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キリル・セレブレンニコフ『Yuri's Day』捨てた生まれ故郷で生まれ変わるとき

有名なオペラ歌手のリューバは西欧に移住する直前、故郷に別れを告げるために20歳の息子を伴って20年ぶりに帰郷する。ロシアに残りたい息子との溝は深く、年齢の割に幼い抵抗でリューバを困らせる。そして、ふと目を離した隙に、息子は失踪する。2008年に制作された本作品は、次作『Betrayal』(2012)と緩い連続性を持つ"喪失と再生"の物語である。元々所属していた"誰もが互いを知っているような"小さな街のコミュニティに戻ってきたことで、リューバはその中に飲み込まれていき、時間が引き戻される。それは息子や声や服など街を出てから得たものを失い、病院の床掃除から教会のコーラスという過去の再現によってそれらを再び得るという希望にも繋がってくる。常に機嫌の悪い宗教者、やたら挑発的な刑事、そして前半のスノッブな主人公などを批判的に見ている気もするが、あまり多くを理解できなかったのは正直なところ。あと、クセニア・ラパポルトがチュルパン・ハマートヴァにしか見えない瞬間が多々あった。

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・作品データ

原題:Юрьев День
上映時間:134分
監督:Kirill Serebrennikov
製作:2008年(ロシア)

・評価:80点

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