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アガーテ・リーダンジェ『Wild Diamond』フランス、ある孤独なインフルエンサー少女の物語

2024年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。アガーテ・リーダンジェ(Agathe Riedinger)長編一作目。南仏フレジュスで無関心な母親と小さい妹と三人で暮らす19歳のリアーヌは、そこそこ有名なインスタグラマーである。ある日、彼女はリアリティ番組のキャスティング・ディレクターから電話を受け、意気揚々とオーディションに出かけ、結果も出ないうちから既に受かったかのような浮かれっぷりで周囲と溝が深まっていく。いわゆる少年少女とSNS、及びインフルエンサーの孤独、前者の派生として過剰に美しさを追求させる社会の価値観などをテーマとして扱った作品である。インフルエンサーが持つ背景も様々あり、本作品では"母親の愛情不足"に起因する承認欲求が彼女を突き動かしていることが示唆される。人は美しさに憧れる、憧れは力、力は金を呼ぶの!と友人たちに叫んで"振り向いて"もらおうとするが、高価なドレスを着たままリビングのソファに座って母親に見せつけるが、フォロワーは増えても誰も彼女を顧みない。本当にずっと彼女は空回りを続ける。映画はそんなナイーブすぎる彼女の現実と虚構の姿を描き出す。唯一、"本当の"彼女を見てくれる存在として、ナンパしてきた男が登場する。感情表現が上手くないリアーヌは毎回ちゃんと二択を外すような対応をしてしまうが、それでもこの男は彼女に付いてくる。ちょっと存在感がマジカルすぎる気もするが、そういう存在しか彼女を短い時間で癒すことができないという現状の深刻さを表しているのかもしれない。というように、リアーヌの内面はかなり深堀りされているので、似たようなテーマを持ったマグヌス・フォン・ホルン『スウェット』とよく比較されているが、流石に比べるの失礼だろ。

彼女の投稿に付いたであろう様々なコメントが等価に字幕となって、まるで格言のような荘厳さを以て映し出されるのは面白い演出だと思った。ある意味で彼女にとっては、崇拝の言葉も罵倒の言葉も卑猥な言葉も、全てが彼女の求める"愛"なのだ。残酷すぎるだろ。

・作品データ

原題:Diamant brut
上映時間:103分
監督:Agathe Riedinger
製作:2024年(フランス)

・評価:60点

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