マガジンのカバー画像

三島由紀夫論2.0

224
運営しているクリエイター

2022年5月の記事一覧

文章を正確に読むとはどういうことか②

文章を正確に読むとはどういうことか②

 こんなことを私が書いても「いや、そんなはずはない」で通り過ぎる人しか存在しないだろうが、やはり柄谷行人は夏目漱石に関して何か述べようとする度にとんでもない勘違いを露呈させる。

 この書きぶりからすると柄谷行人は田川敬太郎という名前を思い出せなかったようである。そのことはよいだろう。しかし「高等遊民」の意味まで忘れて、なぜこのように持ち出してきたのか、その神経が分からない。

 残念ながら『それ

もっとみる
無象論 あるいは懐かしいメモ書き

無象論 あるいは懐かしいメモ書き

無象論

1 小説『関東大震災』が書かれなかった理由

 文学とは、ある種の洒落を受け止めることのできる気易い空間の中での一種のゲームであって、それ以上のものではない。屡私は自分自身にそう念を押す。トランプにゲームを感じられない人にとっては、トランプはゲームではない。またある種のゲームに熱中している最中にはそのゲームが全てであって、それ以外のことはどうでも良くなる心性が有り得る。同じ意味で、誰が

もっとみる
三島由紀夫と谷崎潤一郎① あるいは『蘿洞先生』を読む

三島由紀夫と谷崎潤一郎① あるいは『蘿洞先生』を読む

 久しぶりに三島由紀夫が掲示板で話題にされていたのでちらりと覗いてみると、やはり酷い有様でうんざりした。テレビなどではもう少し真面に取り扱われることが多いが、やはり一般のネットユーザーからしてみれば、三島由紀夫は無計画なゲイのテロリストでしかないようだ。無論三島由紀夫もほかの文学者同様真面ではないことは間違いない。

 しかしまず「右翼」というのはシンプルな間違いである。三島の最期は「右翼たちに目

もっとみる
創作世界の発見

創作世界の発見

訂正を肯んじえない読み誤り

大正五年に書かれた夏目漱石の『明暗』では、主人公・津田由雄の元恋人らしき女・清子が昔飛行機に乗ったことになっている。

日本で民間の飛行機利用が始まるのは第二次世界大戦後のことであり、これは私が確認できる史実とはあからさまに矛盾する。大正五年以前に清子が飛行機に乗るなど、けしてありえないことなのだ。

当時の飛行機は旅客機ではなく曲芸飛行機であり、おそらくまだ将来的に

もっとみる