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「渚と森の青空ブックカフェ」プロジェクト(2020.11.07~08)

2020年11月7日(土)、8日(日)に大津湖岸なぎさ公園の一部にて当プロジェクトを開催しました。
ゼミでは3回生の秋学期時に全体で取り組む地域社会連携・課題解決型のプロジェクトを立ち上げ、地域内でその活動を実践しています。我々は「渚と森の青空ブックカフェ」プロジェクトを企画・運営しました。

当イベント、クラウドファンディングのトップページ画像

このプロジェクトの企画・運営の経験は、僕が改めて地域おこし、地域活性に興味・関心を抱き地域おこし協力隊員として活動するきっかけであったと言えます。そんなプロジェクトについて簡単ではありますが、プロジェクトの概要と結果についてゼミの紹介も兼ねながら発信しようと思いました。

プロジェクトの背景

2020年はコロナ禍真っ只中という年でした。黙食・黙飲が叫ばれていた中でそれを実現できるカフェ環境として、増加傾向にあったブックカフェ、とりわけ感染リスクが低いであろうと思われる屋外型のブックカフェに注目し、それらの消費者選好を分析することに取り組みました。個人経営が主な個性的なブックカフェや、蔦屋家電とスターバックスのような提携タイプのブックカフェ(?)が展開されています。

そんな中で新しいブックカフェのタイプ、withコロナのカフェの楽しみ方として屋外で「静かに本を読みながらカフェを楽しむ空間」を提案し、プロジェクトを企画しました。イベント当日には訪れていただいた方にアンケートをお願いし、イベントの効果とブックカフェに対する需要を計測しました。

また当プロジェクトは、店舗の回転率を下げない範囲で、利用者がカフェで黙飲・黙食の状態で読書を楽しみながら過ごせば、

・店舗の感染防止費用の抑止(売り手よし)
・飲食環境を継続して楽しめる(買い手よし)
・飲食の場での感染リスクの低下(世間よし)

すなわち、経済活動の継続(生産者)、飲食の娯楽機会の維持(消費者)、コロナの感染防止(社会)の「三方よし」の効果をもたらすことが期待できると考えました。

滋賀県にキャンパスを置く学部で勉強している我々だからこそ、近江商人の活動理念を表す「三方よし」をプロジェクト概要に組み込みました。

イベント概要

当活動では、琵琶湖畔の大津湖岸なぎさ公園にて、自然豊かな場所で読書と共にカフェを楽しむ空間を屋外型のブックカフェとして作り出しました。
公共スペースの使用ということもあり、座席とテーブルの使用についてはブックカフェ利用者ではなくとも利用は可能です。ドリンクについても個人の持参物、またはこのスペースの利用にあたってご協力いただいたなぎさのテラスでの商品の持ち込みが可能でした。
また後述する古本市で本をご購入いただいた方にはコーヒーを無料で1杯サービスしたことから、手ぶらで参加し古本屋で購入した本を読みながらコーヒーを嗜む方が多くいらっしゃいました。

当日の会場の様子

またブックカフェのスタイルのうち、古本屋と併設されているタイプのカフェがあります。当プロジェクトでは古書店が併設される形態で企画することを採用したため、滋賀県内で古書店を営む4店舗には当日の古本市としての参加と一部古本の出品、そしてブックカフェ3店舗にヒアリングという形で協力を頂きました。

分析結果

参加していただいた方にアンケートへのご協力をお願いしました。アンケートでは様々な属性レベル(カフェの場所やコーヒーの提供価格、店舗形態など)異なる特性を持つ2つのカフェから、行きたいカフェを選択してもらう選択型実験である、コンジョイント分析を用いてブックカフェに対しての人々の選好を分析しました。加えてそのデータの一部を用いて当イベントがもたらす社会便益をゾーントラベルコスト法を用いて計測しました。


コンジョイント質問の一例
出典:筆者作成

ゾーントラベルコスト法は、各地域からあるレクリエーションサイトまでの旅行費用とその地域からの訪問率(各地域の人口に占める訪問者の割合)の負の相関から、そのサイトに対する需要関数を推定し、そこからそこでのレクリエーションの価値を経済学的に評価する手法。

栗山浩一・馬奈木俊介(2016) 『環境経済学をつかむ:第3版』有斐閣

大まかな結果としては、ブックカフェでない一般的なカフェに比べて、そこよりも遠い場所であったり、高価格のコーヒーが提供されているブックカフェのほうが好まれやすい傾向であることが分かりました。加えて「ブックカフェ」という要素と「オープンテラス(屋外設備)」のカフェ要素はそれぞれ好まれやすい一方で、その2つが合わさる、つまり「オープンテラス(屋外設備)が備わったブックカフェ」に対する効用は期待できないという結果も導くことができました。すなわち外の何かしらの騒音や天候にさらされるオープンな屋外よりも、閉じられた静かな空間でブックカフェを楽しみたいと考える傾向があることを含意します。もちろん得れたサンプル数、被験者が想像した屋外設備を備えたブックカフェとして想像したものによってアンケート結果は変わっていたかもしれません。

イベントを踏まえて

本「渚と森の青空ブックカフェ」イベントから、人々はブックカフェを普通のカフェよりも高く評価しており、その利用に際して一定の支払意思を持つことが実証されました。得られた支払意思額や犠牲移動時間は、今後のブックカフェの普及を期待させるものだといえます。そしてコロナ禍での青空ブックカフェイベントが一定の社会便益を生み出すという知見は、地域振興の観点から、アフターコロナでの公共スペースの使い方について新たな示唆を与えることができるだろうと結論付けました。

ブックカフェは地域コミュニティの形成空き家問題の解決など様々な社会貢献の側面を持ちます。そのブックカフェが人々にどれだけ評価されるのかを金銭的に明らかにすること、そしてその開業を考える経営者の方々の合理的な判断を助けることに貢献することが本プロジェクトの目的でした。

おわりに

冒頭でもふれたとおり、このプロジェクトの企画・運営の経験は地域おこし協力隊として活動することの大きなきっかけになったと考えております。

このプロジェクトに際し、クラウドファンディングを設立したこと、大津市都市魅力づくり推進課、大津市都市計画部公園緑地課といった行政や県内の古本屋やブックカフェ、会社の皆様に協力を頂いたこと、ラジオへの出演、新聞社からの取材とメディアを通じてアピールする機会を頂いたこと。そのどれもが自分にとって貴重な体験でした。

コロナ禍という厳しい状況の中でも、学生のうちにこのような経験ができたことは自分にとって財産であると言えます。この経験は今後地域おこし協力隊として活動する際にも大きな糧になるはずです。

得た知識、体験、考え方を十分に発揮して活動の地域の活性に尽力できたらなと。

過去のイベントのお話ですが、読んでいただいてありがとうございます✌

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