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「アートの力で社会課題の解決を」日比野克彦氏が熊大で講演 各地の実践例を紹介

 学内の文化財を核とした「キャンパスミュージアム構想」を推進する熊本大学で2月10日、東京藝術大学長・熊本市現代美術館長の日比野克彦氏を招き、「アートの力」と題して講演会が開催され、会場の工学部百周年記念館に学内外から約200人が参加した(主催:熊本大学キャンパスミュージアム、後援:熊本市現代美術館)。

アートの持つ力について語る日比野克彦氏=2月10日、熊本大学黒髪南キャンパス・工学部百周年記念館


 日比野氏はアートが持つ具体的な力として、地域における住民との共創表現活動を挙げ、これを「土木的なアート活動」と形容。アートを通じ地域社会と関係して社会的役割を果たす、という形を近年重視していると述べ、実践例として市民参加型の新たな風物詩の創造(岐阜市の「こよみのよぶね」など)などを提示し、プロジェクトを実践する中で住民とのコミュニケーションを行うことの意義を強調した。
 また、アートを通じて社会課題の解決に取り組み、「美術館を飛び出して地域社会に分け入り、美術館とまちを繋ぐことが必要だ」と指摘。商店街振興や市役所との連携、文化財の保存活用などに継続的に関わる具体例を提示した。日比野氏は「『アートには人の力を動かす力がある』という信念がある。変革の原動力は人間の心であり、その人間の心を変えるものこそアートだ」と述べ、アートを通じて単に芸術分野にとどまらず、福祉分野などにもアプローチし、「多様な人々が共生する社会」を目指す日比野氏個人や大学の実践や展望に関して、具体的なデータを提示しつつ解説した。

熱心に聞き入る約200人の参加者でいっぱいになった会場=同


 そして、「アートは美術館やアトリエの中で完結するものではなく、広く社会に貢献できる。これから必要なのは、複雑な一人ひとりの個々人の課題に対応する『こころの産業』で、アートはその力がある」と結論づけた。
 参加した学生は「アートの社会的役割に関して、こうした課題意識を持って実践していく姿勢に感銘を受けた。『描く』という行為によって成り立つコミュニケーションこそがアートであり、上手い下手は直接関係ない、という日比野氏の言葉にも勇気づけられた」と感想を述べた。
 キャンパスミュージアム推進室では講演会の開催に合わせ、普段は毎月第3木曜日のみに開館している工学部研究資料館(所蔵の機械類が国指定重要文化財)も臨時に開館した。資料館には述べ70人以上が来場し、普段は観ることのできない貴重な明治大正期の工作機械類の動態展示を熱心に見学し、担当者に質問するなどしていた。

講演会に合わせて臨時開館された工学部研究資料館=同

(2024年2月10日)


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