小さな個人飲食店が世のため人のために貢献しようとしたら、思いのほか甘くなかった話
経営者さんに「お仕事でいちばん大変なことってなんですか?」と聞くと、よく返ってくる答えは「人(従業員)」。彼らの雇用や育成、管理といった一連の仕事がいちばん大変だとおっしゃる方が、私の知る限りは多いです。すごくわかります。
うちの店に関していうと、私が女将になってからはスタッフは根気強く育てる方針で運営してきました。人手不足が深刻な状況に加え、子どもを産み育てるにはどうしてもスタッフを安定的に雇うことが必要だったからです。
それに人を雇用して育てるのは一種の社会貢献でもあるのではないか、という考えも私は持っています。
個人飲食店って、正直ほとんどの人にとってはあってもなくてもいいものです。一軒ぐらい無くなったところでほとんどの人にはどうってことない。言い方は悪いですが、店主とその家族が生きていくために存在しているといってもいいんじゃないかっていうぐらい、世の中には代替できる店と商品・サービスがありすぎるんですよね。
そんな、ある意味で自己都合で運営しているともいえる個人飲食店が何か世の中に貢献できることがあるとしたら、そのひとつが、地元の若い求職者を採用し、育成して、また世に送り出すことなんじゃないのかなと私は思ってるんです。
ところが実際にやってみると、社会貢献を念頭においたうえでスタッフの採用と育成を行うなんて、そう甘いものではありませんでした。
今日は、中でもとくに苦労を強いられたスタッフの育成について、事実を一部変更してお話ししたいと思います。
職なし・金なし・携帯なしの応募者を採用したときのこと
ある日のこと。傾きかけていた店がなんとか持ち直し、そろそろ夜のスタッフの募集をかけようと某大手サイトに求人を載せたところ、ひとりの求職者が電話で応募してきました。
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