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マーティン・スコセッシ『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』ギャング映画の文法で撮った"インディアン殺し"

長編作品としては『アイリッシュマン』以来4年ぶりの新作。カンヌ映画祭プレミア部門で初上映。Appleスタジオが製作に入っており配信メインの作品ではあるが、Netflixには喧嘩腰のフレモーも揉み手でコンペに鞍替えしませんか~とか言ってて草しか生えなかった。それでいてビクトル・エリセにはなんの返事もせずコンペにすら入れないでプレミア部門にキープしとくとかクズすぎるだろ。と、関連作品には絶対に入れてる文句を入れたところで本題に。物語は1920年代のオクラホマ、オセージ族の居住地に石油が発見され、白人たちが急速に流入してきた時代に、第一次大戦から帰還したアーネストが地域のドンである叔父の家に来るところから始まる。そこから始まる四姉妹の計画殺人はまさにスコセッシの好きそうなマフィア映画のそれであり、おそらくは自分のスタイルにばっちりハマった物語を見つけて来たから映画化したんだろうと思われる。手癖で撮ったセルフパロディだ。オセージ族なんか欠片も興味ねえだろ。歴史から忘れられてきた彼らの存在を再び映画で脇に追いやるというのはあまりにも皮肉がキツすぎるのではなかろうか。

それにしても長い。180分にしようと頑張ってみたけど無理でしたの206分ではなく、語りたいこと全部詰めてみたら206分になりましたという、努力の欠片もない長さなのでウンザリしてくる。しかも、206分も必要とは思えない。まぁ彼の映画はだいたい長いのでなんとも言えないところではあるが、基本は血の涙を流しながら言いたいことを削って100分にするんだよ?と。イニャリトゥの『バルド』でも思ったけど、上映時間伸ばし放題、金も使い放題だと取捨選択とか吟味とかを放棄して取り敢えず撮っちゃうからダメなのでは?と思うなど(ただまぁそういう地位を目指して50年以上映画を撮ってきたベテランなので正直勝手にどうぞって感じもしている)。まぁ白人目線で彼らの視界の端にいた"インディアン"をスリップダメージでジワジワと殺してコミュニティを白人化していく意地悪さはあったので、それが撮りたかったなら成功はしていると思うが、今更そんなの撮ってどうすると。

それにしても、ディカプリオとデニーロが共演か!と思ったが、二人共ずっと同じような口をへの字に曲げた顔をしていたのには最早呆れを通り越して笑えてくるレベル。ただ、あの感じなのにディカプリオはクソバカで、終盤はFBIも悪徳白人会も"このバカをなんとかせねば!"みたいな感じになってたのは面白かった。リリー・グラッドストーンは素晴らしかったが、基本は寝込んでただけだったのでケリー・ライカート『Certain Woman』の方が好き。『ファースト・カウ』は映画自体の記憶がないので除外。

・作品データ

原題:Killers of the Flower Moon
上映時間:206分
監督:Martin Scorsese
製作:2023年(アメリカ)

・評価:50点

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