見出し画像

ホアキン・ペドロ・デ・アンドラーデ『The Priest and the Girl』ブラジル、悪魔の遣わせた聖人或いはメンヘラ製造機

1966年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。ホアキン・ペドロ・デ・アンドラーデ長編一作目。カルロス・ドラモンド・デ・アンドラーデによる同名詩に基づく。ディアマンティーナ近郊の山岳地帯にある朽ち果てたダイヤモンド鉱山の鉱夫村に、危篤状態にある老齢のアントニオ神父の最期を看取るために若い神父がやって来た。宗教に熱心な老女たち以外の村人は活気がなく、村全体も死に体という中で、若い神父はマリアナという少女に出会う。10歳のときに裕福な商人オノラトに預けられて育てられたという彼女は、今では娘というより妻のような存在になっており、オノラトは彼女との結婚を望んでいたのだが、アントニオ神父も彼女が好きだったので、オノラトは嫉妬しつつ結婚を切り出せなかった、という大変キショい状況に若い神父も巻き込まれていく。しかも、マリアナは村の雑貨屋を経営するビトリノというビッグマウスなおっさんにも付き纏われている。しかし、特筆すべきは主人公以外が全員バグってるという環境の中で、一番ヤバいのがマリアナ本人であるということだ。若い女が村に一人という状況で彼女が見出した生きる道なのかもしれないが、個人的にはナチュラル魔性(というかメンヘラ製造機)に一票。マリアナがオノラトからもらった純白のドレスを初めて見るシーンの、全然純白のドレスもらった瞬間じゃない暗さとか、マリアナが酒場で働くシーンの、白いワンピースのマリアナとどんより黒々とした客席の男たちという陰影の対比が素晴らしいなと思ったら、やはりDPは同じく陰影の凄まじさで空間を彩っていた『Porto das Caixas』のDPマリオ・カルネイロだった。特に本作品では白いワンピースのマリアナに対して主人公が必ず真っ黒な神父服を着ているのも対比として完成しているし、駆け落ちが徒歩で行われるのは同作の原作となった『郵便配達は二度ベルを鳴らす』に似ている。結局帰ってきちゃうとこまで一緒。ただ、結構な終盤まで主人公のマリアナに対する感情がふんわりしているので、全体的な印象もそこまで強くならないのが難点。あと一歩足りなかったな。

・作品データ

原題:O Padre e a Moça
上映時間:90分
監督:Joaquim Pedro de Andrade
製作:1965年(ブラジル)

・評価:80点

この記事が参加している募集

映画感想文

よろしければサポートお願いします!新しく海外版DVDを買う資金にさせていただきます!