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代表コラム3. CLOという職種

今日は「CLO」という肩書きについて。

先日アメリカ系企業と話をしていた際に、妙な感覚に囚われたことがあった。それは、「CLOはどなたですか?」という質問だった。

CLOとは、Chief Logistics Officerの略であり、最高物流戦略責任者、もしくは最高ロジスティクス責任者である。

日本の企業を見る限りは、あまりこのCLOという役員が登場する上場企業を目にすることがない。実際に国土交通省が2021年4月に発表した報告によると、

役員情報を開示している日本の上場企業3,774社中、役員の役職名に「物流」「ロジスティクス」「サプライチェーン」が含まれている企業数は100社。

とのこと。

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物流関係の役員がいる企業は比率にすると実に3%に満たない。これは個人的にも同感するが物流=コストセンターのイメージが依然として強いように感じられ、順番としては「販売」をするための「必要手段」のようなサブ項目として捉えている経営者もたくさんいるように感じる。

一方、アメリカでは事情がやや異なる。

物流・サプライチェーン分野の経営幹部ポストが設置されている(CLO(ChiefLogistics Officer)、CSCO(Chief Supply Chain Officer)等)。本社が米国に所在し米国の証券取引所に上場している企業約4,340社のうち、経営幹部クラスの役職に「Logistics」「Supply Chain」のいずれかのキーワードを含む企業は合計199社確認された。

比率にして約4.5%。大きく乖離するわけではないが、約ダブルスコアである。さらには面白い事例もあり、米小売業大手のウォルマートでは、物流部門経験者のみが社長就任の必須条件として挙げられているらしい。

やや古い資料にはなるが、2000年初期ではウォルマートがフォーチューン社のtop500ランキングの1位を獲得したこともある大企業だ。

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つまり、会社を経営する上で物流を理解しておかなければ健全な経営はできない、という考え方であると思う。

私見としては売り上げを上げる、ではなく利益をあげる、という点においてはまさに物流・サプライチェーン的思考が必要とされ、さらにはモノがないビジネスにおいても固定費改善や人的作業におけるDX、自動化などを推し進めていく上でもサプライチェーンや物流の考え方を持って経営をしていくことが健全で長期経営ができるのでは、と思う。特にこれは規模として企業が大きくなればなるほど、である。

さらにはここに面白いデータもある。営業利益が3%の企業があったとする。売上額を年間500億円とすると物流コストが0.5%上がった際には利益的には83億円の損失をしたことになる。

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比率にして約0.5%の物流コスト向上と大したインパクトはないように思えるが、売上額の規模が上がれば上がるほど物流コスト比率が会社の経営に与える影響が大きいのだ。

会社が大きくなればなるほど、経営においては緻密さが求められる、ということだ。つまり、会社における利益向上の責任を担うのがCLOの役目とも言える。

上記の数字からもわかるように経営において最も懸念されるのは、物流を厳かにしたツケは徐々にボディーブローのように効いてくる、という点にある。緊急性がないが故に、気づいた時には傷口が広がっている、というところだ。

これは企業だけでなく個人にも言える。有名な法則にパーキンソンの法則というものがある。この法則には大きく2つの法則が有名であるが、

第一法則:仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する
第二法則:支出の額は、収入の額に達するまで膨張する基本的に人間は「収入」 = 「支出」

とある。つまり「人は時間やお金といったあらゆる資源を、あればあるだけ使ってしまう」ことを意味していて、意識して貯める、作る、使わない、ということを行っていかないとこの法則に基づいていってしまう。

売上が販売目標通り上がっているのにも関わらず、利益が思ったより上がらない。

頭を抱える経営者はたくさんいることだろう。

頭ではわかっているが、実際に実践が難しい。

ここに対して理論のみを振りかざすコンサルタントもいるが、ここに対しては現場を理解した上で机を隣り合わせして、経営者と原因追求をしていく姿勢が求められる。

そう言った意味でも、しっかりと利益構造を理解して都度会社へフィードバック機能を働かせることがCLOの責務であると私は理解している。

日本は創業100年以上の企業数が世界一、と言われている。創業100年以上の企業が今後もより残り続けるために。さらには失われた経済大国の名誉を取り戻すためにも。

CLOという職種が当たり前になる日がくることを願いつつ、また明日から一つ一つ学び発信していきます。





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