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センベーヌ・ウスマン『エミタイ』セネガル、ディオラにとって米は神聖なもの

傑作。センベーヌ・ウスマン長編三作目。日本で初めて公開されたセンベーヌ作品(R.I.P.岩波ホール)。二次大戦期のセネガル南部カザマンス地方、宗主国フランスのヴィシー政権は植民地から男たちを強制的に徴兵しており、それはディオラ族の人々にも無関係ではなかった。冒頭では腰丈まである草原の獣道を歩く男が、隠れていた赤い帽子の黒人兵に次々と連れ去られる瞬間が描かれている。このとき携帯していたクワなり自転車なりは子供たちによって回収されて村の中にある木に集められるのだが、物言わぬクワや自転車が大量に並んでいて、未来永劫働き手を失った悲しみが映像的に伝わってきて辛い。村に残された老人と女子供は、彼ら/彼女らだけで生活を再開したが、今度はフランス軍のために米を接収されることになる。残された僅かな男たちによる抵抗も虚しく村の女たちが人質に取られる。

"エミタイ"とはディオラ族の信仰する"雷神"であり、長老たち基男たちは神と対話する儀式をする。そして、実際に対話する。米を渡さないと命がないが、女たちの前で米は渡せない。それに対して、女性たちは炎天下の屋外に座らされても動かず、男たちが儀式を行う時間を、首長の葬儀を行う時間を、決断を下す時間を稼ぎ、抵抗する。白い軍服を着て白人の手下となるセネガル人兵士、伝統衣装を纏って抵抗するディオラ族の人々、その中でも一点に留め置かれても抵抗する女たち(彼女たちは文字通り"立ち上が"り、男たちの行った儀式を繰り返す)と神をも恐れずに抵抗する男たち、それぞれの対比、或いは伝統の中に置かれた状況を視覚的イメージによって捉えていく。ひたすらに上手い。

内容が内容だけにアフリカ仏語圏では検閲で5年間も差止めを食らったらしい。そりゃあそうだ、ペタンからド・ゴールに変わってもディオラ族のおかれる状況は何も変わらないと明言しているのだから。

・作品データ

原題:Emitaï
上映時間:103分
監督:Sembène Ousmane
製作:1971年(セネガル)

・評価:70点

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