タル・ベーラ『Macbeth』62分ワンカットの狂気

タル・ベーラの珍しいカラー長編作品。ハンガリーの国営テレビの放映用に製作されたTV映画であるので、実際にタルの"長編劇映画"に加えられることは少ない。

全体で70分程度なのだが、冒頭5分のアバンタイトルを挟んで"Macbeth"と出た後は、なんと62分の長回しなのである。全編を通して2カットしかないのだ。しかも、その62分は喋っている俳優の顔を大写しにして、切り返しを挟まないよう会話は横向きにカメラに収めている。あの『マクベス』を幕間もなく、60分で完走するんだから、そのパワーというか緊張感は良いんじゃないか。長回しというのは少しゲーム的でもあって、これが良いようにも悪いようにも作用する可能性があるが、本作品において、この"長回しのゲーム性"はいい方向に作用していると思う。

ただ、よく考えて欲しい。セットではあるものの、演劇の長回しは演劇の録画であって映画ではない。確かに試みは面白いのかもしれないが、"長回しの『マクベス』"というパッケージは超えられていない。

・作品データ

原題：Macbeth
上映時間：72分
監督：Tarr Béla
公開：1983年3月16日

・評価：60点

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