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ステファヌ・ブリゼ『At War』誰かのピンぼけ後頭部を愛でる映画

戦う者は負けることもあるが、戦わない者は既に負けている。というブレヒトの言葉が示す如く、戦い続けたおじさんの話。偽のニュース映像やそれに伴う関係者のインタビュー映像を間に挟むことで突然路頭に迷う羽目になった1100人の従業員を背負い立つ労組の偉いおじさんの戦いに臨場感を持たせる。残りのほとんどの場面は、人だらけの会場で口論の切り返しを人の間を縫って繋いでいるのだが、画面構成が下手くそ過ぎてさながら苦行のようだ。複雑に人を配置して現実味を持たせようとするのは理解できるが、流石に被写体に対して手前にいる人間を必ず入れて、画面の半分くらいをそいつの後頭部のピンぼけにするのはセンスなさすぎというか、狙いすぎ。

会社側と労働者側の板挟みになる労組の人の物語であり、最終的な解決策には目を背けたくなるが、これが現実に起こりうると思うと更に気が重くなる。正直言うほど評価ポイントのある映画じゃないんだが、このラストの後味の悪さは心臓に悪い。

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・作品データ

原題:En guerre
上映時間:113分
監督:Stéphane Brizé
公開:2019年3月16日(フランス)

・評価:50点

・カンヌ国際映画祭2018 その他のコンペ選出作品

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