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運送業者の環境推進!今進められている【モーダルシフト】とは?

真の自然保護活動家とは、この世界が父から与えられたのではなく、子から借り受けたものであることを知っている人のことである。
⇒ A true conservationist is a man who knows that the world is not given by his fathers, but borrowed from his children. (John James Audubon 1785- 1851)

SDGs」という言葉が世に聞くようになりました。
その中でも「環境配慮」という言葉が身近になってきたように感じますね。

民間企業はこれまでの経済活動だけでなく、環境へ配慮した活動が株主などの投資家から評価されるようになり、どのようにして社会へ貢献していくのかの姿勢を示すことが次の成功を手繰り寄せる一歩となっています。

その中でも、運送業者や荷主業者が環境推進として進め始めている「モーダルシフト」を例にとってエコな社会を作る活動としてご紹介します。

トラック量を削減!「モーダルシフト」

現在の日本においては、300kmの距離においてもトラック輸送が最大6割使用されています。さらには日本は欧米諸国と比べるとトラックへの積載率がかなり低く、約38%となっています。これは同じ容積を運んでいても、余っているスペースが約6割あるので、空気を運んでいるのと同じ状況です。

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そこで、300kmを超える長距離輸送については国土交通省から「モーダルシフト」と呼ばれるその他輸送手段への変更が推められています。

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モーダルシフト:自動車で行われている貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換すること。
 民間企業各社は輸送(物流)における環境負荷の低減にはモーダルシフトや輸配送の共同化、輸送網の集約等多くの環境改善活動を行っている中で、特にモーダルシフトは環境負荷の低減効果が大きい取り組みです。主な削減効果としてCO2排出量が挙げられます。

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1トンの貨物を1km運ぶ(=1トンキロ)ときに排出されるCO2の量をみると、トラック(営業用貨物車)が225gであるのに対し、鉄道は18g(約1/13)船舶は41g(約1/5)しかありません。つまり、貨物輸送の方法を転換することで、鉄道利用では92%船舶利用なら82%もCO2排出量を削減することができるのです。こうしたことから、環境対策としてモーダルシフトは非常に有効な手段と言えるでしょう。

それでは、大手企業のモーダルシフト取り組み事例を見て行きましょう。

事例①イオン株式会社と花王株式会社 鉄道輸送往路運用

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東京福岡間の商品輸送を鉄道コンテナを使用して共同往復利用を行なった事例です。

両者共に、工場から物流倉庫への輸送に関して行きは積載率ほぼ100%に対し、物流倉庫から工場への戻り便はコンテナが空という問題を抱えていました。つまり空のコンテナを運びながらCO2は排出しているという状態です。
そこで2社は、東京福岡間に対し、東京 -->福岡は花王商品を積載・運送し、福岡 -->東京はイオン商品を積載・運送する。これにより約2.8トン程度CO2排出量の削減を実現する計画。

事例② F-LINE(株) 南関東支店 マルチモーダルシフトセンター

大手加工食品メーカー6社による共同出資で設立された物流会社によるモーダルシフトです。令和2年度のモーダルシフト取り組み最優良事業賞(大賞)を受賞しました。

鉄道便から海上輸送に切り替えるには、移動距離の増加や荷物受け渡しのポイント増加などによるリードタイムの増加が懸念される。
そこで荷主と連携し、リードタイムが伸びることにより影響の少ない商品を対象として実施を行なった。

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モーダルシフト概要はコチラ

これによりCO2排出削減だけでなく、異常気象などの災害時にも 1.8倍の移動の実現に成功した事例です。近年日本では自然現象が猛威を奮っており、大雨被害は記憶に新しい。その中でも輸送手段も環境に対応していかないといけない中で今回の事例は異常気象の中でも遅延なく商品を届ける未来に可能性を広げる成功事例と言えるでしょう。

事例③日本通運(株) ミルクランとモーダルシフトの組合わせ

自動車生産における部品調達は、各部品メーカーがそれぞれ手配したトラックで輸送されていた為、一定の数量がまとまらず、モーダルシフトが難しい状況でした。

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そこで部品集荷拠点を集約し、ミルクランと呼ばれるトラックのラウンドを行うことにより一元管理の効率化と一度に運ぶ物量増加によるトラックから鉄道輸送への輸送手段の変更が可能となりました。

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ミルクランによる部品調達の効率化と鉄道へのモーダルシフトを組合わせたことで、CO2排出量が30%以上削減されました。
また公表はされていませんが、集荷拠点等での荷下ろし待ちなどのドライバー待機時間の削減も実現されていることが予想されます。

また別事例ではトレーラの改造や新規の転送架台作成に取り組み、海上輸送へシフトすることで、CO2排出量を削減したほか、トラックドライバーの運転時間についても年間で2,000時間以上の削減を実現しました。

こういった取り組みを全社的に行い、幹線区間における貨物総輸送量のうち鉄道・海運の利用比率が40%を超えるとともに、前年度を1%以上上回る実績を達成し、一般社団法人日本物流団体連合会主催の第7回モーダルシフト取り組み優良事業者表彰で、改善部門、有効活用部門の2部門において「優良事業者賞」を受賞しました。

今後も大注目のモーダルシフト

2050年には二酸化炭素排出0を掲げる地方公共団体も出てきています。今後さらに環境を推し進める活動が盛んになるかと思います。
その中でも、モーダルシフトはCO2削減はもちろんのこと、ドライバーの労働時間削減にもなるため働き方改革にも繋がります。今後より広がっていくでしょう。

冒頭のアメリカの画家、ジョン・ジェームズ・オーデュボンの言葉にもある通り、今の環境は未来の子ども達からの借り物であり、子ども達の未来を明るくする為にも環境をより良くして返さなればなりません。

消費者も事業者も目の前からできる環境貢献を一つ一つやっていくことが大切ではないでしょうか。

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