいた。
そして、それは一瞬だった。
先ほどまでゆっくりと動いていたその巨体が六本の足を器用に動かしコニスに急接近する。
それはこれまでの緑色の存在達とは比べ物にならない速度であり、コニスの身体も硬直し、反応が遅れる。
そ
EP 05 炎と氷の助奏(オブリガード)03
「ソフィどうぞ」
「えっ!? あっ、ありがとう」
「?」
コニスがことんと控えめに目の前にハムとベーコン、そして目玉焼きの乗った皿を置く。
その様子を見て、ソフィが少し驚いたような声をあげた。
コニスはその反応を少し不思議に思いながらもそのままキッチンへと戻っていく。
ソフィはその皿へとゆっくりと視線を映しその中身を見つめる。
そんな視界の横から、手を伸ばしベーコンを一枚口の中へ入れ
162 異なるテラフォール流
ウェルジアとシュレイドの二人が中央で向かい合い視線を交わす。
ピリピリと睨みつけるウェルジアとは対照的にシュレイドはとても落ち着き払っている。
とはいえ決して余裕があるという訳でもなさそうで、ただ何かをずっと確認するかのように口元でぽそぽそと呟いている。
改めて眼前に立つとその研ぎ澄まされた存在感にウェルジアは身震いする。
ただそれも自らの内側から溢れ出る言い知れない高揚感がもたらす
EP 05 炎と氷の助奏(オブリガード)02
「もー!!! あっ!! それより、ソフィはどうなの?」
「えっ!?」
「好きの話。あたし、ヒナタの話しか聞いたことがないから他の人はどうなのかなって? すごく興味があるの!!」
「いや……それはーー」
「あたしも話したんだから、ソフィも話すべきでしょ!!」
「そっ、それはまたの機会にーー」
「またって、いつ? 明日、明後日? それとも」
いつも以上に押しの強いヤチヨの態度に、ソフィは更にたじた
EP 04 満腹の間奏曲(インテルメッツォ)06
「あの……あなたは? どうして祈りの日でもないのにそんな恰好を……それよりもここは通常立ち入り禁止のーー」
「そんなに怖い顔をなさらないでください。若き団長さん。私は一応、この部屋に入ることを許されている人間ですから」
「……どうして、ボクが団長だと……失礼ですが、どこかでお会いしていましたでしょうか……?」
「いいえ。あなたとお会いするのは初めてですよ。ナール団長と似たような腕輪をされているよう
160 実力以上の差
「それではまず、交流模擬戦の第一戦目を行います。両者広場中央へ」
遠征宿舎の広場を囲むように東西の生徒達が見守る中、これから戦う二人の生徒以外がその広場から離れていく。
正面を切って向かい合った二人は視線をぶつけ合い火花を散らす。
交流戦と言いつつもイウェストがなかった今年の東西の優劣が公式ではないものの、生徒達の記憶に刻みつけられてしまう事になる。
空気を察してか周りは沈黙し、二人
159 剣が導きし運命
「では、東部学園都市のエナリア会長の提案による交流会をこれより行います。内容としては模擬戦とその後の懇親会、パーティを行う事になっています。今年はイウェストもなく禍根の生まれなかった特殊な年です。この機会は学園の歴史上に名が残る企画となることでしょう。ぜひ一緒に成功させましょう」
ヒボンが拳を突き上げて、高らかに叫んだ。
確かにこうした機会はこれまでなかった。
ということは自分たちのこの交
EP 04 満腹の間奏曲(インテルメッツォ)03
「「「「できたわ!!(よ)」」」」
モナの演奏が一通り終わったであろうその瞬間。ほぼ同時に四人の声が重なり料理を両手いっぱいに抱えて持って現れた。
「いい匂い……です」
先ほどまで心地よい歌に聞き入っていたコニスの目の色が変わり、待ってましたとばかりにそのお腹がぐーきゅーぎゅるるとモナの演奏を引き継ぐように異なるメロディを奏で始めた。
「お待たせしてごめんなさいね。でも、あちしの……い